連載

自衛隊新戦力図鑑

現代では「撃ったら即逃げる」が鉄則

アメリカ陸軍・海兵隊で歩兵部隊に配備されている迫撃砲を車載化・自走砲化する動きが進んでいる。両者で導入されているのが「スコーピオン高機動迫撃砲システム」だ。これは“専用の自走砲車両”ではなく、既存の車両に迫撃砲を後付けして自走砲化するシステムであり、具体的には車体後端にアームで展開する迫撃砲を装備するものだ。

トヨタ・ランドクルーザーを改良し、スコーピオン迫撃砲システムを搭載したモデル。迫撃砲は、移動時には格納されており、射撃時に展開する(画像/NTGS)

なぜ、迫撃砲を自走化するのか? 近年の戦場では、末端レベルにまで小型ドローンが普及したことで、最前線より後方にいる迫撃砲といえども、発見・攻撃される可能性が急速に高まっているためだ。

たとえばウクライナでは、射撃後10分もしないうちにレーダーや偵察ドローンなどを組み合わせた監視網によって位置が特定され、反撃(砲撃や自爆ドローン)が飛んでくるという。このため「撃ったら即逃げる(シュート&スクート)」が鉄則となっているのである。

迫撃砲を展開させる様子(写真/アメリカ陸軍)

高度な自動化によりシュート&スクートを実現

西側諸国では一般に60mm、81mm、120mmの3つの口径(砲弾の直径)の迫撃砲が用いられている。60mmは歩兵が一人で持ち歩ける“軽”迫撃砲、81mmは分解して持ち歩く“中”迫撃砲、120mmは車両牽引か車載が必須の“重”迫撃砲である。

陸軍と海兵隊は、これまで兵士数人がかりで持ち歩いていた81mm迫撃砲を、スコーピオンにより自走化しようと考えている(また、そもそも海兵隊は120mm迫撃砲を保有していない)。

現在、アメリカ陸軍が使用するM252 81mm迫撃砲。総重量は41kgあり、砲身や台座プレート、二脚などに分解して持ち運ぶが、いずれも10kg以上。さらに砲弾も一発あたり4kgもある(写真/アメリカ陸軍)

スコーピオンは、アームにより砲の設置が自動化されたことに加え、射撃管制システムのデジタル化によって人力による弾道計算や照準調整(方向や角度の調整)の必要がなくなった。このため、射撃位置到着から射撃準備、射撃(8発)、撤収までを、わずか2分で完了することができるようだ(メーカーの主張に基づく)。

スコーピオンによる射撃。デジタル化により弾道計算などが自動化されている。砲の底部のプレートが地面と設置し、発射の衝撃を吸収・分散させるため、舗装路面からも射撃ができる(写真/アメリカ陸軍)

輸送も考慮したベース車両の選定

陸軍は汎用車両であるISV(歩兵分隊車)に搭載したものを昨年から試験導入している。ISV搭載スコーピオンは、CH-47大型ヘリコプターによる機内搭載や、UH-60多用途ヘリコプターによる吊下げ(スリング)空輸が可能となっている。海兵隊も今年2月に、より小型軽量なポラリスMZRZに搭載したものを試験導入することを明らかにした。MV-22オスプレイ垂直離着陸輸送機への搭載を考えているようだ。

海兵隊はポラリスMZRZ全地形車両にスコーピオンを搭載した。小型軽量であり、MV-22にも搭載できる(写真/グローバル・オードナンス)

さて、今年4月~5月にフィリピンで開催された多国間共同訓練「バリカタン26」に、さっそくアメリカ陸軍はスコーピオンを持ち込んだが、これを陸上自衛隊の将官が視察する場面があった。陸自も同じ口径の迫撃砲を使用しているが、やはり導入に興味があるのだろうか?

陸軍のスコーピオンを視察する、陸上自衛隊の武者利勝陸将補(写真/アメリカ陸軍)

連載 自衛隊新戦力図鑑

by MotorFan
業界人コラム 2026.05.17

“逃げ足の速さ”が大事! 人力から車両搭載型へ変化するアメリカ軍の迫撃砲

by MotorFan
業界人コラム 2026.05.10

陸上自衛隊の地対艦ミサイルが哨戒艦を撃沈! 日米が連携して中国の太平洋進出を抑止

by MotorFan
2026.05.03

ランドローバーの後継はランドクルーザー? イギリス軍機動車両選定にトヨタ車が名乗り