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自衛隊新戦力図鑑

安価なドローンに対抗する、安価な反撃手段

「ドローン対処器材」として、前触れもなく公開され、大きな話題となった車載式高出力レーザーシステム。既存の重装輪回収車の車体にシステムを搭載している(写真/筆者)

防衛装備庁では、2010年度より「防空用高出力レーザに関する研究」に取り組み、この成果をもとに2018年度から「指向性エネルギーシステムに関する研究」、そして2021年度から「車両搭載型レーザ装置の研究」に取り組んできた。今回登場した車両は、この「車両搭載型レーザ装置の研究」による試作車両だ(防衛装備庁ではカタカナ語末尾の長音記号を省略し、「レーザー」ではなく「レーザ」と表記している)。

陸上自衛隊、対ドローン防空レーザーを公開!画像はこちら(全6枚)

左側面より。高出力レーザーはレーザー装置・電源・冷却装置で構成される。これらに加えて本車ではオペレーター用のシェルターも車載されている(写真/筆者)
ドローン対処におけるレーザーの利点は費用対効果に優れることだ。たとえば、中東の武装勢力「フーシ派」が使用する「サマド」無人機は1機あたり数十万円だと言われているが、これに対するアメリカ軍の防空装備は、対空ミサイルであれば1発あたり数千万~数億円、比較的安価な20mm機関砲でも数秒間の斉射で100万円近くの弾薬代がかかる。
 
レーザーの場合、照射に必要なのは1発あたり数円の電気代のみだ。将来的にAI搭載の自律型ドローンによる集団(スウォーム)戦術など、ドローンがますます大量投入されるような事態になれば、迎撃手段の効率化はとても大きな意味を持つ。

ドローン対処に用途を絞った10kW級レーザー

重装輪回収車の車体に、レーザー装置・電源・冷却装置など迎撃に必要な機能をおさめており、部隊に追従できる機動性のあるシステムとなっている(ただし、警戒捜索レーダーは分けられているようだ)。

キャビンの天井部分の円筒形の物体がレーザーの照射装置である「ビーム指向部」。式典では照射口の窓は下向きで固定されており見ることができなかったが、公開された動画では照射口の様子を確認できた(陸上自衛隊Youtubeチャンネルより)

車体上部の回転式砲塔「ビーム指向部」には、レーザー照射口のほか、ふたつの小窓が確認できる。これは目標の追尾・捕捉用の赤外線カメラと、目標までの距離を測定するレーザー測遠器だと思われる。

キャビン内に設けられたオペレーター用のシェルター。ここからレーザーを操作するようだ(陸上自衛隊Youtubeチャンネルより)

公開された資料から、搭載するレーザーの出力は10kW級で、主に小型ドローンのみに対処するものと思われる。防衛装備庁では、前述した「指向性エネルギーシステムに関する研究」で100kW級レーザーの研究開発も行なっており、こちらは迫撃砲弾の撃破も可能とされるが、こちらは機動性のある車載システムにおさめるため、出力が抑えられている。

防衛装備庁では100kW級高出力レーザーも研究している。こちらは、40フィートコンテナ2台分にもおよぶ巨大なシステムとなっている。この研究の成果をもとに、来年度から艦載型レーザーの研究が開始される(防衛装備庁Youtubeチャンネルより)

今回、この車両は「車両搭載高出力レーザ実証装置」と紹介された。現時点ではあくまで「実証」のための装置であり、今後その実用性や部隊運用について検討が進められるのだろう。まだまだ部隊配備には時間がかかるだろうが、次世代装備として今後とも注目していきたい。

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