連載

自衛隊新戦力図鑑

自分で組み立て、自分で飛ばす

5月20日、沖縄駐留のアメリカ海兵隊はFPVドローン訓練をメディアに公開した。FPVドローンとは、機体搭載のカメラ映像を通して一人称視点(First Person View)で操縦するもの。もともとホビー用途の安価・小型な民生品がウクライナ戦争の最前線で使用され始めたことがきっかけで爆発的に普及した。陣地や車両に対する体当たり自爆攻撃の映像はSNSで拡散され、見たことがある人も多いだろう。

飛行するクアッドコプター(4枚ローター)型FPVドローン。このタイプの行動範囲は数kmから十数kmで飛行時間も長くはないが、末端レベルの兵士に航空偵察能力や精密攻撃能力を与えたという点が革新的だった(写真/筆者)
FPVドローンの操縦は、ドローンから送信されたリアルタイム映像をゴーグルで見ながら行なう。カメラの小型化や通信技術の発達と普及(低価格化)がFPVドローンを生み出した(写真/筆者)

公開されたのはもっとも初歩の基礎ドローン・オペレーター課程で、決められたコースに沿ってドローンを操作するというものだった。これだけであれば、特に面白みもない内容だが、筆者が興味をひかれたのは「操縦だけでなく、製造も学ぶ」という点だ。この訓練で使われているドローンは既製品ではなく、隊員が組み立てたものだという。

四角い枠に飛び込むドローン。右は操縦者が見ている映像。基礎課程の操縦訓練は定められたコース上の障害物を避けたり、通り抜けたりするものだった(左写真/筆者、右写真/アメリカ海兵隊)

FPVドローンは、カーボンファイバーなどのフレームの上に、頭脳となるマイコンチップ、モーターとプロペラ、カメラ、送受信機、リチウムバッテリーなどで構成される。隊員たちは3Dプリンターの利用やジャンクパーツなどからドローンを組み立てることができるようだ。「たとえばモーターは、掃除機などの部品を流用することが考えられます」と海兵隊員が説明をしてくれた。

訓練で使用されたFPVドローン(上側のフレームを外した状態)。構造はとても単純で、特別な部品は一切ない。小型カメラや高速データ通信など、スマートフォンと同様の技術がFPVドローンを生み出した(写真/筆者)

ウクライナ戦争でFPVドローンが爆発的に普及した背景には、製造や改修の容易さがある。もともと簡易な構造であるために、最前線近くですら生産が可能となったのだ。ウクライナでは、ユーザー(兵士)からの直接の要望に基づく改良・改修が繰り返され、創意工夫あふれる多様なドローンが生み出された。

FPVドローンの構造について座学を受ける海兵隊員。教室には3Dプリンターが並んでいる(写真/アメリカ海兵隊)

補給に頼らず戦闘を継続できる

また、最前線近くで製造・改修できれば、補給に頼らず活動できる。実は本格的な“現地生産型”ドローンも海兵隊は試験導入している。それがファイアストーム社製「テンペスト」だ。翼幅2m級の固定翼型ドローンで、モジュラー構造による部品交換で偵察から電子戦、体当たり攻撃まで幅広い任務に用いることができる。

テンペストは全長、翼幅ともに2m程度あり、最大6時間飛行可能で、数百kmの行動範囲を有する(写真/アメリカ海兵隊)

このテンペストは「xCELL」と呼ばれる“移動式製造工場”がセットになっている。xCELLは、現地調達できる原材料をもとに外部電源なしでテンペストを生産できるという。また、輸送時はコンテナ2本分に格納され、可搬性も配慮されている。

遠征型製造施設「xCELL」。輸送時はコンテナ2本サイズに収まり、C-130中型輸送機やCH-47大型輸送ヘリによる空輸が可能(写真/アメリカ海兵隊)

海兵隊は対中国を念頭に、西太平洋の島嶼に分散・機動的に展開する「遠征前進基地作戦」を構想しているが、広い太平洋の島々に分散するため長く伸びた補給線の維持が大きな負担となる。武器を“現地生産”することが可能となれば、この負担を軽減し、最前線部隊の戦闘継続能力を大きく高めることになるだろう。

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