スズキとフィアットが新型SUVを共同開発することで基本合意、日本では「SX4」が06年にデビュー【今日は何の日?4月11日】

スズキ「SX4」
スズキ「SX4」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日4月11日は、スズキとフィアットが新型SUVを共同開発することで基本合意したことが発表された日だ。当時は両社ともGMと提携関係にあり、小型車に強みを持つスズキとフィアットがタッグを組んで世界戦略車の小型SUVを開発することを狙ったのだ。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・スズキ SX4のすべて、WRC+

■スズキとフィアットが新型SUVを共同開発

2003(平成15)年4月11日、スズキとフィアットは新型SUVを共同開発することで基本合意に至ったことを発表した。計画されている新型車は、スズキの新Aセグメント・プラットフォームをベースにした4WDのコンパクトSUVで、2006年7月に日本ではSX4として発売された。

スズキ「SX4」
スズキ「SX4」
スズキ「SX4」
スズキ「SX4」のリヤビュー

GMと提携関係にあったスズキとフィアット

スズキは、1981年8月にGMと資本・業務提携を締結。GMとの共同開発でスイフトの前身にあたる「カルタス」を日米で発売し、その後もスズキのGM向け小型車の開発・供給や南米でのGM工場におけるスズキ車の生産・販売、カナダでの合弁会社設立など、成果を上げていた。ところが、2000年以降GMの業績悪化が深刻化し、2008年に提携関係を解消。その直後の2009年にスズキは、フォルクスワーゲン(VW)と提携を結んだが、スズキを支配しようとしたVWとの関係が悪化して2015年に提携解消、現在はトヨタと提携関係にある。

スズキ「SX4」
2003年に発表されたスズキとフィアットの共同開発の成果として2006年にデビューした「SX4」

一方のフィアットは、小型車競争が激化して経営が不安定となり2000年にGMと提携。ところが、2006年にGMがフィアットの経営悪化を理由に一方的に提携を解消した。その後、2014年にクライスラーを子会社して合併、2014年にはフィアットを中心に、クライスラー、アルファロメオなど多彩なメーカーから成るFCAを設立。そして、2021年にPSAと合併、新会社ステランティスを設立して現在に至っている。

スズキ「SX4」
2003年に発表されたスズキとフィアットの共同開発の成果として2006年にデビューした「SX4」

2000年以降、世界的な自動車メーカー再編の大波が起こり、メーカー間で頻繁にくっついたり離れたりを繰り返していた。スズキとフィアットの共同開発も、その時期に両社ともGMと提携していたことから話が進んだのであろう。

スズキのプラットフォームを使った小型SUVの共同開発

今回の発表時にはスズキとフィアットの共同開発による新型SUVの詳細については明らかにされなかったが、発表時点では以下のような内容だった。

スズキ「SX4」
2003年に発表されたスズキとフィアットの共同開発の成果として2006年にデビューした「SX4」

新型SUVは、スズキの新Aセグメント・プラットフォームをベースとする、5ドアの4WD・SUV。エンジンはガソリンとディーゼルを搭載。スズキ製とフィアット製の外観を変更することで、ブランドの差別化を図る。生産開始は2005年後半、ハンガリーにあるスズキの生産・販売子会社「マジャールスズキ社」が担当する。販売は、欧州のスズキとフィアット、それぞれのブランドで行なう、というもの。

スズキ「SX4」
スズキ「SX4」の各部

結果として、この新型SUVは、日本では2006年に発売されたクロスオーバーSUV「SX4」であり、フィアットでは「フィアット・セディチ」として販売された。

共同開発の成果としてデビューしたSX4

共同開発の成果であるSX4は、2006年7月に国内デビューを果たした。スズキとしては、「スイフト」、「エスクード」に続く世界戦略車の第3弾となった。

スズキ「SX4」
2003年に発表されたスズキとフィアットの共同開発の成果として2006年にデビューした「SX4」

イタリアのカロッツェリアとして著名なジウジアーロ率いるイタルデザインと協同でデザインされたヨーロピアンテイストのスタイリングは、躍動感のあるウェッジシェイプと丸みを帯びたフェンダーなどが特徴だった。ボディサイズはスイフトよりひと回り大きく、エスクードよりひと回り小さい。

エンジンは、最高出力110psを発揮する1.5L直4 DOHCと145psの2.0L直4 DOHCの2種類、フィアット製のディーゼルエンジンは搭載されなかった。トランスミッションは4速ATのみで、駆動方式はFFと電子制御式4WD「i-AWD」が用意された。

i-AWDは、FFに近い状態で走る“2WDモード”、FFから4WD状態まで前後輪へトルク配分する“4WDオートモード”、悪路で威力を発揮する“4WDロックモード(60km/h以上では4WDオートモードに切り替わる)“の3つの運転モードが設定された。

車両価格は、1.5L仕様が149.1万~185.9万円、2.0L仕様が182.7万(2WD)/203.7万円(4WD)に設定された。また1年後の2007年には、セダンの「SX4セダン」が追加された。

2007年からWRCに参戦した「SX4 WRC」
2007年からWRCに参戦した「SX4 WRC」

SX4は、その優れた走りを生かしてSX4ベースのラリーマシン「SX4 WRC」で2008年の1年だけだったが、WRCにフル参戦したことでも話題となった。ニュージーランドラリーで6位と7位に入り、いよいよ本領発揮かと思われたが、リーマンショックなどの影響でWRC撤退を余儀なくされたのだ。

2007年からWRCに参戦した「SX4 WRC」
2007年からWRCに参戦した「SX4 WRC」

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最近のメーカー間の共同開発例としては、日産「デイズ」/三菱「ekワゴン」や、「トヨタ86」/「スバルBRZ」、「トヨタ・スープラ」/「BMW Z4」などがある。内外装の違いはもちろん、足回りのセッティング、場合によってはボディタイプまで異なる場合もある。共同開発のメリットは、ひとつのプラットフォームやエンジンを共有し、製造工場も一本化することで開発費用を削減しつつ、それぞれで独自性の強いモデルを作れることだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…