トップグレードの2800GTエクストラは特にレアな存在【ニューイヤークラシックカーミーティング】
2022年1月9日に埼玉県羽生市にあるキャッセ羽生で開催された「ニューイヤークラシックカーミーティング」には幅広い年代の国内外による名車が展示された。いずれもコンディションの良い個体ばかりだったが、新車時のままの姿を維持する貴重なクルマも見受けられた。今回はそんななかから貴重な1台である初代トヨタ・ソアラをクローズアップしたい。
初代ソアラは1981年に発売されると、クルマ好きから大きな注目を浴びた。というのも2.8リッターDOHCエンジンは国産車の歴史にあってエポックといえる存在だったから。DOHCエンジンといえばホンダ・トヨタ・日産・いすゞ・三菱などがラインナップしていたものの、いずれも2リッター以下。しかも70年代半ばに襲来したオイルショックや排出ガス規制の影響で数を減らし、生き残ったエンジンも牙を抜かれたような性能でしかなかった。そんな時代に2.8リッターという大排気量で登場したのだから、誰もが気になる存在になったのだ。
とはいえ当時は3ナンバー車に高額な自動車税が課せられていたこともあり、誰もが買える存在ではなかった。国内での主役はやはり2リッター車だったので、新車登録台数が少なく当然生き残った個体もごくわずか。逆にいえばだからこそ、新車時のままの状態で維持される個体もあったのだろう。このソアラは当時のトップグレードである2800GTエクストラ。オーナーは平成元年に入手した佐野一美さんで現在64歳。
佐野さんが入手した1989年といえば、日本はバブル景気に踊っていた時代。一連の白いトヨタ系ハイソカーは新しければ新しいほど価値があると考えられていた。だからソアラといえど初代は暴走族御用達の存在で、人気は低くなっていた。まして3ナンバーの2800GTを欲しがる人は少なかっただろう。ところが以前から乗ってみたいと考えていた佐野さんの知り合いに、このエクストラを所有する人がいた。口説き落とすようにして譲ってもらったのだ。
佐野さんが購入する決め手になったのが、現車が2800GTエクストラだったということ。2リッター車やエクストラではないGTだったら触手は伸びなかった。というのもブラウン系で統一された内装を持つエクストラには、音声警告機能やクルーズコントロールなど先進装備が盛り沢山だったから。革張りシートが痛んでいないというところもお気に入りだ。
もちろんその性能にも惚れ惚れした。どこまでも回転が伸びていくような6気筒DOHCの特性は、ほかのエンジンでは味わえないものだし性能的にも十分すぎるほど。未だ走行距離が6万km台だからだろうかトラブルは少なく、これまでバッテリーが上がったこととマフラーに穴が空いたことくらいで済んでいる。大事に維持されていることが伝わってくるが、このクルマだけでなく5年前に5速MTのエクストラまで手に入れた。初代ソアラ一筋な佐野さんなのだった。