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第2世代イージス艦
護衛艦「あたご」型は、「たちかぜ」型護衛艦の代替更新として計画、建造されたミサイル護衛艦、いわゆるイージス艦だ。初代となる「こんごう」型に続く2世代目の海上自衛隊イージス艦になる。現在「あたご」型は2隻が就役中で、1番艦「あたご」の起工は2004年(平成16年)、進水は翌2005年(平成17年)、竣工は2007年(平成19年)。そして2番艦「あしがら」の竣工が2008年(平成20年)と、2隻とも艦齢約15年という存在だ。「あたご」型はこの2隻で終了していて、後続には「まや」型の2隻が就役中。海自は「こんごう」型、「あたご」型、そして「まや」型と合計8隻のイージス艦を保有、運用中だ。
イージス艦「あたご」型は「こんごう」型の発展型で、最新のイージス・システムを搭載している。ステルス性を強化し、「こんごう」型と比べ多くの箇所に改良が施されている。また「こんごう」型にはなかったヘリコプター格納庫を艦尾に設置、哨戒ヘリSH-60Kを1機搭載できるようになった。この格納庫の有無が「こんごう」型との外観上の相違点になる。「あたご」型はつまり米海軍のアーレイバーク級フライトIIA駆逐艦の仕様を参考にしながらヘリ格納庫を設け、デザインも同級に準じた護衛艦だといえる。
「あたご」型に搭載された装備・武器を見てみる。前方甲板には主砲として62口径5インチ砲1門を設置、これは従来の艦載砲より砲身の長い主砲で、米海軍艦艇に搭載されたものと同様の最新型だ。
前部甲板と後部格納庫上にMk.41垂直発射装置(VLS)を各1基(計96セル)ずつ置いた。VLSからは対空ミサイルと対潜ミサイル・アスロックを発射できる。
艦の中央部、2基の煙突の間には対艦ミサイルSSM発射装置4連装2基を置き、同じく中央部に3連装魚雷発射管2基を据えた。前・後部に近接防御火器システムCIWSを各1基設置してある。
イージス艦の武器である各種ミサイルの発射口となるMk.41VLSの配置を見ると、前方甲板部が64セル、後方のヘリ格納庫上が32セルの分配になっている。セルとはミサイル区画数の単位。これは「こんごう」型と異なる配置となった。また対空ミサイル装填装置を廃止したことでVLSのセル合計数は「こんごう」型より6セル増えている。
防空力の要であるイージス・システムは最新のベースライン7.1に更新。データリンク(戦術データ通信システム)は16型(LINK16)を搭載。衛星通信装置は通信速度を向上させたUSC-42型を装備している。
弾道ミサイル対処能力(BMD)を持つための改修
本型2隻は、「こんごう」型と同様に弾道ミサイル対処能力(BMD)を付与する改修が2016年から行なわれた。2018年にハワイ沖で行なわれた発射試験では標的となる模擬弾道ミサイルの迎撃に成功し、BMD能力を持ったことになる。本型2隻は今後、日米共同開発される「SM-3ブロックIIA」ミサイルを装備する計画だ。
イージス艦「あたご」は就役直後といえる2008年2月、千葉県・房総半島南方と三宅島北方に位置する海域で日本漁船「清徳丸」と衝突する事故が発生している。漁船の船体は中央部で折れ、船長と甲板員が行方不明となり、のちに両者とも死亡と認定された。
重大な海難事故であり、原因究明と再発防止策は徹底して行なわれた。刑事裁判では「あたご」の当直担当者2名は無罪判決が確定したが、海難審判では「あたご」側に事故主因があると認定する裁決が下りている。
その後の「あたご」は先に紹介したようにBMD能力付与の改修工事が施され、日本周辺海域で弾道ミサイル等に対する防御を担う1隻として就役中だ。
主要要目 基準排水量 7,750t 主要寸法 165×21.0×12.0×6.2m(長さ、幅、深さ、喫水) 主機械 ガスタービン4基2軸 馬力 100,000PS 速力 30kt 主要兵装 イージス装置一式、VLS装置一式、高性能20mm機関砲×2、SSM装置一式、62口径5インチ砲×1、魚雷水上発射管×2 乗員 約310名