目次
安全のブランド「ボルボ」のハイエンドトラック
ボルボ・トラックが11月29日より新型FHとFMXの販売を開始した。FHはセミトラクターの4×2と6×4、カーゴは6×2と6×4をラインナップ。ここでは新型のボルボ・トラックに触れる機会に恵まれたので、注目点を紹介していこう。
セミトラクターとはトレーラーを牽引するヘッド部分で、カーゴは荷台との一体型。また4×2とはタイヤを4セット(前後で2軸 )持ち駆動輪が後2セット(後1軸)。6×4ならば、6セット(前1軸、後2軸)のタイヤに駆動輪が後4セット(後2軸)。
また、構内専用モデル(ナンバー無し)の新型FMXも同時に発売された。こちらは6×4(前1軸、後2軸 / 後2軸駆動)と8×4(前2軸、後2軸 / 後2軸駆動)仕様で、キャビンがFHと同様のベースデザインとなった。38トンのリヤアクスルをオプション設定し、8×4で積載量を最大20%増加させることができたという。
技術的に注目なのは、パーキングヒーターとI-パーククールを全車に標準装備したこと。これによって待機中にエンジンを停止しても冷暖ともにエアコンを作動させることができる。そのため、完全なアイドリングストップ機能を全車が得たのだ。
安全装備では、時速0km/hまで制御する改良型アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)を採用。下り坂での速度超過を防ぐ、ダウンヒル・クルーズコントロール機能も備えた。当然ながら緊急ブレーキ機能付き衝突警告機能やスタビリティコントロール、電子制御ブレーキシステムなども備えている。
最新装備とあえて採用した大排気量エンジン
さらに先代モデルから採用された、路面からのキックバックなどを抑止するボルボ・ダイナミック・ステアリングにパーソナルセッティング機能を追加。個々のドライバーの運転しやすい設定が可能となった。またレーン・チェンジ・サポートやスタビリティ・アシストなども装備する。
その他、車線逸脱警報装置、ふらつき注意喚起装置などの安全機能や、助手席ドアに安全窓のない輸入車だけにパッセンジャーコーナーカメラなども装備する。
そして注目なのがエンジンで、このモデルは13ℓの直列6気筒ディーゼルターボエンジンを搭載することだ。他社がダウンサイジングを進める中、ボルボ・トラックはあえて大排気量エンジンを採用した。低回転で運行することが可能で、その方が環境に優しいと判断できたからだという。ちなみにエンジン仕様はセッティングにより2種類でD13K460型は最高出力が338kW (460hp) /1400〜1800rpm、最大トルクは2300Nm (235kgm)/900〜1400rpm。D13K540型は最高出力が397kW (540hp) /1460〜1800rpm、最大トルクは2600Nm (265kgm)/1000〜1400rpm。
目的ありきで生まれる脱帽のデザイン
そして今回注目したいのが、そのデザインだ。まずフロントを見ただけで圧倒されるのは、そのセンスの良さ。LEDヘッドライトを採用していることでその自由度は高まりV字を象るコンビライトをより鮮明にしている。力強さは感じるものの、それが威圧感になっていないのもポイント。ある意味、ボルボの乗用車よりも象徴的な存在感を示しているかもしれない。また、このヘッドライトはアダプティブ・ハイビーム・ヘッドライトと呼ばれるもので、カメラとレーダーの監視によって対向車の接近などでは、自動的にハイビームの一部をカットする。
FHとFMXでキャビンを共用したとのことだが、実は全高が大幅に異なっている。6×4のノーマルルーフ仕様で比較するとFHトラクターのスリーパーが3480mmであるのに対して、FMX ショートキャブでは3083mmとなっている。必然的にFMXの方がヒップポイントもアイポイントも低くなる。この狙いは、まさに用途にある。
FMXは日本では構内専用となるが、オフロード的なフィールドも含めてヘビーデューティな用途となる上、規格外のトンネルや建屋内を走行することもあり、できればルーフは低い方がいい。対するFHはロングツアラーとしての用いられ方が一般的なので、後方のベッドへのアクセスも含めた扱いやすさが重視される。特にハイルーフのグローブトロッターでは、身長180cm級の人でも室内で立つことができる。
特にこの恩恵が得られる理由は、フロアを高くしたことでエンジンのフロアからの突出をほぼなくしていることだ。これによって運転席&助手席を含めた居住スペースの利便性が大幅に向上している。
直感で理解できるスイッチと大人な液晶メーターパネル
さらに注目されるのがインテリアだ。このモデルでメーターパネル、サイドともに液晶化されている。センターメーターはそのデザインが非常に整然としている。いくつかの表示パターンがあるのだが、標準的な表示でも遊びのない洗練された印象がある。円形に指針が移動するスピードメーターとその下にはバーグラフ式のタコメーターを配置。こちらも指針が示され横に移動する。ある種懐かしいタイプだが、レイアウト的にスピードメーターを大きくすることができるなど、極めて合理的でもある。また指針の表示近傍だけ数字を示す設定となっていて視認性に優れている。乗用車でなぜこうした「大人」の表示ができないのだろう? と思ってしまうほど液晶のポテンシャルの高さを感じさせ、魅了されるものだ。
インパネ周りは、ドライバーを中心にドライバーに向き合う形で操作系が配置されている。大型車であることもありスイッチの一つ一つが大きいのが印象的。また、センターモニター以外ではタッチセンサー式のスイッチは採用されていない。さらにスイッチには文字による表示がかなり少ない。絵表示のピクトグラムで示されているのだ。これはトラックに共通する仕立てではあるのだが、特別な機能の多い大型トラックでは文字による表示には限界もあり、ドライバーに直感的に理解してもらうことが必須でもあるためだ。
スイッチの配置も操作頻度、走行中に操作するものかどうかなどによって一夜操作方法が決められているようだ。
そして改良されたのが、フロアシフトのレバー。トランスミッションはデュアルクラッチ式のオートマチックだが、シフトレバーはシート一体型で停止ポジション(Pではない)ではレバーが前に倒れて完全に水平になり助手席やベッドへの移動がしやすいように配慮されている。また、Mレンジではシフトレバーにかけた親指で操作できるマニュアルシフトが可能だったり、また走行シーンによって変速モードを設定することもできる。
こうしてさらに乗用車に近い形となりつつあるのだが、ボルボらしさを感じるのは、運転者の疲労をできるだけ軽減しようという姿勢だ。それは運転しているときだけでなく、停車している時なども同様。まるで家にいるような快適性、というのもひとつの狙いであるという。