リモート駐車も、安心降車アシストも、実際に「使える」のがスゴイ
新型トヨタ・ノア/ヴォクシーではADAS(先進運転支援システム)「トヨタセーフティセンス」が、新型レクサスNXと同世代のシステムにアップデート。先代ユーザー待望の「レーダークルーズコントロール」も、全車速追従機能やレーントレーシングアシスト+レーンディパーチャーアラート付きのものが全車標準装備されるなど、数多くの機能が進化し追加されている。
なかでも、リヤパワースライドドアを開けた際にクルマや自転車などと衝突する危険性が高い場合は途中停止またはオープン操作をキャンセルする「安心降車アシスト(ドアオープン制御付)」と、スマートフォン操作による無人駐車にも対応した「トヨタチームメイト アドバンストパーク(リモート機能付)」は、トヨタブランドでは初めてメーカーオプション設定された目玉機能。その真価を実車で体験する機会に恵まれたのでレポートしたい。
まず「安心降車アシスト(ドアオープン制御付)」は、走行中に後方から接近する車両をリヤバンパー内側左右のミリ波レーダーで検知した際にドアミラー内のインジケーターと点灯・点滅させて警告する「ブラインドスポットモニター」(BSM)とセットで装着されるオプションとなっており、接近車両の検知方法はBSMと基本的に同じ。ただし警告の出し方はより入念で、ドアミラー内のインジケーター点滅に加え、メーター表示や音声通知でも乗員に注意喚起される。
ちなみにレクサスNXの場合は前後ともヒンジドアだが、スイッチ操作だけでラッチ/アンラッチ操作が可能な「e-ラッチ」と組み合わされており、車両の接近を検知した際はアンラッチ操作がキャンセルされる。
新型ノア/ヴォクシーのフロントヒンジドアには「e-ラッチ」が採用されていないため、フロントドアに「安心降車アシスト(ドアオープン制御付)」は実装されない。だがリヤパワースライドドアは、その開閉用モーターを制御することで、リヤドアから降りようとする乗員の衝突を防ぐことが可能となっている。なお、リヤパワースライドドアへの「安心降車アシスト(ドアオープン制御付)」の実装は、新型ノア/ヴォクシーが初だ。
今回のテストでは、自転車が約20m後方からヴォクシーの側面スレスレをかすめるように接近。車内では自転車が発進した直後に助手席側リヤパワースライドドアのオープン操作を実行。ブザーとともにスライドドアがゆっくり開き始めたが、自転車がヴォクシーの後端から約3m離れた所まで近づいた所で……スライドドアが急停止! 無理矢理こじ開けない限りは降りられないほどわずかな隙間が空いた状態で、見事にオープン操作が中断された。
一方、自転車がヴォクシーの側面から約1m以上間隔を開けて後方から接近すると、リヤドア開口部の真横まで近づいてもオープン操作は中断されず、そのまま全開になった。
なお、検知感度は低い/中間/高いの3段階から(初期設定は中間)、ドアミラーインジケーターおよび「安心降車アシスト(ドアオープン制御付)」自体のON/OFFもマルチインフォメーションディスプレイから設定可能。「小さい子供がいるのでいきなり飛び出したら怖い……」という場合は感度を「高い」に設定すれば、より多くの状況で事故のリスクを回避できるだろう。
続いて「トヨタチームメイト アドバンストパーク(リモート機能付)」だが、「パノラミックビューモニター」の広角カメラと前後ソナーを用いて駐車・出庫時の加減速・操舵を(ハイブリッド車はシフト操作も)ほぼ全自動で行なう「アドバンストパーク」自体も進化している。具体的には、並列駐車時の支援機能が拡大されたほか、従来のバック駐車に加え前向き駐車にも対応したことで、前向き駐車/バック出庫が可能になった。
今回はノアのハイブリッド車で、従来通りのバック駐車/前向き出庫を2列目で体験したが、特にバック駐車は、
駐車スペースの左側に停車してメインスイッチを押し、画面上の開始ボタンをON
→自動で前進・右折
→自動で「R」レンジに入り左折しながら後退
→駐車スペースの左右中央に着けたら自動でステアリングを中立に戻して後退
→駐車スペースの中央で自動的に「P」レンジに入って終了
までの一連の動作がどれも速く、しかも隣接する車両の側を躊躇なくかすめていく。そのため「他のクルマや人に当たりそうになったら、ブレーキを踏んでも間に合わないのでは?」とやや怖くなるほどだったが、開発スタッフに聞くと「障害物を検知すると即座に強制終了する」とのこと。とはいえ過信は禁物なので、この機能を使う時はいつでもブレーキを踏めるよう身構えておきたい。
そして肝心のリモート駐車機能は、駐車したいスペースに横付けしてメインスイッチを押すまでは通常のアドバンストパークと同じだが、そこから先は大きく異なる。
具体的には上の一連の写真の通りだが、車両から約3m以内で操作し続けなければならないこともあってか、車速はどれだけジョグダイヤルを早く回しても4km/h以下程度。ただし、衝突のリスクがないと判断された場合は狭い場所でも躊躇なく進むこと、障害物を検知すると即座に強制終了する点は、通常のアドバンストパークと同様だった。
とはいえ、車内には完全に人がいない無人の状態で、並のドライバーが自分で運転するよりもよほど上手く、しかも物理的に駐車可能なスペースであれば狭い場所でもいたってスムーズに、自動で駐車できてしまう。そのこと自体が驚きであり、無人運転時代の夜明けを感じずにはいられなかった。
「安心降車アシスト(ドアオープン制御付)」と、「トヨタチームメイト アドバンストパーク(リモート機能付)」、どちらも駐車場での事故を防ぐうえで大いに役立つ機能なのは間違いない。しかし、これらの機能に依存しすぎると、注意力や運転スキルがかえって低下し、他のクルマに乗れなくなってしまいそうだ。それはむしろ狙った所……であるならば、もはや見事というより他にない。