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自衛隊新戦力図鑑

戦後初となるフィリピンでの訓練参加

2026年4月から5月の期間で、陸上自衛隊はフィリピンで開催される複数の多国間(米比・日ほか)共同訓練に参加している。ひとつが4月6日から開始された「サラクニブ26」であり、こちらは第2普通科連隊(新潟県上越市)を中心に420名規模の人員と16式機動戦闘車などが参加。日本の戦闘部隊がフィリピンに展開するのは戦後初であり、歴史的な訓練となった。

フィリピン軍との共同訓練を実施する陸上自衛隊 第12偵察戦闘大隊の16式機動戦闘車(写真/フィリピン陸軍)

もうひとつが4月20日から5月8日に実施された「バリカタン26」であり、こちらは陸海空自衛隊から1400名の人員が参加する大規模なものとなった。なかでも、88式地対艦誘導弾による実弾射撃訓練は、動画も公開され多くの注目を集めた。

バリカタン26では上陸阻止訓練も実施された。写真は84mm無反動砲を発射する陸上自衛隊 水陸機動連隊の隊員(写真/アメリカ陸軍)

沖合75kmの標的艦に見事命中

「88式地対艦誘導弾」は、1988年より陸上自衛隊に導入された地対艦ミサイルシステムである。当時はアメリカ・ソ連による東西対立の時代であり、日本沿岸に接近するソ連艦隊を攻撃するため、北海道や日本海側から配備が開始された。2012年には後継となる「12式地対艦誘導弾」が導入されているが、現在も第一線の地対艦ミサイルとして配備が続いている。

88式地対艦誘導弾(写真は日本国内のもの)。ランチャーを斜めにアップして、射撃体勢をとっている。88式は目標方向にランチャーを向ける必要がある。一方で、後継の12式地対艦誘導弾は垂直発射式(真上に打ち上げる)となり、どの向きにも発射できるようになった(写真/陸上自衛隊)

88式地対艦誘導弾の最大射程は約180kmと言われている。地球の丸みのため、発射位置から目標艦艇を直接レーダーで捉えることができないため、味方部隊からの位置情報に基づいてミサイルを発射する。ミサイルは発射後、自律的に現在位置を計算する慣性航法という手法で目標に向かい、目標近くで自らのレーダーを起動させて目標を捕捉・攻撃する。

今回の訓練では、沖合75kmの標的船への射撃が実施された。標的となったのは、フィリピン海軍の退役哨戒艦「ケソン」だ。アメリカ軍が公開した動画では、ミサイルが標的船の側面に直撃する様子を確認できる。全長70m弱の小型艦に見事命中させたことは88式地対艦誘導弾の誘導能力の正確さを示しているだろう。

「ケソン」の撃沈。88式地対艦誘導弾は敵による発見や迎撃を回避するため、海面スレスレを飛翔する。上の画像は命中直前のもので、ミサイルが写っている(赤い丸のなかにミサイル)。下の画像は命中した直後の様子。画像はアメリカ軍公開の動画より切り抜いたもの。同様の動画はフィリピン軍もSNSにアップしている(https://x.com/Philippine_Navy/status/2052335132812468673)

中国艦隊の太平洋進出を牽制

さて、注目したいのは訓練場所だ。今回、88式地対艦誘導弾はルソン島北部のパオアイ砂丘に展開した。ルソン島の北には台湾とのあいだに幅350kmのルソン海峡(バシー海峡)が広がっており、中国艦隊の太平洋への出口のひとつとなっている。

今回の対艦攻撃訓練は、単なる訓練に留まらず、中国海軍の太平洋進出を強く意識したものと見ることができるだろう。すでにフィリピンにはアメリカ軍の地対艦ミサイル部隊が展開し、一連の訓練を通して対中抑止の実効性を高めている。そのうえで今回、日本の地対艦ミサイル部隊がルソン海峡正面へ実際に展開し、実弾射撃まで行った意義は大きい。

訓練参加部隊による記念撮影。アメリカからは地対艦ミサイル車両「NMESIS」(写真奥、左側)や防空車両「MADIS」(写真左右)が参加した。NMESISは、これまでもフィリピンで訓練を行なっている(写真/アメリカ海兵隊)

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