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英国クロカン4WDが多数登場!スパイアクション映画の金字塔
クロカン4WDが劇中で活躍する作品は数多いが、そのアクションのリアルさも含めて好きなのが、「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」だ。
007映画は、歴代作品の中に多くのクロカン4WDが登場することで知られているが、同作にはてんこ盛りだ。まず最初に登場するのが、「ランドローバー シリーズⅢ」。シリーズⅢは後にマイチェンを行い、それと同時に「ディフェンダー」というモデル名に変わるのだが、ジェームス・ボンドの愛車として登場するシリーズⅢは、マイチェンする直前のモデル。
すでにフェンダーミラーからドアミラーに変わっているし、それも樹脂製が付いている。劇中に登場するのは90のソフトトップで、見たからにしてコンディションがいい。特にカーアクションを繰り広げるわけではないのだが、アストンマーチンと同様、栄光に満ちていた時代の英国車として、印象的に登場する。
実はこの登場は、後のストーリーの伏線なのだが、この時は「やはり英国車代表と言えば、やはりランドローバーだな」と観る者に思わせているのである。
懐かしの2代目ランドクルーザープラドも頑張っている!
だが、今回の主役はランドクルーザープラドだ。劇中に登場するのは、2代目モデルである90系。同作の準主役であるマドレーヌ・スワンの愛車という設定なのだが、色が日本では不人気だったゴールドというのが渋い。
登場する車両はバンパーを見る限り前期型で、海外仕様ということもあって日本では前期型3ドアモデルに採用されていた縦格子グリルを付けている。また、法規がないのでサイドアンダーミラーは装着されておらず、非常にシャープな印象だ。
そして、90プラドが派手なアクションシーンを繰り広げる時に敵役なのが、モノコックボディになった新世代のランドローバー「ディフェンダー」なのである。前半でシリーズⅢが出ていたのは、新世代ディフェンダーに繋げるための仕掛けだったのである。
それにしても思い切ったなと思うのが、あからさまなタイアップでありながら、新型車を敵役にして、ロートルの90プラドを主役に乗せさせたことだ。この古いランクルにやられてしまうのはイメージダウンではないのかと心配になるのだが、そこには深い目的が隠されている気がするのである。それについては後ほど。
さて、90系のプラドは2代目三菱「パジェロ」のヒットに慌てたトヨタが、なりふり構わぬという感じでデビューさせたクルマだ。特に3ドアモデルの顔はパジェロにそっくりで、デビュー当時は各方面から賛否両論の意見が飛び交った。5ドアモデルもパジェロロングに寄せたデザイン、カラーリングを採用しており、とにかく打倒パジェロにやっきだったのである。
メカニズムでも、パジェロがフルタイム4WDモードを持った「スーパーセレクト4WD」を装備していたため、プラドも90系からフルタイム4WDに変更。2WDモードは持たず、HからHL、LLに入れるとセンターデフロックが作動する機構になっていた。
それゆえ、やはりフルタイム4WDであるディフェンダーと互角に戦えるわけである。ボンドが走行中にどのモードにトランスファーを入れていたかは分からないが、渡河シーンや森林シーンを考えればセンターデフをロックしていたということも予想できるのだが。
とにかく相手は、最新の電子デバイスであらゆる路面に対応できる新型車だ。それをどうやって倒すのかというアイデアが、実は素晴らしい。4WD車というのは、実は勢いがあると斜面を駆け上がってしまったり、駆け下りたりして、簡単に横転するという弱点がある。昨今、高速道路の路肩の斜面が緩やかだったり、ガードロープにしているのはそれも配慮してのことだ。
この弱みを利用して、相手をどんどん横転させるボンドの戦い方がリアルなのである。そして、ここに先ほどの疑問がつながる。なぜ敵役に最新のディフェンダーを採用したのか。
ディフェンダーは先祖のランドローバーシリーズⅠ、Ⅱ、Ⅲ、そして先代ディフェンダーまでラダーフレームにアルミボディを載せるという構造を採用してきた。アルミボディはさほど強くないが腐りにくいし、その上ラダーフレームの強靱さは折り紙付きだ。未だに英国植民地だった地で多くのランドローバー車が現役なのは、この構造のおかげであることは間違いない。
ところが、現行型のディフェンダーはアルミのモノコックボディになってしまった。ワークホースと讃えられ続けてきたディフェンダーがそれでいいのか! 世界のユーザーから一斉に非難の声が挙がったのである。
しかしジャガーランドローバー社は、このボディはラダーフレーム構造をはるかに上回る剛性と耐久性と持っていることをアピール。実際、劇中で転倒したディフェンダーはボディの損傷が少なく、しっかりライフゾーンが確保されていることが見てとれる。実はそんな戦略もあって、敵役への採用なのではと考えるのはうがち過ぎだろうか。
いずれにせよ、90プラドがここまで活躍する映画は珍しく、今も日本に多くいるユーザーは溜飲を下げたにちがいない。