海上自衛隊:護衛艦「たかなみ」型 理想的な汎用護衛艦のあり方を追求

護衛艦「たかなみ」型、VLSの集約やヘリ運用能力の向上、127mm主砲装備で打撃力強化した汎用護衛艦

護衛艦「たかなみ」型(1番艦、DD-110)。前代「むらさめ」型を踏襲しながら搭載装備を強化発展した現代の汎用護衛艦として5隻が建造された。写真/海上自衛隊
海上自衛隊の汎用護衛艦は護衛艦隊の骨格となる艦種だ。過去、就役した歴代艦をみると「はつゆき」型、「あさぎり」型、「むらさめ」型、「たかなみ」型、そして新鋭の「あきづき」型や「あさひ」型へと発展してきた。このなかで「たかなみ」型はポスト冷戦型の護衛艦として搭載する装備体系をより強化、より多目的に活動できる機能性を追求した。
TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

「現役中の現役」汎用護衛艦

「たかなみ」型2番艦「おおなみ」(DD-111)。竣工は2003年(平成15年)。

護衛艦「たかなみ」型は、「はつゆき」型や「あさぎり」型の後継として開発された。1番艦「たかなみ」の起工は2000年(平成12年)、進水は翌01年(平成13年)、竣工は03年(平成15年)。同型艦は5隻が造られた。1番艦「たかなみ」で艦齢は約18年、5番艦「すずなみ」で艦齢約15年だから現役中の現役といった年代、働き盛りの世代にある。前回ご紹介した護衛艦「むらさめ」型と同様の汎用護衛艦(DD)で、海上自衛隊護衛艦隊の主要艦に位置している。前代の「むらさめ」型より基準排水量で約100トン増加させたが、基本設計は同型をほぼ踏襲している。

艤装の面、とくに搭載装備類は見直された点が多い。主砲は従来の76mm砲からOTOメララ社製の127mm砲へ換装し、水上打撃力を強化した。対潜ミサイルのアスロックと対空ミサイルシースパローを収めたVLS(垂直発射装置)は、艦橋前方のMk.41発射機に統一した(格納スペースの都合で甲板から1段上がった状態になる)。

また、データリンクシステムもグレードアップされ戦闘能力は向上、各々の装備はシステム化を進め、統合化・高性能化・省力化などが図られている。艦体サイズやスペックなどは「むらさめ」型とほぼ同じに抑えられているが、艦内設備の見直しが行なわれ居住区画の使用感はより良くなったという。

艦後部の格納庫を大型化し、ヘリコプター運用能力を向上した。格納庫から飛行甲板へ機体を移動させるレールを2本とし、海自汎用護衛艦としては初めて2機のヘリ運用が可能となった。ただし通常搭載されるのはSH-60Kが1機のみだ。

「たかなみ」型3番艦「まきなみ」(DD-112)。竣工は2004年(平成16年)。
「たかなみ」型4番艦「さざなみ」(DD-113)。竣工は2005年(平成17年)
「たかなみ」型5番艦「すずなみ」(DD-114)。竣工は2006年(平成18年)

「はつゆき」型、「あさぎり」型、そして「むらさめ」型と代々造り続け、使い続けたなかで「たかなみ」型に至り、寸法や基本性能、搭載装備の洗練化などの発展を成し、オペレーションを重ねるなかで、実効性の高い理想的な汎用護衛艦のありようが見えてきた。

実働面・自然災害対応でもさまざまな活動実績がある。1番艦「たかなみ」は、2004年のスマトラ沖地震発生にタイ政府からの要請に応じ、津波被災者の捜索・救援活動にあたった。

2011年の東日本大震災では、宮城県石巻へ急行した「たかなみ」は津波により幼稚園舎で孤立していた園児11人を含む135人を救助している。 

艦後部の格納庫を大型化しヘリコプター運用能力を向上した。格納庫から飛行甲板へ機体を移動させるレールを2本とし、海自汎用護衛艦としては初めて2機のヘリ運用が可能となった(通常時は1機のみ)。
2020年2月2日、緊張が続く中東海域で情報収集活動を行なうため護衛艦「たかなみ」が横須賀基地を出港、アラビア海へ派遣された。横須賀湾口で沖止めしていた「いずも」は飛行甲板に乗員が整列し、登舷礼で「たかなみ」を見送っていた。

2020年2月2日には、緊張が続く中東海域で情報収集活動を行なうため本艦は横須賀基地を出港、アラビア海へ向かった。その後、本艦は大事なく任務を終え帰国している(これに続いて2020年5月1日、防衛省は第2次の派遣部隊として護衛艦「きりさめ(DD-104)」(むらさめ型4番艦)を同海域へ向かわせてもいる)。中東海域へ派遣されシーレーンの海洋保安に努め、日本へとつながる海路全体の安定のために海自の汎用護衛艦が働くことはこの先も継続されると思われる。

スペック)
主要要目
基準排水量      4,650t
主要寸法         151×17.4×10.9×5.3m(長さ、幅、深さ、喫水)
主機械  ガスタービン4基2軸
馬力     60,000PS
速力     30kt(約55.6km/h)
主要兵装         高性能20mm機関砲×2、54口径127mm速射砲×1、VLS装置一式、3連装短魚雷発射管×2、SSM装置一式、哨戒ヘリコプター×1
乗員     約175名(すずなみ約180名)

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著者プロフィール

貝方士英樹 近影

貝方士英樹

名字は「かいほし」と読む。やや難読名字で、世帯数もごく少数の1964年東京都生まれ。三栄書房(現・三栄…