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自衛隊新戦力図鑑

なぜドローンは護衛艦に接近できたのか?

今回の映像は中国の民間人が興味本位で撮影したもので、市販のホビードローンが使用されたようだ。ホビードローンはインターネットで買える「オモチャ」であり、いってみれば「ラジコン」だ。では、そんなオモチャ程度の機械が、なぜ最新鋭護衛艦に接近できたのだろうか?

多くの人が、まず考えるのは「レーダーで発見できなかったのか?」ということだろう。だが、基本的に停泊中の艦艇はレーダーを作動させておらず、海上自衛隊の基地にも対空レーダーは存在しない。レーダーが周辺に電波障害などを生じるという問題もあるが、これまで想定されてきた「空からの脅威」がミサイルや航空機であり、日本本土に接近する前に航空自衛隊のレーダーサイトなどで探知できるものだからだ。

そもそも既存のレーダーは有人航空機など、ある程度の大きさのものを想定しており、小型のドローンは鳥などと区別がつかない可能性がある。そのため、近年では速度変化などから鳥とドローンを識別できる専用レーダーが開発されている。また、ホビードローンには必ず操縦者が存在するため、操縦者との無線通信を探知することで、ドローンの接近を察知する方法もある。なお、レーダー以外の方法、音や目視での監視についてだが、一般の航空機・ヘリコプターより、はるかに小型で飛行音も小さく、気付きにくいことは間違いない。

インターネットで誰でも購入できるホビードローン。機能的には「ラジコン」なのだが、電子機器の小型化・高性能化によってリアルタイムの映像送受信が可能となり、人間の視界外まで活動できる。そして、安価に入手可能になったことで爆発的に普及した。U.S. Army Photo by Andreas Kreuzer

ドローンの攻撃力

次に危険性についてだが、直接的な攻撃力は決して大きくはない。ホビードローンが搭載できるペイロード(輸送量)は限られているため、大きな爆弾は持ち運べないからだ。長距離ミサイルや航空機搭載の爆弾のような破壊力には遠くおよばない。

一方で、現在も続くウクライナ戦争では小型の対戦車弾頭や迫撃砲弾を抱えた「自爆ドローン」が対人・対車両で猛威を振るっており、小規模ながら攻撃力は持っている。また、生物・化学兵器を搭載した場合は小さなペイロードでも大きな被害を招くだろう。

ウクライナ戦争では、両陣営ともホビードローンを偵察や特攻攻撃に用いている。写真はウクライナ軍の特攻用ドローン。重量のある爆弾は持ち運べないが、人間の操縦によって正確な攻撃を仕掛けてくるので脅威だ。写真/ウクライナ国防省

ドローンをどうやって阻止するのか?

では、ドローンを阻止するにはどのような方法があるのか? ドローンの阻止には、物理的な撃墜である「ハード・キル」と、電子的な妨害による「ソフト・キル」のふたつの選択肢がある。

ハード・キルから考えていこう。まず、銃撃による撃墜だが、流れ弾の危険性を考えれば、市街地と近い自衛隊基地では不可能な手段だ(そもそも小型で動きがトリッキーなホビードローンを小銃で狙うのは困難だろう)。安全な手段としては捕獲ネットがある。これには地上発射式やドローン搭載型がある。また、将来的な手段として、高出力レーザー砲の開発を日本は進めている。

欧州の兵器展示会に出品された「ハード・キル」対ドローン車両。荷台部分に小型レーダーを備えた30口径ガトリング砲を搭載している。写真/飯柴智亮
川崎重工業が開発中の高出力レーザー(HEL)砲。写真では、同車の4輪バギー「MULE」の荷台に搭載されている。HELは、対ドローンを含めた短距離防空用として各国で研究・開発が進んでいる。写真/綾部剛之

ハードにせよ、ソフトにせよ、多くの対ドローン装備は、単に迎撃手段だけでなく、小型目標に対応した専用のレーダーを含めて「発見・目標追跡・脅威レベルの識別・そして迎撃」まで、一連のシステムとして開発されている。

ドローン対策は、日本に限らず世界各国の軍や治安組織で喫緊の課題となっている。現時点では自衛隊のドローン対策は装備にくわえて法律面の問題も含み、充分とは言えなかった。しかし、今回の事件が大きな問題となったことで、一気に前進することが期待される。そう考えると、逆に「よい機会」となったかもしれない。

海兵隊の防空大隊に配備が進む「L-MADIS(軽-防空統合システム)」。2両がペアで運用され、ハード・キルとソフト・キルの機能を分担している。車両に可視光/赤外線センサーやレーダーを搭載し、ひとつのシステムとして構築されている。U.S. Marine Corps photo by Tia Dufour

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