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立体感のあるフロントグリルがスタイリングの象徴
ホンダ・ヴェゼルは、そのクーペライクなフォルムからアーバンSUVの代表モデルとして抜群の知名度を誇る。現行型においてはフルモデルチェンジ時から「e:HEV」ハイブリッド中心のラインナップとなっているが、先般のマイナーチェンジによりガソリンエンジン車は4WDだけの設定となるなど、よりハイブリッド色の濃いクロスオーバーSUVへと進化した。スタイリングにおいてはフロントグリルやバンパー、リヤコンビネーションランプの変更が目立ったポイントだ。
マイナーチェンジ前からそうであったようにヴェゼルのフロントグリルはこれ見よがしではない。ボディと溶け込むデザインとなっているのは変わりない。そして、この部分については、もっと明確なフロントグリルが欲しいというユーザーの声があるのも事実。そのためマイナーチェンジ前からホンダアクセスが純正アクセサリーとして設定していたオリジナルデザインのフロントグリルは人気アイテムだった。
マイナーチェンジに合わせて進化した純正アクセサリーのフロントグリルは、さらに個性豊かな表情となっているのは見ての通り。目線の高さから眺めたときの立体感にこだわったという力作だ。そのほか、ベルリナブラックのフロントロアースカート(クロームメッキガーニッシュ付)、サイドロアーガーニッシュ、リアロアースカートなどでアピアランスをスポーティに仕上げた「Sports Style」と呼ばれるエクステリアコーディネートをまとっていた。
はたして、外観から受けるイメージそのままの走りの歓びを感じさせてくれるのだろうか。
ホイールで重要なのは軽さよりも「しならせる」設計
結論からいえば、ホンダアクセスによる走りのアイテム(18インチアルミホイールとテールゲートスポイラー)を与えられたヴェゼルは、マイナーチェンジ後の走りに感じたウィークポイント(とくにFF車)を改善してくれるものだった。
ヴェゼルはマイナーチェンジにおいてFF車に限って電動パワーステアリングの制御を変更&欧州仕様のサスペンションを与えられている。筆者はヴェゼルの試乗時から指摘しているのだが、18インチタイヤを履く上級グレードについてはスポーティ寄りすぎるキライがある。たしかにハンドリングを味わうようなシチュエーションではSUVとは思えない気持ちよさがあるのだが、バイパス道路や高速道路を一定速で巡行しているときのコツコツ感が気になる部分もある。
しかしながら、ハイブリッドFFの上級グレード「e:HEV Z」に純正アクセサリーを装着した「Sports Style」を一般道&高速道路で試乗すると、そうした部分が気にならなくなっている。ひと言でいえば”しなやかでマイルド”になっている。サスペンションには手が入れられておらず、走りに関わる変更としてはアルミホイール「MS-050」くらいしか変わっていないにもかかわらずだ(タイヤも標準装着のまま)。
「実効空力」が生んだテールゲートスポイラー
さらにいえば、標準装着の18インチアルミホイールとホンダアクセスの「MS-050」の重量を比較すると、ほとんど変わらない。実測値でいえば前者が24.6kgで、後者が24.3kg。わずかにバネ下重量が軽減していることは否定しないが、走り味が変わるほどの軽量化とはいいがたいだろう。
つまり、高速道路で感じた「Sports Style」のしなやかさはアルミホイールの変更によりタイヤの接地が変わったことに起因しているというのがホンダアクセスの主張だ。具体的には、ホイールの剛性バランスをヴェゼルという車種専用に作り込むことで、適切に”しならせる”ことでタイヤの接地面圧を高めているのだという。アルミホイールのしなりによってコツコツ感が解消されたというのは信じがたいかもしれないが、筆者にとっては体感した事実だ。
加えて、マイナーチェンジ前から人気のあったテールゲートスポイラーも「Sports Style」のメニューに含まれている。こちらは、ホンダアクセスのコンプリートカー「Modulo X」シリーズでおなじみの”実効空力”という考えに基づいてデザインされたもの。スポイラー上面の突起形状やサイドまで回り込んだ形状により、高速走行における直進安定性を狙っている。
アルミホイールとテールゲートスポイラーの相乗効果が、マイナーチェンジ後ヴェゼルe:HEV Zの走りを洗練させたと考えていいだろう。
ただし、まったく問題がないわけではない。高速走行といえば、ACC(追従クルーズコントロール)と同時にLKAS(車線中央維持アシスト機能)を使うだろうが、今回の試乗ではLKASの修正舵に対して標準状態よりも大きめのヨーレートが出ているような印象もあった。タイヤの接地面圧が高まったことで、LKASのプログラムで想定している以上にグリップが出ているゆえの振る舞いという可能性もあるが、先進運転支援システムとハンドリング系カスタマイズのバランスには予想もしない難しさがあるのかもしれない。