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■国内より欧州で人気を集めた初代スイフトスポーツ
2003(平成15)年6月12日、スズキから初代「スイフトスポーツ」がデビュー。2000年に誕生した初代「スイフト」のスポーツモデルで、海外名「イグニススポーツ」としてJWRC(ジュニア世界ラリー選手権)で活躍し、国内よりも欧州で人気を獲得した。
●ベースの初代スイフトはカルタスの後継モデル
現在も高い人気を誇るスイフトの前身である「カルタス」は、スズキ初の世界戦略車としてGMとの共同開発で1983年に誕生した。カルタスは、1.0L直3 SOHCエンジンを搭載したFFの3ドアハッチバックで、欧州ではすでにスイフトと名乗っていた。
その後、カルタスは2代目(1988年~)、3代目(1995年~)とモデルチェンジしたが、2000年に生産を終了。入れ替わるように後継車として国内で登場したのが、初代スイフトである。
スイフトは、軽自動車「Kei」のプラットフォームを流用し、ホイールベースは軽自動車と同じでトレッドを広げたハッチバックボディに、1.3L直4 DOHCエンジンが搭載された。実質的には、Keiのワイド版で多くの部品を流用し、“泣く子も黙る79万円”という軽をも下回る低価格と俊敏な走りをアピールしたが、軽自動車のイメージから脱却できず新鮮味に欠け、人気を獲得するには至らなかった。
●JWRCで大活躍した初代スイフト(イグニス)スポーツ
スイフト誕生の3年後、2003年のこの日に誕生した初代スイフトスポーツは、ベースのスイフトより全幅を50mm拡大、全高を15mm下げ、スポーティな3ドアハッチバックスタイルへと生まれ変わった。
パワートレインは、排気量を1.5Lに拡大しハイチューニングされた直4 DOHCエンジンと、クロスレシオ5MTの組み合わせ。最高出力115ps/最大トルク14.6kgmのパワーを支える足回りは、専用サスペンションと4輪ディスクブレーキ、さらに専用エアロパーツやオーバーフェンダーも装備され、本格的なスポーツ走行が楽しめた。
これだけの仕様にもかかわらず、スイスポの車両価格は119万円と驚きのコストパーフォーマンスだった。ちなみに当時の大卒初任給は19.7万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値では約140万円に相当する。
また軽量なスイスポは、海外では「イグニススポーツ」と名乗りJWRCで大活躍。イメージカラーのチャンピオンイエローから“黄色い弾丸(イエローブリッド)”と呼ばれ、2004年にはドライバーズチャンピオンに輝き、国内より特に欧州の走り屋から人気を集めたのだ。
●2代目で基本設計を刷新し人気ホットハッチへと成長
2004年にスイフトがモデルチェンジし、丸みのある洗練されたデザインの2代目に移行。最大の特徴は、初代で不評だった軽ベースのプラットフォームを止め、コンパクトカーの専用設計に刷新したこと。
これを受けて、スイスポも2005年に2代目が登場。スポーティさを強調するため、専用エアロパーツやテールランプユニット、大型フロントバンパーなどが装備された。エンジン排気量を1.6Lに拡大、初代と同様に高圧縮比や鍛造ピストンなどでチューンニングされ、サスペンション、ブレーキにも専用部品が採用された。
剛性を高めた軽量ボディに、6800rpmで最高出力125psを発生する高性能エンジンを搭載した2代目スイフトスポーツは、軽快な走りで人気爆発。国内外でホットハッチを代表するモデルとなり、ここから今に続くスイスポの快進撃が始まったのだ。
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スズキは、公式には軽のイメージを一掃して国内外で人気を獲得した2代目を初代スイフト、スイスポとしている。初代は、海外ではカルタスをベースにした「スイフト」が併売されていた関係で、区別するためにイグニスを名乗っていたことから、初代の栄誉が与えられなかったらしい。とはいえ、国内で初めてスイフト、スイスポを名乗ったのだから紛れもなく初代なので、本稿では初代として扱った。
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