陸上自衛隊:対戦車火器②:撃ち放し能力を持つ「01式対戦車誘導弾」/“スティンガー”ベースの「91式携帯地対空誘導弾」

北米ヤキマ訓練場での01式対戦車誘導弾の実弾射撃訓練の光景。
ロシア・ウクライナでの戦闘で使われた歩兵携行式対戦車火器の実力とその戦果は大きなものだと感じる。戦車など装甲戦闘車両の侵攻を食い止め、ロシア勢力を押し戻すきっかけになったと思えるからだ。今回も陸上自衛隊が装備する同様な対戦車火器と、航空自衛隊も装備する対空弾に注目してみたい。
TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

01式対戦車誘導弾 対戦車の『肩撃ち兵器』

軽装甲機動車のルーフハッチから射撃するため準備した状態。01式の右側面を下にして屋根に置いている。筒先から見える白いものが弾体の先端。

陸上自衛隊が装備する対戦車火器には前回ご紹介した「110mm個人携帯対戦車弾(LAM、通称「パンツァー・ファウスト」)と、「84mm無反動砲(通称「カール・グスタフ」)がある。さらにもうひとつ、今回とりあげる「01式対戦車誘導弾」も注目すべき『肩撃ち兵器』だ。

01式対戦車誘導弾は小型軽量の携帯式対戦車ミサイルというもの。1997年(平成9年)から当時の防衛庁技術研究本部が試作を始め、2001年度(平成13年度)から調達を開始、2002年度(平成14年度)から部隊配備が始められた。

01式は主に普通科部隊が装備している。多くは近距離での対機甲戦闘に使い、相手戦車などの装甲戦闘車両を撃破するために用いるという。

誘導弾を内包した筒状のキャニスターに、照準装置などを内蔵した箱状の操作装置部を装着した外観だ。全長約970mm、重量約11.4kgとLAMや無反動砲と比べれば軽量コンパクトではあるものの、先端部に嵩張る操作部を取り付けた1m弱の筒はそれなりのボリューム感がある。射撃手は肩に担いで装置のグリップ部を両手で保持する。

ミサイルの誘導は赤外線画像誘導方式で行なう。自動化が進み、発射後の継続誘導が不要な「撃ち放し能力」を持つという。射撃後の誘導操作を続けなくても良く、即撤収に移れることで生存性を上げているわけだ。

01式は近距離での対機甲戦闘に使うとされているが、具体的な射程などは当然だが公表されていない。近距離とはどのくらいか? これは富士総合火力演習での実弾射撃展示をみると掴める。目視できる範囲の目標に対して射撃しているのだが、これは総火演という「展示」の場であることも関係し、射撃地点と弾着地点を同時に見せるという目的が優先される面も関係するはず。ともあれ、見える範囲での制圧力は大きいということはわかる。一方、高性能誘導弾ならではのいわゆる気難しい面もあるようで、射撃前の取り扱いや点検などには細かい注意や手順が必要なようにも見える。

■01式対戦車誘導弾 主要諸元

陸上自衛隊の対戦車火器「01式対戦車誘導弾」。写真/陸上自衛隊
●重量:約11.4kg●全長:約970mm●胴体直径:140mm●速度:4発/分●誘導方式:赤外線画像誘導方式●システム重量:約17.5kg●製作:川崎重工業

91式携帯地対空誘導弾 「スティンガー」の後継

91式携帯地対空誘導弾の射撃を模擬した展示。写真/陸上自衛隊

侵攻してくる相手軍用機などに対抗する手段としての「肩撃ち兵器」には対空誘導弾もある、「91式携帯地対空誘導弾」だ。

91式携帯地対空誘導弾は、米国製の携帯式地対空ミサイル「スティンガー」の後継に相当する国産の携行式地対空ミサイルだ。略して「携SAM(Surface-to-Air Missile)」などと呼ばれ、個人が携行できる対空ミサイルSAMを示している。ほかの肩撃ち兵器と同様に射撃手がひとりで操作、射撃可能なものだ。1991年度(平成3年度)に制式化された。

米海兵隊の「スティンガー」射撃訓練の様子。

91式はスティンガーよりも主に誘導技術面で大幅な性能向上が図られたという。正面要撃性、瞬間交戦性、対妨害性などの性能が上がっているそうだ。陸上自衛隊では自衛用の対空火器として使い、機甲(戦車)部隊や特科(火砲・ミサイル)部隊の自衛用対空火器としても配備している。航空自衛隊と海上自衛隊ではそれぞれの基地防空用対空火器としての配備が見られる。

■91式携帯地対空誘導弾 主要諸元

自衛隊の対空誘導弾「91式携帯地対空誘導弾」。写真/陸上自衛隊
●ミサイル重量:約9kg●全長:約1430mm●胴体直径:80mm●肩上重量:約17㎏●誘導方式:可視光画像+IR●推進薬:固体燃料●製作:東芝

著者プロフィール

貝方士英樹 近影

貝方士英樹

名字は「かいほし」と読む。やや難読名字で、世帯数もごく少数の1964年東京都生まれ。三栄書房(現・三栄…