ボルボXC60PHEV | 自宅で”プラグイン=充電”してPHEVを使ってみた。燃費は? ガソリン代と電気代について考えてみた

ボルボXC60PHEV T8 AWD Inscription 車両本体価格◎949万円 B&Wプレミアムサウンドオーディオシステム34万円 Op込み車両価は1001万1650円
電動化を急速に進めるボルボの最新PHEVモデルを1週間預かって普段使いしてみることになった。なぜ、私がテスターを任されたか? 答えは簡単で、自宅ガレージに200VのEV充電用コンセントがあるからだ。毎日、プラグイン=充電してPHEVを使うとガソリン代、電気代はどうなるのだろうか?
PHOTO◎山上博也(YAMAGAMI Hiroya)/Motor-Fan

自宅で200V普通充電をする意味とは?

ボルボXC60は、2021年9月に商品改良を受けている。

試乗したのは、改良前のトップグレード、XC60PHEV T8 AWD Inscription(車両価格949万円)である。現行のラインアップで言えば、リチャージプラグインハイブリッドT8 AWDインスクリプション:959万円にあたるモデルだ。

試乗車のXC60PHEV T8 AWD Inscriptionに対面したのは、編集部地下駐車場である。撮影で長距離を走ってきたため、バッテリーは「0%」となっていた。まずは、夜の街を走り出してみる。インパネ内のインジケーターでバッテリー残量が0%と表示されていても、センタートンネル内に収められたリチウムイオンバッテリーには20%ほど電力はキープされている。だから必要なシーンではAWD走行できる。

夜の都心を軽く流す。車幅1900mm、車高1660mmはなかなかの迫力だが、全長は4690mmとさほど大きくないし、なにより見切りがいいので、自信を持ってドライブできる。

筆者の自宅ガレージ(都内の狭小住宅)には、EV充電用のコンセントがある。試乗車のために設置したもので、今回のXC60 PHEVが初めての自宅充電となった。
充電口は左フェンダーのこの位置にある。充電中はプラグはロックされるので、ケーブルが盗難の憂き目に遭うことはない。
コンセントの位置はここ。200Vの普通充電のためのプラグをイン。ケーブルとコントローラー(制御回路)付のプラグはそれなりに重いが、取り回しが悪いというほどではない。
付属のケーブルは「200V、16A」つまり最大出力は3.2kWのタイプだ。バッテリーが空、つまり11.9kWh(実際は20%は下回らないようだ)をフルにするには4時間弱かかる計算だ。

さて、では自宅に帰ってさっそくプラグインしてみよう。

カタログにはバッテリー容量は34Ah(アンペア・アワー)と表示されている。そして電圧は350Vとある。34Ah×350Vで11.9kWh。
電力消費率は3.78km/kWhとある。一充電消費電力量は10.36kWh/回(つまり11・9kWhすべてを使い切れるわけではない)だから、3.78×10.36=39.2kmが等価EVレンジということになる。

と細かく書いてみたが、要するにカタログ上、満充電で40kmほど一滴のガソリンも使わず電気の力で走れるということだ。

編集部のある新宿のビルの地下駐車場にはEVを充電できる場所がない。急速充電はもちろん、200Vの普通充電もだ……。

自宅のEV充電用コンセントは200V・15Aだから1時間で充電できるのは、3kWhだ。XC60PHEVのバッテリーが、もし仮に本当に空っぽになったとしても4時間かからずにフル充電できるわけだ。深夜に帰宅して、翌朝にはバッテリーは満タンになっている。

満充電されたXC60PHEVのバッテリー走行可能距離はメーター上では「35km」となっていた自宅から新宿の編集部までの距離は約14kmだ。往復で28km。編集部が入るのは、新しいインテリジェントビルのくせに、地下駐車場にEV充電設備がない。それでも、もちろん、まったく問題なく往復できた。早朝深夜の住宅街で静かにEV走行できるのは、非常にいい。

ドライブモードは「Pure」(電気モーターのみ)と「Hybrid」(ノーマルはこれ)、「Power」(スポーツドライブ)、のほかに、「Constant AWD」(常時4WD)、「Individual」、「Off Road」がある。

1週間PHEVとともに暮らしてみても、毎日編集部と自宅の往復しかしないのであれば、ガソリンはまったく使わない。それではテストレポートにならないから、バッテリー走行可能距離を少し超えてみよう。

XC60PHEVには、「Hybrid」「Pure」「Off Road」「Constant AWD」「Power」「Individual」のドライブモードがある。通常はHybridモードだ。このモードだと、バッテリー残量が「0%」(前述のようにそれでも20%程度残している)になるまで、EV走行主体に走る(モーターによる後輪駆動)。65km/hを超えるとエンジンがかかり、エンジンが前輪を駆動してくれる(つまり、エンジンによる前輪駆動)。Pureモードを選ぶと、125km/hまでEV走行できる。この場合も後輪駆動である。バッテリーを使い切るとHybridモードに自動的に切り替わり、いわゆるオンデマンド式AWDになる。ただし、後輪は機械的にはエンジンと繋がっていないから、あくまでも後輪はモーター駆動である。

■エンジン 型式:B420 形式:直列4気筒DOHCターボ 排気量:1968cc 最高出力:318ps(233kW)/6000rpm 最大トルク:400Nm/2200-5400rpm 燃料タンク容量:70ℓ
クルマの後部をのぞき込めば、リヤモーターが見える。これがERAD(Electric Rear Axle Drive)だ。リヤ AD2型交流同期モーター  定格出力28kW 最高出力65kW/7000rpm 定格電圧309V  最大トルク240Nm/0-3000rpm

バッテリー残量がなくなったところで、せっかくなので充電もやってみようと考えた。ボルボのPHEVにはいわゆる「急速充電」のCHAdeMO用の充電口はない。ボルボは、PHEVは急速充電が必要ない、と考えているからだ。実際、11.9kWhのバッテリーのために急速充電用チャージャーを車載するのは、コスト的にも重量的もメリットは少ない。そもそも、エンジンでも走れるから、外出先で急速充電を迫られることはないのだ。では、どんな場合に外出先で充電(普通充電)するのか?

たとえば、撮影途中で立ち寄ったお台場のショッピングモールの駐車場には200Vの充電器付のスロットが2台分あった。ここにXC60PHEVを駐めて買い物を3時間ほど楽しんだとしたら、たいていの場合、クルマに戻ってきたらバッテリーは満タンになっているだろう(しかも、今回の駐車場は充電料金は無料!)。3時間駐めて充電した場合、9kWh分程度になる。

お台場の商業施設の駐車場。ここは、Mode3の充電器で、200V 16Aで充電できる。

毎日帰宅し、クルマを駐めた後、トランクから普通充電用のプラグ&ケーブルを取り出し、まずガレージのコンセントに差す。そして、左フロントにある充電口にプラグをイン。慣れてしまえば、ものの2分もかからない作業だが、正直、若干面倒ではある。毎回リヤゲートを開けてケーブルを取り出さなければいけないからだ。できれば、スマホの充電ケーブル&充電器のように、自宅用と車載用の2セットのプラグ&ケーブルを持っていたいところだが、きっと価格もそれなりにするだろうから、なかなか悩ましい。

ケーブルは、専用のバッグに綺麗に収まる。が、毎回ケーブルを巻いて収めるのは、結構面倒だ。
付属の200V普通充電用のケーブル。自宅以外で普通充電する機会もあるから、毎回トランクに載せておくべきもの。スマホの充電ケーブルのように2セット用意しておいたら便利かも、と思ったが決してお安くはないはず。

じつは、一度ケーブルを自宅に置いたままでかけたときに、出先のEV充電スタンドに駐めようと思ったのだが、Mode2の充電器(充電ケーブル側に制御回路を内蔵してある必要がある。Mode3だと充電器側に制御回路があるから、クルマの充電口にプラグを差すだけ)だったために、充電ができなかったのだ。

指先で隠れているのは「Hold」ボタン。これをONにしておけば、その時点でバッテリーに残った電力はキープされる。貯めていた電気をどこで使うのか。それがPHEVドライブの面白いところである。

数日間、XC60PHEVと過ごして、だんだんとわかってきた。11.9kWh分の電力をどこでどう使うか。それを考えながらドライブするのが、面白いのだ。明日、走るコースを思い浮かべる。距離、交通状況も考えてみる。さて、どこで切り札の電気を使おうか。

それを可能にするのが、センターディスプレイの右画面で設定できる「HOLD」と「CHARGE」モードだ。HOLDモードは、モーターの使用を止めてバッテリーを温存するためのもの。CHARGEは、エンジンで発電してバッテリーに充電するモードだ。

燃費を詳細にチェックしてみよう

内から三浦半島へのドライブ。観音崎の横須賀美術館まで足を伸ばした(残念ながら休館日だった)。週末のちょっとしたドライブでもPHEVならかなりの好燃費が期待できる。

週末、自宅(東京・目黒区)から三浦半島まで往復140kmほどのドライブに出かけてみた。充電100%で、EV走行可能距離は35kmの表示だった。自宅から市街地を通って第三京浜道路(有料道路)までの3kmは、「Pure」モードでEV走行。ここまで燃費計は100km/ℓを示している。

第三京浜~横浜新道~横浜横須賀道路~三浦縦貫道は「HOLD」でバッテリーを温存。2.0ℓ直4ターボ+スーパーチャージャーの318ps/400Nmを使って走る。2トン超えのボディだが400Nmの大トルクが軽々と前へ押してくれる。高速道路を約50km走ったところで、燃費計は14.2km/ℓとなった。

美術館の駐車場には200Vの充電器が設置されていた。美術館で数時間楽しんでいる間に、バッテリーの電力量はかなり回復するはずだ。

一般道に降りたら、時ならぬ大渋滞。ここは、HOLDモードを解除して、電気の力を借りよう。いつもなら、三浦半島南端の城ヶ島を目指すのだが、さらなる渋滞が予想されたから、方針転換。観音崎を回ることにした。観音崎の横須賀美術館でも寄ってカフェでコーヒーでも飲んで帰ろう。海を見ながらのドライブは快適。ほぼEV走行で、横須賀美術館に到着したときは、バッテリー走行可能距離の残りが3kmになっていた。いっぽうで燃費計の数値は20km/ℓまで伸びていた。横須賀美術館の有料駐車場には2台分のEV充電器がある。ところが、こういう日に限って充電ケーブルを積んでいなかった!(つまり充電器がMode2だった)

センタートンネル部分に収まるリチウムイオン電池。容量は11.9kWh(34Ah)電圧は350Vである。

こういうときに慌てなくていいのが、PHEVのいいところだ。ガソリンタンクには、まだたっぷりと燃料が残っているのだから。

美術館を出発するときに、またHOLDモードにセットした。残り3km分のバッテリーは、高速を降りてから自宅までの分だ。パーキングエリアなどで休憩した場合、いったんイグニッションをOFFにするとHOLDモードもキャンセルされてしまう。ここは注意が必要だ。

この日のドライブは走行距離140.9kmで燃費は18.1km/ℓだった。このサイズのSUVでこの距離を走って18km/ℓ台というのは、文句なしにいい数値だ。もちろん、美術館で充電ができていれば、もっと燃費データは上がっただろう。たとえば、ウィークデーは通勤(EV走行だけ)、週末は今回のようなドライブだと仮定すれば、燃費は30km、40km/ℓ台だってまったく不可能ではない。

140.9km走って燃費は18.1km/ℓだった。残りの航続距離が970kmと出ている。XC60PHEVは上手に走れば1タンクで1000km走れるわけだ。燃料タンクは70ℓ。

少し詳しくこの日の燃費を考えてみよう。140.9kmで18.1km/ℓだから約7.8ℓのガソリンを使ったわけだ。ハイオクガソリンが173円/ℓだとすると、ガソリン代は1349円になる。では電気代は? 電気代はそれぞれの地域や電力会社によって異なるが、ざっくり1kWh=26円(筆者の自宅は26円48銭)だとする。11.9kWhの約80%を使ったとして9.5kWhだから電気代は9.5×26円=約247円となる。

ガソリン代+電気代で合計1596円。つまり、1km走るのに約11.3円ということになる。

これは、レギュラーガソリン(162円/ℓだと仮定)の場合は、14.3km/ℓ、ハイオクガソリン車の場合は15.3km/ℓと同等ということだ。動力性能、乗り味は明らかにPHEVに軍配が上がる。それでいて、燃費は同等以上。これはうれしい。

電気で走る距離が長くなればなるほど、トータルの燃費は上がっていく。
たとえば、ウィークデーは、往復30kmの通勤を月~金曜日の5日間で150km、週末に今回のような140kmのドライブをしたとしたら、
ガソリン代は1349円
電気代は3.7km/kWhだと仮定して150÷3.7=40.5kWh 40.5×26円だとすると1053円
合計すると2402円
ということになる。
290kmを2285円で走ることになるので、約7.9円/kmだ。

これは、レギュラーガソリン車の場合は、20.5km/ℓ ハイオクガソリン車の場合は、21.9kmℓに相当する。おそらく、ボルボXC60PHEVの燃費計は37.2km/ℓと表示するはずだ(290kmを7.8ℓのガソリンで走ったことになるから。この数字は電気代はカウントしていない)。

PHEVの燃費を計るのは難しい。が、うまくバッテリーを使えば、燃費が良くなるのは間違いない。燃費がいいのは、ともあれうれしい。

ボルボ車の美点のひとつは、オーディオの音質だ。試乗車はオプション(34万円)のB&W社製プレミアムオーディオが載っていた。コンサートホールの「ヨーテボリ・コンサートホール」のサウンドはぜひ一度お試しいただきたい。

もっとうれしいのは、ドライブがある種の「知的ゲーム」のようになることだ。次のドライブでは、高速巡航時に「CHARGE」モードを使ってみたらどうなるか? 登坂ルートがあるドライブコースでは、バッテリーをどう使うのがいいのか? 考えながら走るのは、とても楽しい。

PHEVは、自宅に充電設備がなくてまったく問題なく走れる。しかし、ここはやっぱり毎日”プラグイン”できる環境で使いたい。1週間、XC60PHEVと過ごして、PHEVの魅力に気づかされた。正直、返すのがちょっと惜しくなってしまった。例によって、きれいに洗車してボルボジャパンに返却するわけだが、美しいデザインのアルミホイールがまったく汚れていないことにもびっくりした。そうだ、制動エネルギーは、回生してバッテリーへ貯めているから、ブレーキパッドの粉による汚れは最小限なのだな。これもPHEVの美点のひとつだとうれしくなった。PHEVって、あり、である。

ボルボ 電動パワートレーンのすべて (モーターファン別冊 ニューモデル速報 インポートシリーズ)

ニューモデル速報インポートシリーズの最新作は「VOLVO電動パワートレーンのすべて」です。3/31発売!

■充電電力使用時走行距離:40.9km 電力消費率:3.59km/kWh WLTCモード:12.6km/ℓ 市街地モード15.3km/ℓ 郊外路モード9.6km/ℓ 高速道路モード14.4km/ℓ
全長×全幅×全高:4690×1900×1660mm
ホイールベース:2865mm
車両重量:2180kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.7m
エンジン
型式:B420
形式:直列4気筒DOHCターボ
排気量:1968cc
ボア×ストローク:82.0mm×93.2mm
圧縮比:10.3
最高出力:318ps(233kW)/6000rpm
最大トルク:400Nm/2200-5400rpm
燃料供給方式:筒内直接噴射
使用燃料:無鉛プレミアム
燃料タンク容量:70ℓ
モーター:前T28型交流同期モーター
 定格出力22kW 最高出力34kW/2500rpm 定格電圧350V
 最大トルク160Nm/0-2500rpm
後AD2型交流同期モーター
 定格出力28kW 最高出力65kW/7000rpm 定格電圧309V
 最大トルク240Nm/0-3000rpm
駆動用バッテリー容量:11.9kWh(34Ah) 350V
駆動方式:電子制御AWD(エンジン+モーター)

トランスミッション:8速AT(ギヤトロニック)
充電電力使用時走行距離:40.9km
電力消費率:3.59km/kWh
WLTCモード:12.6km/ℓ
市街地モード15.3km/ℓ
郊外路モード9.6km/ℓ
高速道路モード14.4km/ℓ
車両本体価格◎949万円

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…