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ハスラー以前にもあった軽のクロスオーバーSUV風モデル

オフローダーとハイトワゴンを融合した軽のクロスオーバーSUVという新たなジャンルを開拓したのはハスラーだが、それ以前にクロスオーバーSUV風のモデルが存在した。その代表的なのは、1998年にデビューした2代目「ホンダZ」とスズキの「Kei」だ。

2代目ホンダZの最大の特徴は、軽自動車としては贅沢なミッドシップ4WDを採用したこと。ミッドシップレイアウトと4WDとの組み合わせによって、オフロード走行や雪道走行で軽らしからぬ威力を発揮したのだ。

またKeiは、街中でもオフロードでも快適に走れるSUVとしてデビューした。アルトより全高が145mm高いダイナミックなボディに、十分な最低地上高を確保して、オフロードにも耐えられるように構成されていた。
2つのモデルとも、マッチョなボディに大型タイヤを履き、十分な最低地上高を確保しているのが特徴で話題にはなったが、大ヒットには至らなかった。当時は、ワゴンRが開拓した居住性に優れた軽ハイトワゴンブーム真っただ中でクロスオーバーSUVを受け入れる土壌がなかったこともあるが、ハイトワゴンのパッケージングを流用したハスラーに対して、両モデルは居住性、実用面で劣っていたことが、人気が限定的だった理由と思われる。
オフローダーとハイトワゴンを合体させたハスラー

ハスラーの基本的なコンセプトは、「ジムニー」のようなオフロード性能と「ワゴンR」のもつ居住性を融合させる、すなわちオフローダーとハイトワゴン合体させた、どこでも気軽に楽しく走れる実用性の高い軽自動車を目指すことだ。

1970年にデビューしたジムニーは、ラダーフレームや頑丈な前後リジットアクスルを備えた本格的な4輪駆動システムを採用したオフローダー。その後もジムニーは、市場の要求に応えながら進化し続けて、本格的なオフロード走行が可能な唯一無の軽オフロードSUVとして、現在も高い人気を誇っている。

一方、1993年にデビューしたワゴンRは、狭い軽自動車というイメージを払拭する背の高いハイトワゴンという新しいジャンルを開拓して大ヒット。圧倒的な居住性を実現したハイトワゴンとさらに車高を上げたスーパーハイトワゴンは、現在軽市場の大半を占めるまで成長し、軽自動車のスタンダードとなっている。

この2つの人気モデルの特長を融合させることで、ハスラーは軽のクロスオーバーSUVという新しいジャンルを開拓したのだ。
ハスラーはデビューとともに大ヒット
“東京モーターショー2013”で初披露されたハスラーは、大きな注目を集めた。

キュートな丸目ヘッドライトにSUVらしいボクシーなスタイリングのハスラーは、ワゴンRよりもルーフが長いため、ミニバンとSUVの両方の雰囲気を併せ持っていた。インテリアも、ボディカラーに対応してオレンジと白の2色が用意され、エアコンの吹き出し口やメーターなども視覚的に楽しいデザインが採用された。

パワートレインは、660cc直3 DOHCのNA(無過給)エンジンおよびターボの2種エンジンと、CVTおよび5MTの組み合わせ、駆動方式はFFと4WDを用意。4WDシステムは、ジムニーのような高い悪路走破性を持つパートタイム4WDではなく、前後輪に回転差が生じると4WDになる、いわゆる“スタンバイ式4WD”である。

また、スズキの次世代環境技術“スズキグリーンテクノロジー”の採用により優れた低燃費性能と軽快で力強い走りを実現。さらに、衝突被害軽減ブレーキ“レーダーブレーキサポート”などの先進安全技術の搭載も大きなアピールポイントだった。

車両価格116.7万~157.6万円(4WD仕様)と比較的安価に設定されたハスラーは、ファミリー層だけでなく、若者からも支持され、販売開始から1年経たずで累計台数は10万台を超える大ヒットに。軽のクロスオーバーSUVという新たなジャンルを切り開いたのだ。

ハスラーによって軽クロスオーバーSUV市場が発展
ハスラー登場後、軽のクロオーバーSUV市場は活況を帯びている。
元祖であるハスラーが、2019年末にフルモデルチェンジして2代目に進化したのに続き、一番のライバルであるダイハツ「タフト」が2000年にデビューして、発売開始1ヶ月で1.8万台を受注するなど好調なスタートを切った。三菱からは2019年にデビューしたSUVテイストをアピールした「ekクロス」も好調な販売を続けている。
これらは、すべてハイトワゴンをベースにしてクロスオーバーSUVに仕立てたモデルだが、スズキ「スペーシアギア」や三菱「ekクロススペース」は、スーパーハイトワゴンをベースにしたクロスオーバーSUVであり、軽のクロスオーバーSUVは、今後も普及することが予想される。る。

ハスラーの登場以降、乗用車と同じように軽自動車でもクロスオーバーSUVブームが起こっている。多様化するライフスタイルとともに、軽自動車でも室内スペースの広さを競うだけでなく、SUVのようなマルチユースなクルマが求められているのだ。
「ハスラー」が誕生した2014年は、どんな年
2014年には、スズキ「ハスラー」の他にも、スバル「レヴォーグ」、日産自動車「スカイライン(V37型)」、軽事業で協業関係を結んだ日産/三菱から「デイズルークス/eKスペース」、トヨタの燃料電池車「MIRAI(ミライ)」などが登場した。
レヴォーグは、レガシィが北米志向で大型化したことから日本市場にその置き換えとしてデビューした。スカイライン(V37型)は海外ではインフィニティQ50として販売され、フロントグリルにはインフィニティのバッチが付いている。日産と三菱は、2011年に軽事業を共同で進める合同会社NMKVを設立、その成果として誕生したのが日産デイズルークスと三菱eKスペースである。ミライは、世界初の量産型燃料電池車である。
自動車以外では赤崎 勇、天野 浩、中村修二の3氏がノーベル物理学賞を受賞。長野県と岐阜県の境に位置する御嶽山が噴火し、58名が死亡する大惨事が発生した。ガソリン134円/L、ビール大瓶192円、コーヒー一杯418円、ラーメン574円、カレー740円、アンパン164円の時代だった。

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軽ハイトワゴンに匹敵する広い室内スペースとオフロードでも優れた走破性を発揮する「ハスラー」。軽クロスオーバーSUVという新たなジャンルを切り開いた、日本の歴史に残るクルマであることに間違いない。