いまなお進化し続ける孤高のスペシャルカー「日産 GT-R」【最新国産新型車 車種別解説 NISSAN GT-R】

間違いなく世界的に日本のスポーツカーの地位を大きく向上させた「日産 GT-R」。デビューから17年以上経つがその姿はまったく色褪せることなく進化を続けている。社会的な規制などが大きく変わってはいるが、情勢に合わせたリファインを繰り返し、その魅力は古き良き時代に身を置きつつ現代に寄り添った技術の進歩も披露している。
REPORT:河村康彦(本文)/小林秀雄(写真解説) PHOTO:神村 聖 MODEL:吉田由美

エアロパーツの変更などルックスも大幅進化

登場は2007年の末。すなわち、開発陣も予想しなかったに違いない16年超という〝長寿〞記録を更新中なのが、今や日産のみならず日本を代表するスポーツモデルとしてその名を馳せる「GT-R」。

エクステリア

MY24では、さらに空力性能を高めた前後バンパーとリヤウイングを採用。空気抵抗を増やさずにダウンフォースを増加させた。新構造を採用したFUJITSUBO製のチタン合金製マフラーは、フィニッシャーの焼き加工でチタン独特の青色を再現。最小回転半径は5.7m。

自動車を取り巻くさまざまな規制の強化や世界的なカーボンニュートラルに向けた社会情勢の変化などから、「今度こそこれ以上の販売延長は困難だろう」とそんな見立てを受けながら、このモデルがこうして次々と迫る高いハードルをクリアできたのは、生みの親である日産が決して諦めず、常にリファインの手を緩めなかったからであるのは間違いない。この期におよんで油圧式のパワーステアリングを採用していたり、昨今では軽自動車ですら一般化をした多くの運転支援機能の用意がなされていなかったりと、さすがに時代の要請からの乖離が徐々に表面化して見えるようになっている部分も少なくはない。

乗降性

だが、〝2024年モデル〞と紹介される最新のモデルには、強化された騒音規制に対応するための新型マフラーや、より優れた空力性能実現のために前後バンパーやリヤスポイラーに新デザインを採用するなど、あらためて単なる〝延命策〞には留まらない大幅なリファインの手が加えられている。これまで日産の各モデルがアイデンティティとして用いてきた〝Vモーショングリル〞が廃されたことがまずは大きな識別点となる2024年モデルのルックスだが、それでもGT-R独特の大迫力の演出に変わりはない。形状変更とともに装着位置が後方へと移動した新しいリヤスポイラーも、実際には空力性能の向上という機能を伴って単なる見た目の新鮮さのアピールには留まっていないという。

インストルメントパネル

「Premium Edition T-spec」はインパネ表皮にアルカンターラを採用し、専用色によるコーディネーションを実現。NissanConnectナビは全車に標準装備されている。

そんな最新モデルの「プレミアムエディションTスペック」へと乗り込んでエンジンに火を入れると、耳に届くのは従来型よりも多少ボリュームが抑えられたものの高性能モデルに相応しい迫力を感じさせる低音が強調された排気音。発進直後のターボブーストが高まらない領域でも力強い加速が味わえるのは、今となっては躊躇うことなく「大排気量」と紹介のできる、3.8ℓという排気量の成せる技という印象が強い。

居住性

さらに、度重なるリファインの成果を実感できるのは加速の滑らかさ。変速のたびに大きなノイズとショックを伴った発売当初のGT-Rとはまさに〝別世界〞。ダンパーの設定モードで〝コンフォート〞を選択すると、思いのほかフラット感が高いクルージング時の乗り味も同様だ。このように、随所でデビュー当初に強く感じられた粗削り感が影を潜めた一方で、アクセル踏み込み量が増したシーンでは豪快そのものの加速を披露してくれるのは今さら言うまでもない事柄。

うれしい装備

ブレンボ社と共同開発したフルフローティングドリルドローターとアルミ製モノブロックキャリパーを奢る。「Premium Edition T-spec」などは専用カーボンセラミックブレーキも採用。
トランスミッションは6速デュアルクラッチで、ディンプル付きの本革巻シフトノブを備える。「Premium edition T-spec」は専用色を採用。
年次改良       23年3月20日 
月間販売台数       113台(23年6月~11月平均)
WLTCモード燃費     7.8km/ℓ

ラゲッジルーム

「広い」というよりは「深い」トランクルーム。フロアの奥行きは約670㎜で、ホイールハウス間の幅は約750㎜、手前側は約1460㎜。後席の格納機能は採用されないが、スポーツカーとしては必要十分。

一切を電動化に頼らない純エンジン仕様のハイパフォーマンスモデルの先行きには、暗雲が垂れこめていると言わざるを得ないのが現在の世界の状況。それだけに、日本の誇りでもあり〝古き良き時代〞をまだニューモデルとして味わうことができるGT-Rには、この先少しでも長くその雄姿を見せ続けて欲しいものなのである。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.156「2024 最新国産新型車のすべて」の再構成です。

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