ヤマハ発動機の水上バイク「WaveRunner」に、ヤマハ株式会社製のオーディオを搭載!

2つの“ヤマハ”がコラボって何だ? 水上バイク「WaveRunner」で実現した、音と乗り物をつなぐ開発ストーリー

1955年、日本楽器製造株式会社(現ヤマハ株式会社)のオートバイ製造部門が分離し、ヤマハ発動機は創業した。この兄弟とも言える2社は、製品ジャンルもマーケットも、それぞれ違った道を歩んできた。その間、関連会社として様々な取り組みがあったにも関わらず、意外なことに2社が協力して量産に至った製品はあまりなかったという。そして今回、ヤマハ発動機の水上オートバイ「WaveRunner」に、ヤマハ株式会社製のオーディオシステムが搭載された製品がリリースされた。コラボが実現することになったきっかけは? 両社はお互いをどう見ているのか? 探ってみた。

TEXT:小林 和久(KOBAYASHI Kazuhisa) PHOTO:小林 和久/ヤマハ発動機(Yamaha Motor Co., Ltd.)

ヤマハブランドの2社がコラボした製品が登場した!

ヤマハ発動機の水上オートバイ「WaveRunner」2025モデル

YAMAHAブランドを使用するヤマハグループには、主に楽器やオーディオなど音楽全般を手掛けるヤマハ株式会社(以下「ヤマ株」)とバイクやボートなど主に乗り物関連を手掛けるヤマハ発動機株式会社(ヤマ発)があり、起源は同じくするが別会社なのはご存知だろうか。

上の紫がヤマハ株式会社、下の赤がヤマハ発動機株式会社のロゴ。音叉マークが円に触れているか、アルファベットが左右対称かどうか、などの違いがある。

歴史を辿ると1887年、ヤマハの創業者となる山葉寅楠(やまは・とらくす)が、静岡県浜松の小学校で壊れたオルガンを修理したことに始まり、国産オルガンの製作に成功し創業する。

その後、寅楠は1897(明治30)年10月12日「日本楽器製造株式会社」を設立(創業100年目の1987年「ヤマハ株式会社」に名称変更)、楽器事業の礎を築いていく。「ヤマハ」が元々、人名(姓)であることを知らない人も多いのではないだろうか。

楽器にもバイクにも使用されるヤマハのロゴには、音叉がデザインされているのは有名だが、1898年には「音叉をくわえた鳳凰」マークが楽器に使用されたのが始まりとされている。

その後も楽器やオーディオ、音楽教室などの事業を進め、1955年にヤマハのオートバイ第1号「YA-1」を発売し、オートバイ部門をヤマ発として分離する。

1955年に日本楽器製造株式会社から発売されたオートバイ第1号「YA-1」。発売当初ヤマハ発動機はまだ存在していなかった。

1959年にエレクトーンを発売し、以降リゾート事業、ボーカルアンプシステム(PA機器)発売、半導体の生産、ゴルフクラブなど、生活必需品というよりも、人々の生活を豊かにする製品やサービスを主軸に事業展開してきている。一部の民族音楽楽器などを除き、鍵盤、弦楽器、管楽器、打楽器、アコースティックもデジタルも、いわゆる楽器として認知されているほとんどを製造しているのは世界でも同社くらいだそうだ。ヤマ株の製品が世界中の多くの人々の生活に潤いを与えているのは言うまでもない。

ヤマハ株式会社 本社エントランス

一方、2025年に創業70周年を迎えるヤマ発は、オートバイ、ボートや船外機、トヨタ2000GTの開発、スノーモビル、ゴルフカー、世界初の電動アシスト自転車「PAS」など一貫して乗り物に関する事業を軸としているが、やはり生活に必要な実用車というよりも乗って楽しい、レジャーで使いたい、生活を楽にしてくれるという製品が多く、両ヤマハの共通点を感じる。

ヤマハ発動機本社のコミュニケーションプラザには、歴代の名車が展示されている。

興味深いのはゴルフ関連で、ゴルフクラブはヤマ株製品、ゴルフカーはヤマ発製品であること。女子プロゴルフトーナメントの「ヤマハレディースオープン葛城(かつらぎ)」は両社の共催イベントだ。また、ヤマ株の楽器製造のための森林づくりを、ヤマ発の無人ヘリコプターによって計測、データ管理する取り組みもある。

今回お話をお聞きした、ヤマハ株式会社の左から小野さん、山木さん、新田さん。

しかし、意外にも製品でのコラボはあまりなかった。ところが今回、その両社のコラボ製品としてヤマ発の水上オートバイ「WaveRunner」の2025年モデルが誕生したというので、どのように生まれたのか、両社のご担当者に開発ストーリーをお聞きした。取材する側も両社同時に話を聞くのは初めてである。

ヤマ発の水上オートバイ「YAMAHA WaveRunner」の FX/GP/VXにヤマ株製オーディオシステムが搭載された。
WaveRunner2025モデルに搭載されるヤマ株製のスピーカー。

取材の本題に入る前に、ヤマ株とヤマ発の「印象」について、ざっくばらんに「個人の感想」を語ってもらった。

まず、ヤマ株社員から見たヤマ発の印象は、
・活動的な製品を多く作り、アクティブな趣味をもつ社員が多い。
・頑丈なものを作って男っぽい印象、硬派なイメージがある。
・自社の社員のほうが、学生そのままで趣味の音楽を続けて社会人になった人が多い気がする。

また、逆にヤマ発社員から見たヤマ株の印象は、
・スタイリッシュで洗練されているイメージ。
・ただし、一緒に仕事をしてみるとスタイリッシュなだけでなく、ものづくりに熱い想いをもっている。

そして、両社に共通していたのが、
・楽しんで仕事している人が多いと思う。
とのことだった。

あくまで取材現場にいた数名の個人的意見だが、外部の我々が思うイメージとも合致するのではないだろうか。

こちらはヤマ株の音叉マーク。ヤマ発のそれと違って回りの円周に触れていないが、それを表現するため円周リングをテーパー状にして音叉が浮いて見えるよう工夫した。
WaveRunnerの先端に位置するヤマ発の音叉マーク。音叉が円周に刺さっているのがヤマ株との大きな違い。

ヤマハ発動機の水上オートバイ「WaveRunner」にヤマハ株式会社のオーディオを搭載

さて、今回、WaveRunnerにヤマ株製オーディオシステムが搭載されたが、そのきっかけとなった辺りからお話をお聞きした。

ーーーまず、WaveRunnerにオーディオが搭載されているというのは知らなかったんですけれど、水上オートバイはどのような使われ方をするのですか?

鈴木 WaveRunnerの約70%が販売されるアメリカでは、週末に家族や友人と湖や海に行って遊ぶと言うマリンレジャーが非常にポピュラーです。そこでWaveRunnerで仲間とゆっくりクルージングしたり、ちょっとした冒険をしたりする使い方が多いんです。そうなると音楽はレジャーの友なわけです。スピーカーの付いていないクルマがないのと同じです。

Yamaha Motor Manufacturing Corporation of America(出向)鈴木正吉。ヤマハ発動機本社時代、WaveRunner2025モデルの電装部品開発と船全体の開発を管理するプロジェクトマネージャーを担当。

ーーーどのようなきっかけで両社のコラボは誕生したんでしょうか?

鈴木 WaveRunnerでは2021年モデルで初めて純正スピーカーを搭載しました。当時は別のメーカーのスピーカーを搭載しており、私がそれを見てなんでヤマ発の水上オートバイに、ヤマ株のスピーカーがついてないんだろうと、素朴な疑問をもちました。それで上司に相談してからヤマ株さんに企画を提案してみました。

ーーーこれまで両社がコラボした商品はあまりないようですが、上司の反応はいかがでしたか?

鈴木 『まぁ75%の確率でヤマ株さんはやらないじゃないかな』という答えでした。というのも、以前もこういったタフな環境で使用されるスピーカーの企画を打診したところ、実現しなかった経緯があったので、そのような回答になったと思われます。

入社以来、WaveRunnerの開発に長く関わってきた鈴木さん。過去のモデルでも、自ら何度も走行試験を行い製品の作り込みを行ってきた。

ーーー今回、企画書を受け取ったのが新田さんですね。

新田 はい。当時お話をいただいた頃は、自動車向けスピーカーへの事業転換を始めたばかりで、まだ量産の実績もなく、準備や体制も不十分でした。その後、体制を整え、経験を積んだことで、「今なら対応できる」「取り組む価値がある」と判断しました。

ヤマハ株式会社 音響事業本部モビリティーソリューション事業部 開発1部 部長 新田泰央。今回のプロジェクトの話を受け、グループリーダーとして取りまとめ役を務めた。

ーーー機は熟したと判断されたわけですね。ではやる気満々で受けたわけですか?

新田 はい、けれどそれがどれほどの苦労になるかは想像できてませんでした。(笑)

水に沈めてもガソリンがかかっても大丈夫なように…

以前はどうやら同じブランドだからやる、やらないとは関係なく、ビジネスとして受けられるタイミングだったかどうかが問題だったようだ。

ヤマ株は音や音楽、オーディオ関連を長年手掛けるプロ集団であり、近年では車載純正オーディオを多数手掛けている。その経験値からWaveRunnerのオーディオも派生したジャンルとして挑戦したわけだが、想像以上にその道は高く激しく険しかったという。ものづくり、音作りに関してどのような苦労があったのだろう。

ーーーWaveRunnerのスピーカーは、一般的なスピーカーと何が違うのでしょうか?

小野 私は自動車向けスピーカーの設計をずっとやってきました。今回、水上オートバイということで水がかかるわけですが、実は自動車のスピーカーの中でもドアに付くスピーカーは、ドアに水が入ることを前提で設計しています。その経験からまあ大丈夫だろう、くらいに考えていたんですが、ぜんぜんレベルが違いました。水に沈めても大丈夫なように作るのが今までになく一番大変でした。

それだけでなく、水上で走りながら常に振動が加わるし、衝撃についても自動車の振動とは認識が違っていました。そのため共振がどこに入るかがまったくわからずに、スピーカーユニットが外れる、ボックスが割れてしまうといったトラブルから始まり、トライアンドエラーの繰り返しでした。スピーカーユニット自身も、屋外のオープンな空間で大きな音を出すためにマグネットは重くて大きなものが必要で、それが要因となって途中で設計変更などもありました。

ヤマハ株式会社 音響事業本部 モビリティソリューション事業部 開発1部 スピーカー開発グループ 主務 小野俊幸。前職場でも車載スピーカーの設計に携わり、ヤマハ株式会社でも引き続きその手腕を振るう。

ーーーでは、素材などもすべて新設計のものなんですね。

小野 新しいスピーカーを作るとなると素材から検討するのは当然なんですが、それでも今回は今までにない要件がありました。例えば、コーン紙を支えるエッジのゴム部分は燃料給油時にガソリンやオイルがかかっても大丈夫なようにしなければならないといったリクエストです。スピーカーのすぐ近くに給油口があるんです。それから、高圧洗浄機で水をかけても大丈夫なようにと。船は海から上げたら真水で洗浄することがありますので。

コーン紙やエッジのゴムなど、一般的なスピーカーには考えられないような要件が様々あった。
船体に取り付けられた状態で水がたまらないようにスピーカーグリルはテーパー状の角度が付けられている。

ーーー海に沈んでも、高圧洗浄機にも耐えられるって、普通のスピーカーでは考えられませんね。それほど頑丈にできたんですね。

小野 社内では宇宙にも行けるぞ、と言ってました。(笑)

ーーー鈴木さんから音に関するリクエストはどのようにお伝えしたんでしょうか?

鈴木 我々はエンジニアなので要求を数値化したいのですが、音質を数値化することは難しいため、早い段階でそれは諦めました。そのため、水上を高速走行時に気持ちよく音楽が聞こえることをクライテリア(判断基準、評価目標)としました。詳細な音づくりに関してはサウンドマイスターである山木さんにお任せしました。

ーーー山木さんら、音作りの専門家がそのためにやる作業はどのようなものでしょうか?

山木 まずは試作スピーカーを木工で作って鳴らしてみて、乗員に対してどのように音が聞こえるかを調べます。低音が足りない、高音が足りないなどというのは周波数特性を整えると言いますが、それはPCによって様々なパラメータをデジタル信号処理、いわゆるDSP(デジタル・サウンド・プロセッサー)で調整します。耳で聴いたり、耳の位置にマイクを立ててテストノイズを出してすべての音の帯域が出ているかなども測定します。

ヤマハ株式会社 音響事業本部 モビリティソリューション事業部 開発1部 サウンドデザイングループ 主事 サウンドマイスター 山木清志。長年、音作りを仕事とし、最近では車載オーディオも担当。新しい取り組みの相談をされることが多い。

ーーーこのプロジェクトで、山木さんが最初にやったことは?

山木 どのようなシチュエーションで使われるのか、どんな気持ちで音楽を聞くのかを知ることです。そのために船舶免許を取りました。日本では免許がないとWaveRunnerに乗れませんから…。

ーーーそのために免許取得した! 素晴らしいプロ意識ですね。実際に運転していかがでしたか?

山木 免許を取って浜名湖を自分で運転して、実際にスピードも出してみて、どんな騒音になるのかを体験しました。そうすると110dB(デシベル/音圧の単位)くらいの騒音の中で音楽が聞こえなければならないことがわかりました。110dBと言えば、間近で自動車のクラクションが鳴っている状態ですよ。さらに、水上で走りながら聞くと、陸上で聞いていた音とぜんぜん違うこともありました。そうすると水上で船を一旦停めてPCを開いて調整をしたりしました。

WaveRunnerの約70%が販売されるアメリカでは、家族や友人と湖や海に行って水上バイクで遊ぶというマリンレジャーがポピュラー。その時に音楽は欠かせない要素だ。

デザイン、ディティールへのこだわりは両社共通の特徴

水に沈むどころか、ガソリンがかかっても大丈夫なようにとスピーカーへのリクエストとは思えないハードルが立ちはだかったものの、乗り越えた。

デザインについてはどのように進められたのだろう。

ーーー今回、スピーカーのセンターにはヤマ株の音叉マーク、WaveRunner本体にはヤマ発の音叉マークと、同じ製品に2種類の音叉マークが付けられているんですね。そのあたりも含め、デザインについてはどのように決められましたか?

新田 WaveRunner全体のデザインをイメージしながら、ヤマ発さんとウチのヤマハデザイン研究所(ヤマ株のデザイン部門)で意見交換しながら最終的なデザインを決めていきました。一般にスピーカーは四角いですよね。だけどWaveRunnerのスピーカーは非常に複雑で繊細なデザインに仕上がったと思っています。

鈴木 これまでもヤマ株とヤマ発は、デザイン領域を中心に共創活動をやってきましたが、量産での協業はあまり例がありませんでした。今回、スピーカーがWaveRunnerの意匠の一部になるため、デザインはヤマ発のアイデンティティに沿っていただくようにお願いしました。それともうひとつは、直接的なデザインへのリクエストではないんですが、バイクと同じようにWaveRunnerも最終的には鉄の枠に梱包されて世界中に出荷されるため、その梱包にスピーカーも収まるようにとリクエストしました。

ーーーなるほど! 出荷時の梱包サイズも考えなければならないということは、音を決める側にも影響しますね。

山木 初期の段階では、スピーカーが完全に船体からはみ出していたんです。それで試作を2パターン作って『小さいとこうなっちゃいますよ』と音の差を聴いてもらったりしながら、でも収めるためにはこのサイズで(ホントは大きくしたいけど…)、などと決めていきました。

ーーーそうして、決まっていったスピーカーデザインの中央には、一見似ているけどヤマ発と違う、ヤマ株の音叉マークが付けられているわけですね。

ヤマ株の音叉マークの下にツイーターが隠れている。

小野 その部分、気づきにくいですが、音叉マークの後ろにスピーカーがあるんです。コアキシャル2ウェイのツイーターです。

鈴木 グリル部分はスピーカーの顔に当たる部分のためデザインにもこだわりました。実際の使用で物や身体があたっても問題ないように、荷重を測定して、太さや支持構造を変えたり結構な数をトライし、デザインと強度の両立を図りました。

スピーカー下部のあまり見えないところにもYAMAHAの「Y」をモチーフにしたデザインが。ディティールまでこだわり、機能美を追求している。

次のプロジェクトでも共にいいものを目指す

聞けば聞くほど「そんなクリアすべき問題があるんだ!」と思わぬ課題が次から次に出てきた。開発陣は、それをひとつひとつクリアしていったわけだ。

最後に、今回のプロジェクトについて振り返ってもらった。

ーーー振り返ってみて、やり切った感、あと少しやれた部分、などありますか?

小野 水上オートバイ用スピーカーの開発ということで、どうしても品質、耐久性などに振った部分が大きかったと思います。もし、次にお話をいただけたら、ヤマ株は音にこだわるメーカーですので、さらに徹底して音を追求したものにしていきたいと感じています。

山木 音の面では、いただいた目標は達成できたと思います。けれどそれは、こっちの音を出すとこっちが出ないというギリギリの中でやっていて、アメリカの人たちがノリノリでよく聞いているような部分(音楽ジャンルなど)に焦点を合わせたこともあり、そういう個性だからできあがったとも言えます。

もう3年間もこの仕事で何度もWaveRunnerに乗ってきましたので、もっと欲しい音がリアルに分かってきたんです。アメリカのレイクで乗ったときも違う音を感じました。次があれば、もっと幅広い層にも喜んでもらえるゴール設定もできると思っています。

ーーー最後に、このプロジェクトを通じて、それぞれのヤマハだからできた、良かったと思った部分はありますか?

山木 オーディオメーカーはたくさんありますが、ヤマ株は楽器メーカーでもあるんです。そんな私たちは、ただ単に楽器を作るんだけじゃなく、アーティストとリレーションシップをもって音楽を作り上げるすべてのフェーズにおいて、例えばレコーディングに関わる人も、ライブに関わる人も、いろんな音楽に関する様々なプロフェッショナルが社内にいます。

今回、新しい取り組みのオーディオにチャレンジすることになっても、こういうことならあの人に話を聞こう、だったらこういう作りがいいよね、という会話ができる人とのネットワークやその経験が、部品のようにそこらじゅうに転がっているんです。それがヤマ株らしさ、ヤマ株だからできたという部分でしょう。

鈴木 今回、ヤマ株さんと組んだことで感じていることは、ヤマ株さんをこの業界に誘えたことがヤマ発として一番良かったと思っています。今回のプロジェクトを単にブランドのコラボと捉えられることもあります。けど、ヤマ株さんと組んだことでお客さんにとって、音が良くて、見てカッコ良くて、高い信頼性のものができたというのが大きな価値だと思っています。

それと、オーディオメーカーを2つに分けると、音作りのフィロソフィがとても強いメーカーと、お客さんの希望に応じてフレキシブルに音作りしてくれるメーカーがあります。ヤマ株さんは後者にあたり、さっき山木さんがおっしゃったように、ヤマ株さんはWaveRunnerのお客さんが求めている音を追求してくれることが強みだと思います。

もしフィロソフィが強いメーカーのオーディオを採用しても、それは他社でもできるわけで、競合とは差別化できない。それに対してやっぱりヤマ株さんは我々のお客さんの方を見てくださって、結果的にお客さんにいいものを出してくれた。そこがこの2社だからできたと思います。

ーーー次があれば、また”ヤマハ同士”で一緒にコラボしたいですか?

鈴木 今回のWaveRunner2025年モデルは、マイナーチェンジモデルのため、変更できることの制約がありました。水上オートバイにスピーカーが搭載されるようになったのもここ数年です。次のプロジェクトがあるとすれば、大きな筐体容量とか、電気をたくさん使えるとか、ヤマ株さんと一緒に船全体を考えながらレベルアップさせたいですね。

新田 我々がまだ水上オートバイ向けのオーディオに対して知識も経験も足りていないときにヤマ発さんが補ってくれたり、一緒に考えてくれてできたことが大きいと思っていますので、ぜひまた次のプロジェクトでも、もっといい製品を一緒に作らせていただきたいと感じています。


個人的な話で恐縮だが、子供の頃にヤマハ音楽教室でエレクトーンを習い、生まれて初めて買った動力付き乗り物はヤマハMR50という原付バイクだった。音楽教室は親が僕の人生を豊かにしてくれることを願ってくれたことだっただろうし、自分自身も原付があればいろんな世界が広がると夢と希望を抱えてのことだった。

今回、2社に取材することができ、強く感じたのは、根本に流れるスピリッツが共通しているということだ。それは、人の生活に役立ち、人生を豊かにしてくれるものを作りたい。それも、他に負けない自分たちの得意とする分野で、ユーザーに提供したい、という思いであり、いずれの会社にも社風となっているのではないか。

これからも、この両社がタッグを組んだ製品がさらに生まれてくるのではないだろうか。それはきっと、その分野のトップレベルの性能をもち、美しいデザインで、信頼性高く愛される製品として誕生することだろう。そして、ヤマハファンはそれを待ち望んでいるに違いない。

●WaveRunner FX/GP/VX搭載オーディオシステムスペック
形式: 2ウェイ パッシブラジエーター
使用ユニット: 318mmテトロン・ドーム・ツイーター 165mm耐水コーン
パッシブラジエーター: 直径114mm
接続: Bluetooth
定格出力: 40W × 2ch
入力インピーダンス: 4Ω
防水・耐水能力: IPX6K, IPX8, IPX9K

WaveRunner製品ページ

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著者プロフィール

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を…