「現役中の現役」汎用護衛艦
護衛艦「たかなみ」型は、「はつゆき」型や「あさぎり」型の後継として開発された。1番艦「たかなみ」の起工は2000年(平成12年)、進水は翌01年(平成13年)、竣工は03年(平成15年)。同型艦は5隻が造られた。1番艦「たかなみ」で艦齢は約18年、5番艦「すずなみ」で艦齢約15年だから現役中の現役といった年代、働き盛りの世代にある。前回ご紹介した護衛艦「むらさめ」型と同様の汎用護衛艦(DD)で、海上自衛隊護衛艦隊の主要艦に位置している。前代の「むらさめ」型より基準排水量で約100トン増加させたが、基本設計は同型をほぼ踏襲している。
艤装の面、とくに搭載装備類は見直された点が多い。主砲は従来の76mm砲からOTOメララ社製の127mm砲へ換装し、水上打撃力を強化した。対潜ミサイルのアスロックと対空ミサイルシースパローを収めたVLS(垂直発射装置)は、艦橋前方のMk.41発射機に統一した(格納スペースの都合で甲板から1段上がった状態になる)。
また、データリンクシステムもグレードアップされ戦闘能力は向上、各々の装備はシステム化を進め、統合化・高性能化・省力化などが図られている。艦体サイズやスペックなどは「むらさめ」型とほぼ同じに抑えられているが、艦内設備の見直しが行なわれ居住区画の使用感はより良くなったという。
艦後部の格納庫を大型化し、ヘリコプター運用能力を向上した。格納庫から飛行甲板へ機体を移動させるレールを2本とし、海自汎用護衛艦としては初めて2機のヘリ運用が可能となった。ただし通常搭載されるのはSH-60Kが1機のみだ。
「はつゆき」型、「あさぎり」型、そして「むらさめ」型と代々造り続け、使い続けたなかで「たかなみ」型に至り、寸法や基本性能、搭載装備の洗練化などの発展を成し、オペレーションを重ねるなかで、実効性の高い理想的な汎用護衛艦のありようが見えてきた。
実働面・自然災害対応でもさまざまな活動実績がある。1番艦「たかなみ」は、2004年のスマトラ沖地震発生にタイ政府からの要請に応じ、津波被災者の捜索・救援活動にあたった。
2011年の東日本大震災では、宮城県石巻へ急行した「たかなみ」は津波により幼稚園舎で孤立していた園児11人を含む135人を救助している。
2020年2月2日には、緊張が続く中東海域で情報収集活動を行なうため本艦は横須賀基地を出港、アラビア海へ向かった。その後、本艦は大事なく任務を終え帰国している(これに続いて2020年5月1日、防衛省は第2次の派遣部隊として護衛艦「きりさめ(DD-104)」(むらさめ型4番艦)を同海域へ向かわせてもいる)。中東海域へ派遣されシーレーンの海洋保安に努め、日本へとつながる海路全体の安定のために海自の汎用護衛艦が働くことはこの先も継続されると思われる。
スペック) 主要要目 基準排水量 4,650t 主要寸法 151×17.4×10.9×5.3m(長さ、幅、深さ、喫水) 主機械 ガスタービン4基2軸 馬力 60,000PS 速力 30kt(約55.6km/h) 主要兵装 高性能20mm機関砲×2、54口径127mm速射砲×1、VLS装置一式、3連装短魚雷発射管×2、SSM装置一式、哨戒ヘリコプター×1 乗員 約175名(すずなみ約180名)