SUVカスタムのキーワードは「オフロードへの回帰」!
「東京オートサロン2022」は来場者約13万人を集め、今回も盛会のうちに幕を閉じた。国内外のカスタムカーが集結する同イベントにおいて、3年ほど前から目立っているのが「オフロード4WD」の存在だ。2019年は各社のジムニーが百花繚乱し、以降もトヨタ・ハイラックスやジープ・ラングラーアンリミテッドJLなどのカスタムカーが花を添えてきた。
そして、今年。昨年、15年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたランドクルーザー300や、先だって発表されたばかりのレクサスLXが会場でお披露目されたのは記憶に新しい。レクサスLXのカスタムカーを出展したのは、トヨタの純正アクセサリーとして認定されているブランド「JAOS」だ。
「LXオフロード」をベースにしたカスタムカーは、同社の老舗としてのノウハウを十二分に活かしたもので、オリジナルの前後バンパーやオーバーフェンダー、ホイールを装着。新型で設定されたオフロード仕様を、さらにヘビーデューティな雰囲気に仕上げている。まだ市場にもほどんど流通していないモデルだけあって、多くの来場者の注目を集めていたことは言うまでもない。
同社はランドクルーザー300のカスタムデモカーも展示しており、こちらは前後バンパーやオーバーフェンダーの形状において、LXよりもオフロード寄りに踏み込んだものとなっている。今年は多くのカスタムビルダーがランドクルーザー300を出展していたが、さすがはJAOSといえる完成度の高さを誇っていた。
さて、ジムニーの開発コンセプトが「原点回帰」であったことは周知の通りだが、今回のショーを通して改めて実感させられたのが、SUVのオフロードへの回帰だ。カスタムの本場であり、日本市場に多大な影響を与えているアメリカでは、ハリアーのような都市型SUVをオフロード仕様、さらに言うなら「オーバーランド仕様」にするのが流行している。
それはトヨタのブースを見ても分かった。同社のブースには、ひっそりとレクサスNX PHEVオフロード コンセプトが展示されていたが、まさにあのスタイルがイマドキのアメリカンスタイルそのもの。流麗な都市型SUVに、ミスマッチとも思えるオフロードタイヤやルーフラックを載せて、ナショナルパークに出かける。これが、彼の地のオフタイムの理想になっているわけだ。
会場には、さらにスチールバンパーや背面スペアタイヤキャリア、リヤラダーを付けたRAV4が並んでいたが、あれもまたアメリカンカスタムの手本のようなクルマだった。
しかし、本格的なオーバーランドが難しい日本では、こうしたスタイルは“机上”になりがちだ。カスタムには必ずしも実用性やリアリティは伴う必要はないので、デザインや空気感を楽しめばいいという考え方もある。それでいえば、三菱自動車が展示していたアウトランダーPHEVベースの「ヴィジョン ラリアート コンセプト」と「アウトランダー ラリーアートスタイル」は注目すべきクルマだ。
ヴィジョン ラリアート コンセプトはオンロード志向のコンセプトカーだということだが、オフロードカーも持つ筋肉質なイメージや、ラリアートのイメージが上手く活かされていた。アウトランダー ラリーアートスタイルに関しても、ターゲットはオンロード派だが、JAOSが創造するパーツ群のように、オフロード風味を上手に出している。個人的には、かつて常勝軍団だった頃のパリダカ・パジェロやWRCランサーエボリューションのように、もっと踏み込んだ泥系カスタムを期待したいところだ。
いずれにせよ、世のアウトドアブームに沿ったオフロード系カスタムがますます盛況になるだろう。前出のレクサスNX・PHEVオフロードコンセプトのようなスタイルのクルマが、休日になると多数走り回る予感がしている。