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フォーミュラEは左脳で楽しむ?
清水:日本初開催したフォーミュラE(2024年3月30日/東京・お台場)を見て思ったのは、左脳が面白かったね。左脳が刺激された。左脳っていうのは頭を使うじゃない。バッテリーの残量を見せたりとか、今ピットとドライバーはこういうことをやっているんだろうなとか。オレ、ヤリス・ハイブリッドでラリーやっているからよくわかる。
高平:ボクはテレビ観戦だったけど、TV画面に時々パッと出てくるエネルギー使用率とか、戻ったりするのってホントなのかな?
清水:本当。日本戦のあとのイタリア・ミサノで、日産のオリバー・ローランドは最後、電欠して止まった。
高平:残量0.2%とか画面に出ていて、でも0.2%なんてありえないそんなの?って思うくらい、物凄く緻密で正確。エネルギーは回生ブレーキで増えている。一瞬0%になるけど、コーナーでまた1%に増えたり。とかをやって、最後0.?%でゴールとかをやっている。清水さんがニュルで、ポルシェの凄いヤツ、918ハイブリッド。あれ、タイムアタックするときにバッテリー残して戻ってくるとダメだなって、そのチームのディレクターが。すべて綺麗に使い切って上手に走るためには、なんかただ踏んでいればいいってもんじゃないって、当たり前だけど。
清水:でもね、システムによっても違っていて。オレ、昨日までハイブリッドでラリーやっていてわかったんだけど、使い切った最後の性能低下の方が大きい。SOC(State of Charge/電池の充電状態)で言うとちょっと残しとかないと。それはトヨタのTHSなんだけど、システムによってはちょっと残っていないとダメっていう場合もある。
高平:フォーミュラEなんかまさにそう。0.5%とかって、もう残っているかもしれないけどそれもう反応しないんじゃないのかな?
バッテリーの温度を測る、日本人の得意ドコロ
清水:F1やっていたホンダの人に聞いたら、バッテリーの温度を測るのに直接、電池の中の温度って誰もわからない。だから周辺の電流値の変化と電圧値の変化と、あらゆるデータから予測しているに過ぎない。だけど、それは日産が当たっているので、そこが実は競争領域になってるところもある。もちろん、当たらないチームもいる。
高平:昔の最初の頃のフォーミュラEとか考えると、そのへんみんなワンメイクで、ただただ単に一番早くクルマを乗り換えたヤツが勝つ!みたいな。
清水:だから日本はLEV(Low Emission Vehicles)やっているじゃない。排ガスの細かいところのデータを取って燃焼の予測をする。だからバッテリーの残量を予測するっていうことは温度を予測することになるから。そういう細かいことをやったら日本は得意だよ。
高平:そうか、なるほど。それはなんか特殊なセンサーじゃないな、その化学変化の中にセンサー突っ込めないですもんね。
清水:いや、それはありえない。
高平:周りから演算してAIで出すみたいな、そういうの持っているんだね、多分。
清水:今、全日本ラリー選手権(ヤリス・ハイブリッド)に参戦しているけど、ありとあらゆるセンサー付けて、予測して、バッテリーの容量を見ながら走る。でもトヨタの場合はあんまり減っちゃうとシステムダウンになっちゃう。
高平:バーが一本残ってればいいやとか、そんなルーズな感じじゃなくて、もっと緻密にやんないとダメなんだね。
清水:ホンダのe:HEVはバッテリーから出していって、足りないところをエンジンで足していく、みたいなやり方。バッテリーは手段だけど、それはトヨタとホンダの違いらしい。だからシステムの違いで微妙に違う。やっぱ面白いんだよ!
高平:今年の全日本ラリー選手権はe-POWER、出てないよね。
清水:出てない。出ろ!ってNISMOの人に言っているんだけど。だから、とにかくレース、モータースポーツはやってみればなんでも面白いんだよ。
クラシックカーで走るラリーだってなかなかムズいのだ
高平:古いクルマの熊本復興「GO!GO!ラリー in 熊本」だって面白かったでしょ? あれはタイムラリーのセクションもあったの?
清水:クラシックポルシェ356 Speedsterで出たやつね。それが変なタイムラリーで、40m=7秒でいけ、なんて。初めてだよ。
高平:制踏み、全踏みやったことないんですか? あれはね、練習あるのみなんです。
清水:オレ、全開しか走らないから! ポルシェ356はラクダの股引き履いてるような緩い感じ。ユルユルなのよ。だけど、トランスミッションもギヤを入れるとパクッ!ってギヤが入った瞬間がある。
高平:ポルシェ356はやっぱりタフですね。本当にキチンと作ってある。
清水:ただ値段聞いてびっくりした。1億円だって、スピードスターは!
高平:しかもあのポルシェ356、1953年式っていつ入ってきたやつかわかりませんけど、1953年って一瞬だけ日本に海外のクルマが自由化された1年半とかあったので、日本に入ってきた最初のビートルとか911、356とか、ほぼ全部1953年製。で、スピードスターのなかでも1955年だか1956年まで作る。ボク、356詳しいんですよ欲しくて!
清水:じゃ来年来てよ。唐沢寿明さん、イベント上手いね。ホント上手い。
高平:このテのラリーは昔からいろんなのに行っていたけど、いろんな人が出て、芸能人だからチヤホヤされるんだけど、やっぱつまんねぇな~っていうのがあって。軽井沢でやっているもっとちっちゃいラリーとかにも後輩のお笑い芸人を連れて来てくれたこともあったりして。「オレ、もっと走るヤツやりたいんだよね!」とかって言って。結局、自分で主催するようになった。
清水:100台参加したからね。唐沢さんはポルシェとか2000GTも持ってるらしいよ。
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最後は最新レーシングカー、フォーミュラEの面白さと、やっぱりなんでもモータースポーツは面白い!という話で締めくくった、清水和夫と高平高輝、ふたりのモータージャーナリストによるクロストーク「南南西に進路を取れ!」。
サファリラリー参戦で磨き上げてきた日産の技術や情熱は今、サクラやアリアなどのBEVへと受け継がれている。それはまさに、電気で走るレースの最先端、フォーミュラE参戦から得られていることは間違いない。やはり、その時代の中で市販車開発とモータースポーツは無縁ではないのだ。
そして今現在の課題、希少金属を生み出せない日本の近未来への警告ともいえるふたりの想いは続く。