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自衛隊新戦力図鑑

戦闘機の性能差に苦しむウクライナ

ウクライナ軍では旧ソ連製のMiG-29、Su-27戦闘機を用いてきた。対するロシア軍はSu-35SやSu-30SMを主力とする。これら両機とも、ウクライナ軍が使用するSu-27の発展型ではあるのだが、性能は段違いだ。搭載するレーダー探知距離はSu-27よりはるかに長く、使用するR-77空対空ミサイルも、ウクライナ軍のR-27ミサイルより射程が長い。つまり、ロシア機はウクライナ機を先に発見し、反撃されない距離から攻撃できた。

さらに言えば、ロシアのR-77は「ミサイル自身が目標を探知して追いかける方式(アクティヴ・レーダー誘導)」なので、発射後に母機は逃げることができる(これを「撃ちっ放し能力」と言う)。しかし、ウクライナのR-27は「戦闘機が指示する目標を追いかける方式(セミアクティヴ・レーダー誘導)」のため、命中まで危険を冒して敵を追い続けなければならない。これまでウクライナがいかに不利な戦いを強いられてきたか、理解できるだろう。

ウクライナ軍のMiG-29戦闘機。侵攻前に50機程度を保有していたと見られる。侵攻後、ポーランドとスロバキアが計27機を供与し、今年7月にポーランドは追加供与にも言及している(写真/Ministry of Defense of Ukraine)
ウクライナ軍のSu-27戦闘機。Su-27は、ソ連時代に東欧諸国に輸出されなかったため、MiG-29のように支援国からの供与が期待できない。侵攻前に50機程度を保有していたと言われるが損耗する一方だ。(写真/Ministry of Defense of Ukraine)

F-16供与でロシアと互角に

さて、F-16も開発時期で言えばMiG-29やSu-27と同世代だが、その後に改良を繰り返し、現代でも第一線の戦闘機として世界中で活躍している。ウクライナに供与されるF-16はオランダ、デンマーク両国が配備していたもので、機体そのものは古い型だが、近代化改修を経て最新型と同程度の性能を持つF-16AM/BMと呼ばれるタイプだ。レーダーの探知距離や、搭載するAIM-120空対空ミサイルの射程距離も、ロシア戦闘機に並び、なによりAIM-120は前述した「撃ちっ放し能力」を持っている。つまり、ウクライナはロシアと互角に戦える戦闘機を得たことになる。

欧州諸国ではF-16から次世代機F-35への更新を進めており、そのためF-16をウクライナに供与することが可能だった(写真/NATO)

また、F-16AM/BMはNATOの戦術データリンク「リンク16」と連接する能力を持っている。ここで注目したいのは、5月にスウェーデンが早期警戒管制機サーブ340のウクライナ供与を発表していることだ。最大450kmの範囲で空中目標を発見・追尾できる同機による探知情報は、リンク16を介してF-16と共有することが可能であり、効果的な航空作戦を実行することが可能となる。

スウェーデンのサーブ340早期警戒管制機(AEW&C)。背面の棒状の物体はASC-890レーダー。新型機の導入にともなう退役を前倒しして、ウクライナへの供与を決定した。これによりウクライナの領空監視能力は大きく向上する(CC BY-SA 4.0 Bene Riobó)

ウクライナ防衛への貢献は大きい

F-16に戦況を一変させるような突出した性能はなく、いわゆる「ゲームチェンジャー」とはなり得ないが、ウクライナ都市部に対する長距離巡航ミサイルやドローン攻撃、また戦闘機による遠距離からの滑空爆弾による地上攻撃など、これまでウクライナを悩ませてきたロシア軍の攻撃への迎撃で大きな助けとなることは間違いない。

また、西側戦闘機を導入することの意義は大きい。ウクライナ支援国はほぼ西側装備であり、旧ソ連衛星国の東欧諸国が残余のMiG-29を供与したことはあるが、長期的なサプライチェーンを考えれば、戦闘機の西側化は避けられなかった。その点でF-16は最新ではないものの必要充分な性能を持ち、世界中で使われていることから部品調達も容易だ。

ウクライナへのF-16供与は、年内に最大20機、最終的にオランダ、デンマークにノルウェー、ベルギーを加えて79機が見込まれている。

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