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■スズキとフィアットが新型SUVを共同開発
2003(平成15)年4月11日、スズキとフィアットは新型SUVを共同開発することで基本合意に至ったことを発表した。計画されている新型車は、スズキの新Aセグメント・プラットフォームをベースにした4WDのコンパクトSUVで、2006年7月に日本ではSX4として発売された。


GMと提携関係にあったスズキとフィアット
スズキは、1981年8月にGMと資本・業務提携を締結。GMとの共同開発でスイフトの前身にあたる「カルタス」を日米で発売し、その後もスズキのGM向け小型車の開発・供給や南米でのGM工場におけるスズキ車の生産・販売、カナダでの合弁会社設立など、成果を上げていた。ところが、2000年以降GMの業績悪化が深刻化し、2008年に提携関係を解消。その直後の2009年にスズキは、フォルクスワーゲン(VW)と提携を結んだが、スズキを支配しようとしたVWとの関係が悪化して2015年に提携解消、現在はトヨタと提携関係にある。

一方のフィアットは、小型車競争が激化して経営が不安定となり2000年にGMと提携。ところが、2006年にGMがフィアットの経営悪化を理由に一方的に提携を解消した。その後、2014年にクライスラーを子会社して合併、2014年にはフィアットを中心に、クライスラー、アルファロメオなど多彩なメーカーから成るFCAを設立。そして、2021年にPSAと合併、新会社ステランティスを設立して現在に至っている。

2000年以降、世界的な自動車メーカー再編の大波が起こり、メーカー間で頻繁にくっついたり離れたりを繰り返していた。スズキとフィアットの共同開発も、その時期に両社ともGMと提携していたことから話が進んだのであろう。
スズキのプラットフォームを使った小型SUVの共同開発
今回の発表時にはスズキとフィアットの共同開発による新型SUVの詳細については明らかにされなかったが、発表時点では以下のような内容だった。

新型SUVは、スズキの新Aセグメント・プラットフォームをベースとする、5ドアの4WD・SUV。エンジンはガソリンとディーゼルを搭載。スズキ製とフィアット製の外観を変更することで、ブランドの差別化を図る。生産開始は2005年後半、ハンガリーにあるスズキの生産・販売子会社「マジャールスズキ社」が担当する。販売は、欧州のスズキとフィアット、それぞれのブランドで行なう、というもの。

結果として、この新型SUVは、日本では2006年に発売されたクロスオーバーSUV「SX4」であり、フィアットでは「フィアット・セディチ」として販売された。
共同開発の成果としてデビューしたSX4
共同開発の成果であるSX4は、2006年7月に国内デビューを果たした。スズキとしては、「スイフト」、「エスクード」に続く世界戦略車の第3弾となった。

イタリアのカロッツェリアとして著名なジウジアーロ率いるイタルデザインと協同でデザインされたヨーロピアンテイストのスタイリングは、躍動感のあるウェッジシェイプと丸みを帯びたフェンダーなどが特徴だった。ボディサイズはスイフトよりひと回り大きく、エスクードよりひと回り小さい。
エンジンは、最高出力110psを発揮する1.5L直4 DOHCと145psの2.0L直4 DOHCの2種類、フィアット製のディーゼルエンジンは搭載されなかった。トランスミッションは4速ATのみで、駆動方式はFFと電子制御式4WD「i-AWD」が用意された。
i-AWDは、FFに近い状態で走る“2WDモード”、FFから4WD状態まで前後輪へトルク配分する“4WDオートモード”、悪路で威力を発揮する“4WDロックモード(60km/h以上では4WDオートモードに切り替わる)“の3つの運転モードが設定された。
車両価格は、1.5L仕様が149.1万~185.9万円、2.0L仕様が182.7万(2WD)/203.7万円(4WD)に設定された。また1年後の2007年には、セダンの「SX4セダン」が追加された。

SX4は、その優れた走りを生かしてSX4ベースのラリーマシン「SX4 WRC」で2008年の1年だけだったが、WRCにフル参戦したことでも話題となった。ニュージーランドラリーで6位と7位に入り、いよいよ本領発揮かと思われたが、リーマンショックなどの影響でWRC撤退を余儀なくされたのだ。

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最近のメーカー間の共同開発例としては、日産「デイズ」/三菱「ekワゴン」や、「トヨタ86」/「スバルBRZ」、「トヨタ・スープラ」/「BMW Z4」などがある。内外装の違いはもちろん、足回りのセッティング、場合によってはボディタイプまで異なる場合もある。共同開発のメリットは、ひとつのプラットフォームやエンジンを共有し、製造工場も一本化することで開発費用を削減しつつ、それぞれで独自性の強いモデルを作れることだ。
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