日産ノート | さすがイヤーカー受賞だけのことはある!燃費もいいし、走りもいい。カッコもいい!(ただし、プロパイロットを付けたらお値段もそれなりです)

日産ノートX(2WD)車両価格○218万6800円 試乗車はop込みで326万6256円
日産期待の新型ノートは、2012年発売の前型、16年に追加されたe-POWERモデルから一気に、あらゆる意味でトップに躍り出る要素に満ちている。燃費、走り、居住性、使い勝手、どこをとってもライバルに負けるところはない……そんな出来映えだ。

日本カー・オブ・ザ・イヤー獲得! ノートシリーズは売れてる?

ボディカラーはオペラモーブ〔M)/スーパーブラック2トーン(5万5000円のオプション色)試乗車はまだ1355kmしか走っていないおろしたての新車だった。

新型ノート/ノート オーラシリーズが、今年のクルマ「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に選出された。日産にとってはリーフ(初代)以来の栄冠獲得である。

ノートは2020年12月23日に発売。その後、ノート(4WD)を2021年春に発売、6月にノート オーラを発表、8月にノート オーラNISMOを、10月にノートAUTECH CROSSOVERを追加している。切れ目なく話題を提供したという言い方もできれば、半導体不足や部品供給の問題で否応なく五月雨式になってしまったのかもしれない。

いずれにせよ、ノート/ノート オーラシリーズの評価が高いことに異論はない。

国内販売台数は2021年1~11月で8万2437台。

ヤリス/ヤリスクロス/GRヤリスの合算であるトヨタ・ヤリスの19万6020台には敵わないが、ホンダ・フィットの5万4315台は楽々上回っている……そんな販売状況だ。コンベのパワートレーンを設定せず、e-POWERだけに絞った戦略(つまり車両価格はどうしても高くなる)が奏功しているとも言える。

第一印象で質感の高さを感じさせた。素直に、カッコイイと思えるデザインだ。

新型ノートの評価のポイントは、
・第二世代e-POWER第一弾への期待
・新プラットフォーム、CMF-Bを採用していること
そして、個人的には内外装のデザインである。

本社から会社まで 40.6kmを24.3km/ℓ

というわけで、日産本社地下1階で対面したオペラモーヴ/ブラック(2トーン)のボディカラーのノートは、想像通り好印象だった。アリア(早く発売してほしい)とノートから始まった日産の「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」デザインは、前から見ても横から見ても後ろから見ても新しさを感じさせてくれる。

横浜の日産グローバル本社から首都高速に乗って外苑出口で降りて東新宿の編集部まで約40kmを軽く流す。燃費計は24.3km/ℓを示していた。
ちなみに、20年の酷暑のなか、キックスを同じように走らせたら24.4km/ℓだった。40km程度の距離だと、乗り始めのバッテリー容量によって燃費データはかなり違ってしまうので、比較にあまり意味はないかもしれないが、24km/ℓ超えは気分がいい。

全長×全幅×全高:4045mm×1695mm×1505mm ホイールベース:2580mm
トレッド:F1490mm/R1490mm 最低地上高:120mm
車両重量1220kg 前軸軸重790kg 後軸軸重430kg 最小回転半径:4.9m

そして、最初のドライブから、e-POWER第二世代の実力の片鱗を感じた。停止しているとき、市街地をゆっくり走っているときにエンジンが始動すれば、第一世代e-POWER(キックス)も新型ノートも気づく。ある程度のロードノイズが乗ってくる速度域になると新型ノートではエンジンのON/OFFはまず気づかない。キックスも気をつけていないと気づかないのだが、逆にいえば気をつけていれば気づく。

振動の少なさもプラットフォーム(CMF-B)の新しさを感じさせてくれた。

前型ノートのデビューが2012年、e-POWERが搭載されたのが2016年だった。ご存知の通りノートe-POWERは大ヒットして、「シリーズハイブリッド、アリだね!」ということになったわけだ。その当時も、e-POWERノートは良かったが、コンベのエンジン搭載車のノートはお世辞にも洗練された乗り味とは言えなかった。つまり、「e-POWERが七難隠す」役割を果たしていたわけだ。

アリアとノートのデザインはタイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム。

新型は、シャシーから一新されている。素性の良さそうなCMF-Bにモーターインバーター、制御まで一新された第二世代e-POWERが搭載されたのだから、悪くなるよそは欠片もない。

新型ルノー・ルーテシアと新型ノートは、同じCMF-Bプラットフォームで、ルーテシアは1.3ℓ直4直噴ターボ+7速DCT、ノートは1.2ℓ直3+e-POWERということでパワートレーンがまったく違う。どっちがいいか、は結局どっちが好きかということになるわけだが、静かさ、滑らかさ、燃費の良さはノートの方が明らかに上だ。

ノートの方がかなり安い(ルーテシア・インテンステックパック276万9000円、ノートX218万6800円)のにすごい、と思ってはいけない。今回のノートの試乗車は、オプションを入れると326万円6256円なのだ。ノートXにプロパイロット(とさまざまな機能のセットプション)を付けるとルーテシアと価格は変わらない、ということも頭の片隅に置いておく必要がある。

同じプラットフォーム、ほぼ同じボディサイズでコンベのパワートレーンと電動パワートレーンなのだから、実際はノートの方が高価格でもなんの疑問もないのだが。

エンジンの大きな改良点は、シリンダーヘッドの刷新したことだ。スパークプラグのねじ径をM12からM10へ細くして冷却通路を拡大するなどして、燃焼室周りの冷却性能を上げ、耐ノック性を高めたという。エンジン形式:直列3気筒DOHC+e-POWER エンジン型式:HR12DE 排気量:1198cc ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm 圧縮比:12.0 最高出力:82ps(60kW)/6000rpm 最大トルク:103Nm/4800rpm 過給機:× 燃料供給:PFI 使用燃料:レギュラー
インバーターとモーターは完全新設計インバーターは新型になって容積で40%、重量で33%軽量化された。 新型モーターEM47型は全長で6mm、重量で約15%軽量化された。それでいて最高出力は約6%アップの116ps、最大トルクは約10%のアップの280Nmに向上している。
このクラスのスタンダードとしてリヤはドラムブレーキになる。
ブリヂストンのECOPIAを装着。 サイズは、前後とも185/60R16
リヤサスペンションはTBA(トーションビームアクスル)式。
フロントサスペンションはマクファーソンストラット式

第二世代e-POWERの燃費性能は?

さて、いつもの試乗コースに新型ノートを連れ出した。都内から第三京浜~横浜新道~横浜横須賀道路を通って三浦半島の南端、城ヶ島までのドライブだ。

試乗車にはプロパイロットがついていた(プロパイロットはメーカーオプションで最上級のXしか選べない)。新型はプロパイロットの制御にナビとの協調が入ったので、カーブに合わせて減速してくれる。制限速度支援機能があり、プロパイロットを作動させた時に、これをONにしておくと、フロントカメラが標識で認識した速度にが設定速度に反映されるというもの。これは返却してから知った機能なので試せなかった。

室内長×幅×高:2030mm×1445mm×1240mm

プロパイロット2.0ではないからもちろん手放し運転はできない。が、やはり信頼できるプロパイロットがあると高速道路の運転は楽ちんだ。モニターの燃費計を見ながらの走行で気づくのは、「新型ノートのe-POWERは高速道路が苦手ではなくなっている」ことだ。前型は、高速道路になるとエンジンが元気よく回り、燃費はみるみる悪化していった。それが新型では、エンジンの存在はほぼ気づかないレベル(ONのときも)だし、燃費もほとんど悪化しない。

後席が広いというノートの美点は新型もしっかり継承している。
フロントシートの出来は上々。腰が痛くなることはなかった。
身長175cmの標準体型のドライバーが前後に座ると後席の膝周りにはこのくらいの余裕がある。

新型ノートX(2WD)
WLTCモード燃費:28.4km/ℓ
 市街地モード28.0km/ℓ
 郊外モード30.7km/ℓ
 高速道路モード27.2km/ℓ

キックスX(2WD)
WLTCモード燃費:21.6km/ℓ
 市街地モード26.8km/ℓ
 郊外モード20.2km/ℓ
 高速道路モード20.8km/ℓ

だから、新型は市街地モードと高速道路モードの差がほとんどない(市街地モードの97.1%)。キックス(e-POWER第一世代の完成形)では、77.6%だったのだから、その差は歴然だ。

今回の試乗は、ほぼ「ECO」モードで走った。燃費を気にした、というより、e-POWERのワンペダルドライブが楽しいからだ。とはいえ、このワンペダルのフィーリングがどうしても馴染めないという人もいるから、「NORMAL」(アクセルオフで強い回生ブレーキがかからない)が用意されている。

新型ノートでは、ワンペダル操作ができるECOとSPORTモードにもクリープ機能を付けた。その代わり、キックスではワンペダルで「停止」までできたのだが、新型ノートでは停止は「ブレーキペダルを踏む」ように変更されている。個人的にはキックスのワンペダルのように停止までできたほうがいいのだが、これは日産開発陣の考え方、ということだ。そして、完全停止までワンペダルでできなくてもなんの不自由もなかった。

ステアリングホイールの調整は、ノートとして初めて前後方向(テレスコピック)が組み込まれたことだ。
ステアリングホイール左側はオーディオ関係のコントロールと表示切り替えスイッチを配置。
右側は、プロパイロットのコントロールスイッチを配置。

燃費の話をしておくと、今回の試乗は
総走行距離347.3kmで22.3km/ℓだった。
WLTCモードの78.5%だから、走り方や外部要因でまだまだ上がる余地はありそうだ。軽く普通に走って22km/ℓ超えの実力は、コンパクトカーとして充分以上だろう。

ちなみにほぼ同じコースを真夏に走った際の
キックスは19.0km/ℓ
ほぼ同じコースを冬に走った
ルノーの新型ルーテシアは17.2km/ℓ
だった。

開閉式のドリンクホルダーは運転席と助手席のインパネ端にある。
スマホからペットボトル、紙パックまで置けるのがいい。

日産のe-POWERの真価は燃費よりもモータードライブの気持ちよさにあると思う。だから燃費の良さは、ある意味付加価値だと、個人的には考えている。燃費がいいのはうれしい。新型ノートは、走りもデザインもすべてが一足飛びに良くなっている。前型ノートe-POWERで初めて電動ドライブを体験した人は、おそらくもう普通のパワートレーンには戻れないだろう。前型e-POWERのオーナーが新型に乗ったら、その進化の大きさをすぐに実感できるはずだ。

ノート、フィット、そしてヤリスという燃費も走りもいいコンパクトカーが揃った。このクラスのクルマを探す人は、悩み甲斐がありそうだ。ただし、どのモデルも、満足いく仕様にすると、それなりのプライスタグになることもお忘れなく。

ラゲッジルームは、後席を倒さない場合、VDA方式で340ℓ。前型より10ℓ増えている。試していないが、機内持ち込み可能なサイズのスーツケースを4個積めるという。
後席シートバックは6:4の分割可倒式。倒せば最大奥行きは1485mmになる。

いいモノには、それなりのプライスタグが付くのは健全なこと、だと思う。
ヤリスを買おうと思っている人は、新型ノート、フィットも試乗してみるべきだし、その逆もしかり。どれも個性が際立っているから、試乗も楽しいはずである。

センターコンソール最前部には、スマホを置くのにぴったりのトレーがある。USB端子も用意されている。試乗車にはワイヤレス充電器Qiを装備していた。Qi対応のスマホなら置くだけで充電できる。
鏡面を液晶ディスプレイにとしお、車両後方カメラの映像を映せるインテリジェントルームミラーは「S」「X」にオプション設定されている。夜間や雨天などの悪天候時に効果を発揮する。
標準はハロゲンだが試乗車はオプションのLEDヘッドライトがついていた。
日産ノート X 2WD

全長×全幅×全高:4045mm×1695mm×1505mm
ホイールベース:2580mm
車重:1220kg
サスペンション:Fストラット式 Rトーションビーム式
駆動方式:FF
エンジン形式:直列3気筒DOHC+e-POWER
エンジン型式:HR12DE
排気量:1198cc
ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm
圧縮比:12.0
最高出力:82ps(60kW)/6000rpm
最大トルク:103Nm/4800rpm
過給機:×
燃料供給:PFI
使用燃料:レギュラー
モーター:EM47型交流同期モーター
最高出力:116ps(85kW)/2900-10341rpm
最大トルク:280Nm/0-2900rpm

バッテリー:リチウムイオン電池
燃料タンク容量:36ℓ

WLTCモード燃費:28.4km/ℓ
 市街地モード28.0km/ℓ
 郊外モード30.7km/ℓ
 高速道路モード27.2km/ℓ
車両価格○218万6800円
試乗車は
メーカーオプション90万6400円
・オペラモーブ〔M)/スーパーブラック2トーン:5万5000円
・44万2200円(インテリジェントアラウンドビューモニター+インテリジェントルームミラー+USB電源ソケット+ワイヤレス充電機+NISSAN CONNECTナビゲーションシステム地デジ内蔵+NISSAN CONNECT専用車載ユニット+プロパイロット+SOSコール+インテリジェントBSI後側方衝突防止支援システム+BSW+RCTA後退時車両検知警報+ETC2.0ユニット)
・7万3700円(ホットプラスパッケージ+クリアビューパッケージ+高濃度不凍液+PTC素子ヒーター)
・33万5500円(185/60R16タイヤ+アルミホイール+LEDヘッドライト+アダプティブLEDヘッドライトシステム+LEDフォグランプ+本革巻ステアリング+ピアノブラック調+リヤセンターアームレスト

・ディーラーOP:17万3056円
合計326万6256円

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…