「新しい主張のあるアダルトカー」がコンセプトだったハッチバック・セダン【第2回ホンダクラシックミーティング】
初代アコードはシビックより大きな1.6リッターエンジンを搭載する新機種として1976年に発売された。当時としては斬新な「ハッチバック・セダン」で「新しい主張のあるアダルトカー」をコンセプトに開発された。その当時はオイルショックや排ガス規制の強化が重なり、スポーツカー冬の時代。アコードは排ガスデバイスに頼らない希薄燃焼方式CVCCエンジンで時代に訴求する、確かに新しい時代を感じさせてくれた1台だった。
シビックより全長もホイールベースも長いが、ハッチバックスタイルとしたことで大容量のラゲッジスペースを実現。ルックスもセダンよりスポーティなもので、独自の世界観を備えていた。発売翌年には4ドアセダンを追加発売して、より堅実な購買層へもアピールした。
さすがに街中で初代アコードを見かける機会はなくなったし、旧車イベントに参加していた記憶もほぼない。ところが1月30日に埼玉県のしらこばと水上公園で開催された第2回ホンダクラシックミーティングの会場で、当時のままと思える程度極上の初代アコードを発見。早速お話を聞くため近くにいたオーナーを直撃してみた。
オーナーは65歳になる松浦正卓さんで1980年に新車購入して以来、なんと42年間維持し続けてきたという。おまけに塗装も装備も新車のままを保っているというから驚きの1台だ。というのも外装に傷らしいものは見受けられず、メタリック塗装のクリアもしっかり輝きメッキパーツは曇りひとつないのだ。室内に目を向けても外装同様に素晴らしい状態を保っていて、傷みがどこにも感じられないのだから圧巻だ。
写真で見るだけでも程度の凄さを感じていただけるだろう。年式を考えたら紫外線によりダッシュボードや樹脂パーツが割れていて当たり前なのに、無傷のまま新車のような印象なのだ。走行距離は9万km台で、車検は一度も切らしたことがなく休日だけ使用されているとか。さらに聞けば案の定、ガレージ保管だった。だから内外装ともに極上なのだろう。
ところでこの時代のホンダはATに独特な機構を採用していた。それが2速ATのホンダマチック。発進時は1速が受け持ち、変速した後は0.903というギア比になるスターレンジが受け持つ。スターレンジに入れたままでも緩慢ながら発進から使えるため無段変速を可能としていたことが特徴だ。79年にはODを備える3速に進化しており、MTが主流だった当時の国内でも人気のあるトランスミッションだった。
明るい室内を演出するベージュの内装色は汚れや傷みが目立つものだが、このアコードには無縁の話。ヤレという言葉がまったく出てこないような状態だ。プレリュードで話題になった運転席から助手席を倒すことが可能な内側のリクライニングレバーは、すでに初代アコードで採用されていたことを改めて発見した。何もデートカーの専売特許ではなかったのだ。ほぼオリジナル状態ながら、リヤシートの後ろに松浦さんが自作したスピーカーが載せられていた。
当初は1.6リッターだったCVCCエンジンは78年に1.8リッターへ排気量を拡大している。松浦さんのアコードは1.8リッターになってからのモデルで、グレードは速度感応式パワーステアリングを標準装備するEX。これまでエンジンは深刻な故障と無縁だったが、キャブレターが二度ほどトラブルを起こした。そこで今回のイベントの主催者でもあるガレージサイコーで修理してもらうことになった。この時代のクルマだとエアコンやパワーステアリングの故障が付き物というイメージもあるが、意外にタフなこともアコードを乗り続けられた理由なのかもしれない。