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■MRワゴンのOEM車である日産「モコ」がデビュー
2002(平成14)年4月10日、日産自動車は初めての軽自動車「モコ」を発売。モコは、前年にデビューしたハイトワゴンのスズキ「MRワゴン」のOEM車であり、“若いアクティブなママが子どもと一緒にどこへ行っても楽しめるベストパートナー”をコンセプトに、ターゲットは主に若い主婦層だった。

人気のワゴンRより55mm背の低いMRワゴン
スズキの「MRワゴン」は、2001年12月にデビューした。大人4人がくつろいで座れる広さと心地よさをコンセプトに開発され、人気絶調の「ワゴンR」が若い男性をターゲットとするのに対し、MRワゴンは20代から30代の若い女性が主なターゲットだった。

全長、全幅、ホイールベースはワゴンRと同じで、全高が1590mmとワゴンRより55mm低いハイトワゴンである。スタイリングは、ボンネットからバックドアまで一体となったモノフォルムで、街並みが似合うタウンカーとして新鮮なデザインを採用。ちなみに、MRワゴンは2001-2002グッドデザイン賞を受賞した。

パワートレインは、最高出力54ps/最大トルク6.4kgmを発揮する660cc直3 DOHC VVT(可変バルブ機構)と、同エンジンで60ps/8.5kgmのインタークーラー付ターボの2種エンジンと、4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFと4WDが用意された。
スズキからOEM供給された日産モコ

日産がモコによって軽市場に参入した理由は、ワゴンRによって火が付いたハイトワゴンブームにより軽シェアが急増していたこと、日産には人気のコンパクトカー「マーチ」はあるものの多くの日産ファンから軽自動車を求める声が高まったことなどが考えられる。

モコの基本機能や装備などはワゴンRと同じだが、内外装には日産らしさを強調するような差別化が図られた。特徴的なのはフロントマスクで、ボンネットとバンパーの形状を変更し、マーチと同じウインググリルを採用し、一見して日産車らしい軽自動車となったこと。その他にも、リアコンビネーションランプに白色がかったクリアテールランプを採用したり、ホイールカバーとアルミホイールも変更された。

また装備面でも、MRワゴンではターボ車のみ標準設定されて、他はオプション設定のブレーキアシスト付ABSが、モコでは標準装備された。OEM車なのに、これだけ変更箇所が多いのは珍しい例である。

車両価格は、ターボ車はワゴンRと同額の125.0万円/136.2万円、NA車は100.3万円~127.2万円でワゴンRよりABS装備分2.5万円高額に設定された。モコは、発売から2週間余りで月販目標の4000台を超える5000台の受注を受け、好調なスタートを切った。
その後もOEM車を続けたが、2012年に自社開発に方針転換
日産のOEM車は、モコ(2002年~2016年)を皮切りに、三菱「ミニキャブ」のOEM車「初代クリッパー(2003年~2013年)」、スズキ「エブリイ」のOEM車「2代目クリッパー(2013年~2015年)」、三菱「ekワゴン」のOEM車「オッティ(2005年~2013年)」、スズキ「アルト」のOEM車「ピノ(2007年~2010年)」、三菱「パジェロミニ」のOEM車「キックス(2008年~2016年)」と続いた。

このようにOEM車で日産の軽ブランドを継続してきたが、利益率の低い軽でのOEM車では効率が悪く、ブランドを拡大することは困難と判断した日産は、ついに自社での軽自動車の開発を決断した。
2011年6月1日に日産自動車は、三菱自動車と50:50の共同出資による合弁会社NMKV(日産・三菱・軽ビークル)を設立。これまで軽自動車の自社開発を行なわなかった日産が、OEM車でなく自社での開発・生産を目指すため、パートナーとして実績のある三菱を選んだのだ。

日産と三菱のコラボによる最初の成果は、2013年6月に発売された日産初代「デイズ」(三菱3代目「ekワゴン」)、第2弾は2014年に発売された全高がデイズよりも155mm高いスーパーハイトワゴン「デイズルークス(三菱ekスペース)」だった。
現在は、スズキ、ダイハツ、ホンダ3強の後塵を拝することが多いが、確実に日産の軽ブランド力は上がっている。
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軽の自社開発から撤退したマツダとスバルも、OEM車を設定することで自社の軽ブランドを維持している。利益率の低い軽のOEM車では収益は望めないが、軽自動車を求める自社ファンを食い止めるためのある意味苦肉の策なのだ。
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