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第18回北京国際記者展覧会が4月25~5月4日に開催された。会場は北京中国国際展覧中心順義館である。今回のテーマは、「新時代・新汽車」。国内外から1500社超の出展社が集まりワールドプレミアが117台、コンセプトカーが41台発表された。
まず、プレスパスを取得するのがハードル
前回予定だった2022年がコロナ禍で中止となったので、今回の開催は2020年以来4年ぶりとなった(北京と上海で1年おきに交互開催される)。昨年の上海モーターショーの取材に赴けなかった筆者にとっては2018年の北京ショー以来の中国モーターショーだった。わずか6年とはいえないほど、ショーの様相は変わっていた。まさに隔世の感である。
プレスデーにモーターショーを取材するには、プレスパス(メディアパス)が必要だ。通常の国際モーターショーは、開催の一月前ほど前に、主催者に編集長のサイン入りの書類や取材者のプロフィールなどを添えてプレスパスの申請をする(ジャパンモビリティショーも同様だ)。ところが中国のモーターショーは一筋縄ではいかない。まず、入国するのに、ビザが必要だ。なんとかビザを取得してもプレスパスの申請サイトが開かない。なんとか申請して、プレスパスの申請が通ったとの連絡が来たのが、4月23日朝(ちなみに、プレスデーは25日だ)。それがその日の夕方に一旦取り消されて、再び承認されたのは、24日夜8時だった(つまり前日の夜だ)。
2004年から北京モーターショーを取材していて、毎回プレスパスを取得するのにはそれなりに苦労しているが、今年がもっとも厳しかった。噂によれば……プレスデーに中国政府要人が視察に来るとのことで、そのためプレスパス(特に外国メディア)の発給が例年より厳しかったのだという。噂だが。
ショーの主役は、中国ブランド
さて、主役は完全に中国ブランドだった。
「在中国、為中国、向世界」のキャッチフレーズは、日産のプレスカンファレンスで唱えられたもの。中国メーカー、日米欧メーカーでも「在中国、為中国」は異口同音に聞かれた。3000万台で世界最大の市場である中国の重要性は6年前とは比較にならないほど高い。
プレスデー初日のプレスカンファレンスで多くの報道陣を集めたのも中国ブランドだ。ARCFOX、NETA、理想、iCAR、智界、享界、AION……などなど、中国メーカーが新たに立ち上げたいわばサブブランドが林立している。そこには自動車メーカーだけでなく、ファーウェイなど自動車外のプレーヤーも重要な役割で関わっている。中国自動車業界に詳しい方に通訳兼案内役として会場を歩いたが、その方でさえ「このブランドは初めて見ました」というブースが散見された。
踊り場を迎えている中国のNEV(BEV/PHEV/水素燃料電池車)の市場だが、勢いは維持しているように見える。中国メーカーもPHEV、ハイブリッド車の開発に力を入れ始めているようにも見えた(エンジン技術を持っているメーカーだけだが)。目下の懸念は、需要よりも供給量の方が明らかに多くなったBEVをどうしていくか、だ。すでに値下げ合戦が始まっている。景気の先行きに不透明感のあるなかでの値下げは、中国のみならず中国でBEVシフトを加速させている世界中の自動車メーカーにとって体力を消耗する闘いになる。
もうひとつ明らかなのは、中国メーカーの実力が確実に上がってきていることだ。デザイン、内外装のクオリティはグローバルレベルに達している。地場のサプライヤーの実力も相応に高いと見るべきだ。
日系OEMは中国でどう生き残るか?
日系OEMは、トヨタがBYDとの合弁会社BYD TOYOTA EV TECHNOLOGY(BTET)などとの共同開発の「bZ3C」と広州汽車との共同開発した「bZ3X」をワールドプレミアした。プレスカンファレンスに内田誠CEOが登壇した日産は4台の新エネルギー車(NEV)のコンセプトカー(そのうち1台はデジタル)を公開。2026年度までに5車種のNEVを中国市場に投入すると発表した。
毛籠勝弘社長が北京入りしたマツダは、長安汽車との合弁である長安汽車が新型電動車(BEVとPHEV)であるEZ-6を発表した。ホンダは新しいBEVシリーズの「烨(イエ)シリーズ」の3モデルとe:Nシリーズの新型「e:NP2」を発表。18.98万元(1人民元=21.3円換算で約404万円)の車両価格から当面3万元(約64万円)に値下げすると発表した。
新型車の投入だけでなく、日系OEMはトヨタがテンセント(騰訊控股)と、日産がファーウェイ(HUAWEI)やバイドゥ(百度)、ホンダもファーウェイとの協業を発表した。
中国の求心力と遠心力に振り回されつつある日本・欧州・米国勢。長期的に見ればBEVに注力すべきなのはわかっているけれど、短中期見てどうなのか? 中国の過剰なBEV供給力は、ASEANを始めとする新興国市場へ向かう。5年後、いや3年後も読み切れない情勢が続く。
中国は未だ混沌のなかにある。