新型フリードAIRとクロスター 3列目シートはちゃんと使える?

ホンダ・フリードCROSSTAR ガソリン(5人乗り)
新型フリードに横浜みなとみらい周辺で試乗した。1台はAIR(エアー)のe:HEVで、ベースグレード、3列シート6人乗りの4WDだ。もう1台はアウトドアテイストを漂わせるCROSSTAR(クロスター)。これもベースグレードで、2列シート5人乗りのFF(2WD)である。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

3列目シートは使えるか?

ホンダ・フリードCROSSTAR ガソリン(5人乗り)車両価格:281万2700円 ボディ色:トワイライトミストブラック(有料色3万8500円)
ホンダ・フリードCROSSTAR ガソリン(5人乗り)
全長×全幅×全高:4310mm×1720mm×1755mm
ホイールベース:2740mm
車重:1400kg
最小回転半径:5.2m
最低地上高:135mm
車両重量:1400kg 前軸軸重810kg 後軸軸重590kg

フリードには1ヵ月前にホンダの栃木プルービンググラウンドで試乗の機会を得ている。公道で乗っても、基本的な印象は変わらない。乗り降りしやすいし、運転しやすい。体型に合った運転姿勢がとれるし、初めてでも操作に戸惑うことはない(なさそうだ)。車幅と車両の大きさをイメージしやすいこともあって取り回しはしやすく、イメージどおりに走り、曲がり、止まる。だからストレスがない。

ホンダ・フリードe:HEV AIR (4WD 6人乗り)車両価格:308万8800円 ボディ色=ホワイトプラチナパール(有料色3万8500円)
ホンダ・フリードe:HEV AIR (4WD 6人乗り)
全長×全幅×全高:4310mm×1695mm×1755mm
ホイールベース:2740mm
車重:1550kg
最小回転半径:5.2m
最低地上高:135mm
車両重量:1550kg 前軸軸重900kg 後軸軸重650kg

栃木での試乗でも好印象だったが、公道で乗ってもはやり見晴らしの良さは絶品だ。なにより、これから運転しようという気分に水を差すことなく、ストレスがない。視界がフロントウインドウで真四角に切り取られ、邪魔物が存在しないのがいい。先代と比べると右側方の視界は変化が歴然で、Aピラーとミラーの間からかなり広い範囲で下方を確認できるのがいい。

シフトセレクターはガソリン車だけでなくハイブリッド車のe:HEVもボタンではなく、ストレートなゲートを持つレバーだ。先代はガソリン車がストレートなレバー、ハイブリッド車は専用セレクターレバーだった。新型は見た目のスマートさより、(心理的なストレスも含め)操作性を重視したということだろう。エアコンの操作スイッチ類もタッチ式ではなく、ボタンとダイヤルで操作する物理式で、シフトセレクターと同様、初見でも操作に戸惑うことはない。

先代との決定的な違いは、シフトセレクターの右側に電動パーキングブレーキのスイッチがあることだ。先代は足踏み式パーキングブレーキだった。「BRAKE HOLD」の機能は便利なので、購入したあかつきには一度使ってみてほしい。信号待ちなどでの停車中にブレーキペダルを踏みつづけなくても、クルマが自動的にブレーキを保持してくれる。

ホンダ・フリードCROSSTAR ガソリン(5人乗り)

その間、ドライバーはブレーキペダルをギュッと踏みつづけている必要がない。右足が自由になるので、ブレーキのことに意識を傾ける必要はなく、ちょっと振り返って子供の様子を見るくらいのことはできる。アクセルペダルを踏めばパーキングブレーキは自動的に解除されるので、解除忘れの心配は要らない。

馴染んでくれば解消するのかもしれないが、CROSSTARのシートよりもAIRのシートのほうが、運転席の座り心地面では好印象だった。開発技術者に確認したところ、形状、クッションともに共通で違いは表皮のみとのことなので、印象の違いは表皮の素材違いに起因するのだろう。AIRは全面ファブリックなのに対し、CROSSTARは座面前端部が合皮になっている。体格によって印象は違うだろうが、この部分が太もも裏の当たりの硬さにつながっているようだった。

1 / 3

「新型フリードAIRとクロスター 3列目シートはちゃんと使える?」の1枚めの画像
身長184cmのドライバーがポジションをとった運転席

2 / 3

「新型フリードAIRとクロスター 3列目シートはちゃんと使える?」の2枚めの画像
2列目シート

3 / 3

「新型フリードAIRとクロスター 3列目シートはちゃんと使える?」の3枚めの画像
3列目シート
3列目シートは身長184cmの男性が乗っても窮屈ではない

AIRでは3列シートに座って市街地の移動を体験した。フリードの全長は4310mmで、ヴェゼル(4340mm)とほとんど変わらない。このコンパクトなサイズで3列を実現しているのだから、「3列シートは付いているだけ。付いているだけでありがたいと思え」的な居住性なのだと決めつけていた。

ところが、さにあらず。2列目乗員の足元が窮屈にならない程度に2列目シートを前に出した状態で3列目に座ってみたが、身長184cmの筆者でもきちんと座れる。足元も頭上も窮屈ではない。2列目がキャプテンシートの6人乗り仕様なら、ウォークスルーができるので、3列目への乗り降りも苦にならない。さすがに、走行中に前席乗員がふたりでかわしている会話は耳に届きにくいが、信号待ちのときなら声を張り上げずに前と後ろで会話ができる。

視界がいいのが新型フリードの美点のひとつ

視界の抜けが良く、疎外感を感じずに済むのもいい。クォーターウインドウが先代の三角基調から四角になって面積が大きくなっているのも、開放感につながっている。「付いているだけの3列目にするのはいやで、しっかり作り込んだ」と開発技術者は語ったが、その言葉どおり、常用できる3列目シートになっていると感じた。

ホンダ・フリードe:HEV AIR (4WD 6人乗り)
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:LEB
排気量:1496cc
ボア×ストローク:73.0mm×89.4mm
圧縮比:13.5
最高出力:106ps(78kW)/6000-6400rpm
最大トルク:127Nm/4500-5000rpm
燃料供給:PFI
燃料:レギュラー
燃料タンク:53L

モーター
H5型交流同期モーター
最高出力:123ps(90kW)/3500-8000rpm
最大トルク:253Nm/0-3000rpm

CROSSTARスロープに車いすで試乗

電動ウインチ(速度調整機能・進路補正機能付き)は想像以上に便利だ。耐荷重200kg

CROSSTARスロープに車いすで試乗できたのも収穫だった。フリードには2008年に発売した初代から「車いす仕様車」の設定があったが、3代目の新型では「スロープ」に名称を変更。介護用途に限定せず、日常づかい、レジャーづかいにも使えるようにしたのが特徴だ。「ベースとなるCROSSTAR以上に快適に使えるユニバーサルカーを目指した」という。

CROSSTARスロープはCROSSTARの2列シート、FFがベース。ガソリン車、e:HEVともに選択できる。車いす乗車時は6人乗りだ。スロープの特徴は、ベース車の2列シート5人乗りには設定のないリヤクーラーを標準で装備すること。先代の車いす仕様車に設定されていたリヤヒーターダクトは引き続き装備。さらに、電動ウインチ(速度調整機能・進路補正機能付き)が付く。

スロープ車は持込登録不要、車検は初回3年、以降2年。消費税非課税。環境性能割・自動車税:身体障がい者もしくは家族が購入する場合は免税措置が適用されることがある。
車いすはしっかり固定される。乗り心地は非常に良かった。

筆者が車いすで乗車しても、2列目には足元にしっかり空間が残るので、6名乗車できそうだ。視界の良さは3列シート6人乗りのAIRで確認済み。車いすでの乗車の場合は車両中心線上に位置することになるので、なおさら視界の抜けがいい。車いすで乗車する際はクルマのシートのクッションには頼れず、サスペンションだけが乗り心地の頼りになるのだが、これが望外に良かった。

夏場の試乗だったこともあり、リヤクーラーは大変ありがたかった。手元で風量調節ができればもっといいのにと感じたが、ドライバーか助手席の乗員に声をかければ、インパネでオンオフだけでなく風量の調節も可能だ。

CROSSTARスロープは、車いすの乗車用途で使わない場合は、リヤが大空間の積載スペースになる。大きなスペースを持つ点ではCROSSTARの2列シート5人乗り仕様と同じ(AIRは3列シートのみの設定)だが、スロープが優れているのは、耐荷重200kgの頑丈なスロープを備えていることと、電動ウインチを備えていることだ。

キャンプ用品を満載したワゴンを、荷物を載せたまま積み降ろしすることができるし、ショッピングカートも同様。わざわざワゴンやカートから荷物を積み替えることなく、ワゴン/カートごと積むことができる。固定ベルトが付いているので、しっかり固定できる。アイデア次第でマルチな使い方が可能だ。

スロープはこのように収納される

CROSSTARスロープが魅力的なのは、乗り出しの負担額を減らして購入ハードルの低減を図ったこと。オプションを含め、購入目的を問わず消費税非課税なのが大きい。全国メーカー希望小売価格はガソリン車が297万7000円、e:HEVが329万5000円だ。リヤクーラーと耐荷重200kgのスロープと電動ウインチが付いて、ベース車比で13万2500円〜16万4300円高の設定である。

実際、ユーティリティの高さからCROSSTARスロープを選択するユーザーがすでにいるという。独特のバンパー形状から、後ろから見ると車いす仕様であることが識別できる機種もあるが、CROSSTARスロープの後ろ姿はベース車と変わらない。そこもポイント。車いす乗車もできる高いユーティリティを備えた仕様の位置づけだ。

キーワードで検索する

著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…