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■世界最高レベルの電費性能を達成したフィットEV
2012(平成24)年8月31日、ホンダは電気自動車「フィットEV」のリース販売を、自治体と特定企業に向けに開始した。2代目フィットの基本パッケージを使い、JC08モードの電力量消費率(電費)が106Wh/km、満充電時の航続距離225kmという世界トップレベルの電費性能を達成した。
コンパクトカーとして大ヒットしたフィット
ベースのフィットは2001年にデビュー、新世代コンパクトカーとして大ヒットした。
最大の特徴は、コンパクトカーでありながら圧倒的なスペースユーティリティを実現したこと。通常は後席下に配置する燃料タンクを、前席下の車両中央に配置したセンタータンクレイアウトを採用し、ワンクラス上の低床の室内空間を生み出したのだ。
パワートレインは、新開発の1.3L直4 i-DSIエンジンとホンダマチックS-CVTの組み合わせ。クラストップの燃費23km/L(10-15モード)を達成、また優れたエンジン性能と軽量なボディが相まって、軽快な走りも実現した。
2001年の販売は、半年足らずで10万台を超え、翌2002年は25万790台を記録。2年目でカローラを凌ぎ、ホンダとして初の登録車トップの座を獲得する大ヒットを記録。そして2007年に登場した2代目では、ハイブリッド仕様を設定するなど正常進化を続けた。
人気のフィットをベースに、世界最高レベルのEV
世界中でCO2削減が叫ばれるようになった2010年、電気自動車の三菱自動車「i-MiEV」と日産自動車「リーフ」が市場に投入され、日本でも実用的な電気自動車が本格的に動き始めた。
ホンダは、2代目フィットをベースにした「フィットEV」のリース販売を、自治体や企業に向けに2012年のこの日から始めた。フィットEVは、“少ないバッテリー容量でより長く走れる”、“モータードライブの走りをさらに究める“、”充電などにかかる時間のムダをなくすこと“を目標に開発された。
コンパクトながら高い居住性を持ったフィットのパッケージを採用し、減速回生量の最適化など電動システムの高効率化を図り、JC08モードの電力量消費率は106Wh/km、満充電時の航続距離225kmという、世界トップレベルの電費性能を達成したのだ。
また、力強い走りを体感できる“SPORTモード”、走りとエコの理想的なバランスの“NORMALモード”、航続距離を伸ばす楽しさをもたらす“ECONモード”の3つの走りが楽しめる3モードドライブシステムを採用。フィットEVは、2年間で約200台を価格400万円でリース販売した。
フィットEVの主要諸元をホンダeと比較
2000年、ホンダ初の量産電気自動車「ホンダe」が市場デビューを果たした。以下に、主要諸元をフィットEVと較べてみた。<>内がホンダeの諸元である。
・乗員:5名<4名>
・モーター最高出力/最大トルク:92kW/256Nm<113kW/315Nm>
・満充電時の航続距離:225km<274km>(JC08モード)
・リチウムイオン電池容量:20kWh<35.5kWh>
・交流電力量消費率:106Wh/km(JC08モード)<138Wh/km(WLTCモード)>
・充電時間:急速20分/200Vで約6時間<急速約30分/200Vで12時間>
・最高速度:144km/h<145km/h>
・車両価格:400万円<495万円>
残念ながら、ホンダeは約3年の販売を終え、2024年1月で生産を終了した。販売実績は、日本が約1800台、欧州が約1万台で、ホンダが進める電動化戦略の先鋒としてはやや不満が残った。
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フィットEVの開発と実績が、ホンダ初の量産EVのホンダeへとつながったことは、容易に想像できる。自治体や特定企業に紐付きでリースすることで、市場の様々な運転状況で発生する課題を洗い出し、それをフィードバックしEV開発の資としたのであろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。