目次
9年ぶりのモデルチェンジ! オールテレーンT/A KO3
今回ご紹介するBFGoodritch「オールテレーンT/A KO3(ティーエーケーオースリー)」は、1976年にクロスカントリー4×4用モデルとしてリリースされた「ラジアルオールテレーンT/A」の最新モデルで、シリーズとしては9年ぶりのフルモデルチェンジとなる。
そもそもこのシリーズは、オン、オフともにバランスされた性能、そして機能美であるトレッドデザイン、さらにはクールなホワイトレターなどをアドバンテージとしてきたが、最新モデルはそれらすべてをいまのSUVユーザーが欲しいと思えるほどの魅力へと引き上げている。
ちなみに、SUV用タイヤとしてはオールテレーンという欲張りなカテゴリーに属し、全サイズともにLT規格となる。もちろん、日本の冬タイヤ規制時に走ることができるスリーピークマウンテンスノーフレークマーク、M+S刻印が施されている。
オールテレーン T/A KO3、3つの特徴
オールテレーンT/A KO3は、タイヤの特徴を示すキーワードとして、「トレッドウェア」「タフネス」「トラクション」と、その頭文字である3つのTを掲げている。このように、その性能をユーザーに分かりやすく伝えるスタンスは、BFグッドリッチブランドらしさ、つまり親しみやすさとなっている。
1.トレッドウェア
「トレッドウェア」は、日本語訳すると「耐摩耗性向上」。コンパウンドには、耐久性を高め、過酷なオフロードだけではなく、オンロードでの快適性もしっかりと折り込んだ、ニュー・オールテレーン・コンパウンドを採用。また、ブロックに数多く刻まれたサイプの倒れ込みを防いでブロック剛性を高めるフルデプス・3Dロッキングサイプは、さらには偏摩耗抑制によるロングライフを期待できるという。
2.タフネス
耐久性向上を意味する「タフネス」については、ニュー・オールテレーン・コンパウンドによる耐久性アップに加えて、ショルダー部分のトレッドブロックをさらにサイドウォールにまで広げるコアガード・テクノロジーによって、外部からのダメージを抑制。まさに、オフロードレースで培われたテクノロジーを市販モデルへとフィードバックしている。
3.トラクション
トラクションでは、まず、このモデルの特徴でもあるブロックデザインがまさにその性能をダイレクトに表現している。
セレイテッド・ショルダー・デザインは、ショルダーにまでデザインされ、マッドはもちろんのこと、スノードライブでの走破性を期待できるもの。
フルデプス・3Dロッキングサイプは、ブロックの倒れ込みを防ぎながら安定感あるハンドリングを実現し、一方で偏摩耗を抑制。
そして、インター・ロッキング・トレッドデザインは、センター部のブロック剛性を高めることで、オンオフともにハンドリング、さらにはトラクション性能までをアップ。
まさにオンロードからオフロード、さらにはスノードライブにまで求められるオールマイティな性能をターゲットとしている。
ダート路ブレーキの、停止直前までのグリップ性能に大驚嘆
このオールテレーンT/A KO3を目にしてまず感じるのは、ブロック形状がランダムとばかりに並んでいるデザインだ。
実際に走ってみると、このブロックデザインのおかげで、オフロードにおけるトラクションはすこぶる高く、ダートからロックまでしっかりと路面を掴み、まさに、期待以上の安心感があった。
しかし、このタイヤの真価はそれだけに止まらない。
そのひとつがハンドリングフィールで、ロックセクションをユルユルと走るシーンから、ドリフトさせながら駆け抜けるような走りまで、しっかりとタイヤをグリップさせているために、安心感に加えて、さらには愉しさまで導き出していた。そして、そのブレーキング性能を試すために、ダートで、クルマをフル加速させた後にフルブレーキングさせると、従来ありがちだった、ズ、ズズッといったような、停まることを期待させながらも、やはりダートではグリップを失ってしまうような…といったフィーリングがかなり抑えられており、クルマが停止した瞬間に思わず「これ、すごいぞ」と言葉にしてしまったほどだった。
そして、あらためてトレッドデザインをじっくりと眺めると、ブロックのレイアウトだけではなく、そこに刻まれたサイプが多いことにも気づく。このサイプの存在は、スノーシーンなどでのトラクション確保に寄与はするものの、剛性を下げてしまう存在でもある。しかし、発進加速時やブレーキングといった力がかかるシーンでは、このサイプがガシッと噛み、そこで高い剛性感を確保している。つまりドライバーには、タイヤを起因としたような曖昧さを感じさせない、そんな仕立てがなされていた。
もはやエア抜きは過去のもの? 岩をも包むたわみ性能
オフロード走破に求められる性能のひとつに、トレッドやショルダー面をたわませて岩を包み込むようなしなやかさがあるが、快適性といったオンロード性能もターゲットとしたこのモデルにそこまでの性能をプラスすることは難しい。そして、オフロード専用のタイヤの場合は、ロックセクションへのアタックは、一般に、いったんタイヤの空気圧を落とすことで対応している。
しかし、オールテレーンT/A KO3は、標準空気圧のままに、岩に当たったタイヤ面をたわませて、必要とされるトラクションを確保。そう、難易度がそれほど高くないシーンであれば、わざわざクルマを降りて空気圧を落として・・・なんていう作業をしなくてすむ。さらには、タイヤが隠れてしまうほどの水たまり、つまり、その底が泥濘たる状況でも、グリップ感をドライバーに伝えながら、難なく走り切ってしまう。まさにオフロード走行で求められる性能を想像以上に引き上げていた。
こうなると、オンロード性能で不足を感じるかも・・・と思いきや、そんなことはなかった。
まず、走り出してみれば、接地感をしっかりと確保しており、とにもかくにも滑らかで、少し速度を上げていくと、しなやかな乗り心地が顔を出してくる。あれだけハイレベルなオフロード性能を持ちながら、オンロードにおける性能もすこぶる高いことに驚いてしまった。
もちろん、その乗り心地に、LT規格モデルならではの固さは存在している。しかし、それは「固い」と表現するよりは、剛性感が高められていた印象が強く、個人的にはむしろサスペンションの動きにしっかり感が増したと思った。ならば静粛性は悪いのかといえばそんなことはなく、いわゆるうるさいと感じさせるような音質はキャビンに届かない。もちろん、ロードノイズだけではなく、パターンノイズも同様に抑えられており、この手のタイヤとしては優秀だ。そしてコーナーにおけるグリップにも不足はなく、むしろタイヤの剛性感がプラスされた分、ロールフィールに不安を感じさせるような動きは見当たらず、オンロードでも走る愉しさが高まった、そんな印象を受けた。
このモデルをひとことで評価するならば、まさに「いい感じ」。それは中途半端さではなく、「すごくいい」という意味合いの「いい感じ」だ。ゴツゴツしたブロックデザインはお父さんの冒険心を満たし、しなやかさがありながら、かつ、耳障り感が少ないところは、お母さんにも受け入れられるはず。さらに、オールテレーンT/A KO3は、カスタマイズサイズもだが、いわゆる純正サイズを多く取り揃えていることもアドバンテージだ。まずは、タイヤから…そう考えているSUVユーザーにも是非ともオススメしたいタイヤだ。