クラウンフェイスのクレスタワゴンにベンツのスーパーシルエット風VIPカー!? 自動車大学校の平成テイストカスタム! 【東京オートサロン2025】

日本が世界に誇るカスタムカー文化を支えるメーカーやショップのプロたちがしのぎを削る舞台である東京オートサロンには、次世代を担う若者たちも集う。それが自動車専門学校によるカスタムカーの出展だ。正直、粗削りな面もあるものの、若さと情熱が生む独自の発想で作り上げられるクルマたちには、来場者を惹き付ける魅力にあふれている。『東京オートサロン2025』の会場に花を添えてくれた若きカスタムビルダーたちの作品に注目してみた。今回は、東京自動車大学校と小倉学園・群馬自動車大学校の展示車を紹介しよう。
REPORT&PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)

W124 Racing VIP by 東京自動車大学校

東京自動車大学校の学生が手掛けたのは、なんと名車W124型メルセデスベンツ230EをベースとしたスペシャルなVIPカーだ。なんと外観は、レーシングカー風としながらも、内装をVIP仕様に仕上げたという。

バブル期のベンツを彷彿させるド派手なエアロを纏ったW124 Racing VIP。

往年のケーニッヒスペシャルを彷彿させるド派手なワイドフェンダーを備えたエクステリアは、学生の手作りによるもの。ボディカラーは、BMWの人気色「アルピンホワイト」を採用した。
一部のエアロパーツは市販品を加工して流用しているそうで、エアロバンパーはS13用のもの分割、ワイド化して装着。リヤテールゲートスポイラーはDC5型インテグラタイプRのものだという。

リヤスポイラーは、2代目インテRからの流用品だそうだ。

しかし、言われなければ想像もしないほど見事にマッチさせているセンスは見事だ。さらに足元には、ツライチに仕上げた「レーシングサービスワタナベ」の18インチホイールに、フロント265/35R18・リヤ285/30R18のワイドタイヤを装着しているが、足まわりと車高はノーマルのまま。エアロのデザインでローダウンに見せているのも工夫のひとつだ。

より巨大に張り出したリヤフェンダー。レーシングカーを目指す際にイメージしたのは、シルエットフォーミュラだ。

さらに面白いのが、トランク部を変更できる仕様であること。日産エクサのようにトランク部を変更できるようになっており、ワゴンスタイルとなるキャノピーが用意されている。もちろん、セダンフォルムのままなので、トランクルームは独立したままだが、容量を拡張できるというわけだ。

なんとトランクリッドと交換することで、荷室容量を拡大できるキャノピーを用意。

レーシーなエクステリアと対象にVIP仕様となる内装は、ドライバー+パッセンジャー 1名のVIP専用二名乗車仕様に変更。標準ボディのまま後席の乗員がくつろげるように、助手席も取り払われている。

内装色こそアレンジしてあるが、基本的ノーマルのままとなるコクピット。
助手席は大胆に取り去ることで後席の足元を広くした。

そして、移動中に音楽を楽しめるように、運転席側の構成部分には巨大なウーファーボックスが設置されているという大胆さ。シート自体は純正のままで表皮を張り替えているとのことだ。

何とリヤシートは1名乗車仕様!運転席の後ろ側にはウーハーBOXが鎮座する。
リヤパーセルシェルフにも多数のスピーカー内蔵!これぞ走るジュークボックス!?

Eクラスをバブル臭の漂うVIPカーに仕上げたのは、レトロブームの影響もあるのかもしれないが、デザインでイメージしたのは、シルエットフォーミュラだそう。むしろ、世代で、デザインの受け取り方が違うのかも。
余談だが、ベース車自体についても尋ねてみたところ、この車両は学校が所有していた1992年式の230Eとのこと。ただ走行距離が2万キロ台と聞いて、ちょっと勿体ないと思ってしまったのも本音だ。

GAUS☆CRESTAWAGON by 群馬自動車大学校

新型クラウン顔に興味を引かれたのが、小倉学園・群馬自動車大学校の「GAUS☆CRESTAWAGON」だ。
今や貴重なステーションワゴンをセダンベースで仕上げた。スポーツカー風の仕上げであるが、ステーションワゴンだった初代クラウンエステートのファンには、このまま市販して欲しいと思った人もきっといたことだろう。

新型クラウンにもピュアステーションワゴンが⁉と思わせるバンランスの良さ。

ベースには最終型となったGX100型クレスタを使用し、15年以上前に流行した「J-LUG」をコンセプトにラグジュアリーステーションワゴンを目指したという。

ルーフ後部はオリジナルデザインとなるが、なかなかの出来映え。テールランプは70型カムリからの流用だ。

スポーティなエクステリアは、エアロパーツとボディとステーションワゴン化は学生によるオリジナルのもの。フロントマスクにはクラウンクロスオーバーのパーツを流用。リヤテールには、日本では最後となった70型カムリのテールランプを使用したとのこと。シャープでワイドなテールランプの選択は、クラウンマスクとのマッチングも良い。

製作時間的な問題もあってテールゲートは開くようにできなかったが、ここまでの努力が垣間見られる仕上がり。

エクステリアは白を基調とした明るい空間だ。純正シートの表皮を張替え、ダッシュボードなどのトリムでは植毛塗装や張替えを行い、ラグジュアリー感を演出した。

VIPカーでも走り屋仕様が流行った2000年代を思い起こさせる雰囲気。シフトレバーは水中花だ。

さらに2000年代の空気を漂わせるのに重要なアイテムとなるのが、後席後ろに設置された巨大なウーハーだ。このオーディオシステムで浜崎あゆみでも流せば当時にタイムスリップした気持ちになれるだろう。

ノーマルシートに白いシートカバーを装着。
迫力の重点音を期待させるウーハーBOX。

MT化されていることからもわかるように、中身は本気の走り屋仕様となっており、エンジンを1JZ型2.5L直列6気筒ターボに換装。TOMEIのカムとプーリー、SARDのインジェクター、T6725Gタービンキット、インタークーラー、オイルクーラー、アルミラジエーターなどを組み込んだうえHKSのF-CON Vプロで制御を行っている。

実はエンジンも本気の走り屋仕様で、チューニング済みの1JZターボに換装されている。

足元は前後共に20インチのWORK EMITZを装着。足まわりは、車高調のチャクリキダンパーに、KEYAFORMULAのフル調整アームを組み合わせたもの。ブレーキもブレンボに変更して強化。このままサーキットでドリフトが楽しめそうだ。

学生たちが違う視点で攻めたラグジュアリーなスポーツカーは、当時の空気感を見事に切り取ることで、若者だけでなく、当時を知る世代たちからも大いに注目を集めていた。そして、GAUS☆CRESTAWAGONは、来場者投票による「東京国際カスタムカーコンテスト2025」のドレスアップ・ミニバン/ワゴン部門にて優秀賞に輝いた。

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著者プロフィール

大音安弘 近影

大音安弘

1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後…