陸上自衛隊:現役活動中の「73式装甲車」 古いが重宝されている装軌式・装甲人員輸送車

陸上自衛隊の装軌式装甲車「73式装甲車」。写真/陸上自衛隊
73式装甲車は1973年12月に制式化された装軌式装甲車。アルミ製車体で、浮上航行装置を装着すれば、水上航行もできる。車体上に装着される12.7mm重機関銃は車内から操作できるリモコン式。全体で338両が生産された。
TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)
左側面から見た73式装甲車。前身の60式装甲車と比べて全長を約1m拡大、車高も低く抑えた。室内の居住性も向上した。車体後部のT字型の切り欠きが銃眼(ガンポート)で、車内から射撃ができる。写真/陸上自衛隊

73式装甲車は陸上自衛隊で使用中の装軌(キャタピラ)式の装甲人員輸送車だ。制式化されたのは車名どおり1973年(昭和48年)12月で、翌74年(昭和49年)から各部隊への配備が始まった。以来、約50年も使っていることになる古い装備だ。合計して338両が生産され各地の部隊に配備、現在も使われている。製造したのは三菱重工。ちなみに本車の前身は60式装甲車で、これは先の大戦後初の国産装軌式装甲車だったもの。73式装甲車はこの60式を更新する装備として登場した。60式は2006年には全車が引退している。

73式装甲車は60式を発展させて作られた車体構成が光り、使用性や汎用性に優れる装甲車だ。主要寸法は全長5.8×全幅2.9×全高2.21m、全備重量は13.3トンというサイズ。前身の60式と比べてロー&ワイド化、低重心に作られていて、いかにも走りの良さそうなフォルムが外観上の特徴だ。車内後部の兵員室には8名(小銃班1個)を乗せることができる。

エンジンは三菱製の2サイクル空冷4気筒ディーゼル機関で、300ps/2200rpmを発生する。約13トンの車重だから機動性も充分ある。最高速度は約60km/h。エンジンは同時期に登場している74式戦車と主要部の共通化が図られているので、つまり74式戦車と共同行動を取る装甲車という目的に合った仕様だ。

演習中の73式装甲車。車体前部の丸太や草木は各種作業や偽装を目したもの。車体前方右側(写真左手)には操縦手が着座、その背後には車内から遠隔操作可能な12.7mm重機関銃M2の銃塔がある。写真/陸上自衛隊

車体はアルミ合金製で装甲が施され、気密性もある。戦車とほぼ同等の密閉性があるので生物・化学兵器などが使用された環境下での活動性・生存性も図られた。軽量アルミ製と気密性のある車体は水上を浮上航行する性能もある。浮航速度は約6km/h。浮航性能は備えているものの実用性は薄いといえそうだ。浮航させるには後付けの浮体(フロート)などを装着する必要があり、この作業が煩雑で手間のかかるものだといい、実際に使われる機会はマレだそうだ。これは仮設橋や架柱橋など渡河装備の開発と配備が進んだことや、国内河川などの護岸整備が時代とともに進んだこととも相まって、車両個体の浮上航行性能を問わなくてかまわない環境や状況、時代性によることも関係しているのだろう。

武装は12.7mm重機関銃M2を1丁、74式車載7.62mm機関銃を1丁、それぞれ搭載できる。重機関銃M2は車内からリモコン操作が可能。また車体側面には銃眼(ガンポート)が設けられ、車内後部の兵員室内部から射撃が可能だ。

豪雪、地吹雪の中で演習中の73式装甲車。2両目以後は車体側面などに雪中迷彩が施されている。北海道に置かれた戦車部隊・機甲師団である北部方面隊第7師団の、第11普通科連隊に配備された73式装甲車。写真/陸上自衛隊
73式装甲車の前身となった60式装甲車の展示車両。73式に比べると背高なフォルムが印象的で、全体的に時代を感じさせるもの。写真/lasta29

本車は主に普通科(歩兵)部隊の装備として使われているが、冷戦時代より対ソ(ロシア)戦略として戦車運用を重要視している北海道では第7師団などの機甲師団で職種を横断するように使われる例も見られる。戦車部隊の機甲科に随行する普通科や施設科(戦闘工兵)、通信科などでそれぞれの職種での使用目的に合わせて細かく改装するなどして使っているそうだ。戦車を自在に運用することで守りを固める必要のある北海道では、全般的に装軌式装甲車の性能を重視しているということがわかる。一方、九州の第8師団などでは本来の防衛用途に加え、大規模な火山帯が多いという地域性を踏まえて、車体の気密性や耐久性など防護性能全般と被災環境下での機動性能を重視して災害対応用途にも備え、普通科連隊の一部に少数が配備されている。

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著者プロフィール

貝方士英樹 近影

貝方士英樹

名字は「かいほし」と読む。やや難読名字で、世帯数もごく少数の1964年東京都生まれ。三栄書房(現・三栄…