小さくても堂々たる存在感、ルノー・トゥインゴの使い勝手を詳細にチェックしてみた!

ルノー・トゥインゴの使い勝手を徹底チェック!

三代目トゥインゴがマイナーチェンジを受けた。ポップでファニーながら、走りは骨太な魅力的なコンパクトを再検証するべく、コックピットとユーティリティを徹底的にレポートしてみた。

TEXT●工藤貴宏 PHOTO●中野幸次

※本稿は2016年7月発売の「ルノー・トゥインゴのすべて」に掲載されたものです。車両の仕様など現在とは異なる場合がございます。ご了承ください。

〈取材車のプロフィール〉インテンス キャンバストップ

▪ボディカラー:ブルードラジェ ▪インテリアカラー:ブルー

〈運転席まわり〉質素だけれどチープではない

インパネはシンプルで、色つきの樹脂を鉄板に見立てたポップかつちょっぴりレトロなデザイン。デザインセンスが巧みだから、質素だけれどチープな感覚はない。オーディオパネルや空調パネルは手前に張り出していて手を届きやすくし、一方で助手席の前はボリュームを抑えて広々感を創出している。
メーターは速度計+液晶ディスプレイで構成。速度計は目盛りと数字が書かれた外周に沿って指針が動く仕掛けで、文字盤の

エンジン始動時は「HELLO」の文字とともに速度計の指針が一度振り切ってドライバーを歓迎する。液晶には燃料計、シフトポジション、そしてマルチディスプレイを内蔵。オド&トリップのほか使った燃料量、平均燃費などを表示する。

ルームミラーの上には後席シートベルトの装盤の白い部分は透過照明で全体が淡く光る。着状況と助手席エアバッグの作動状態を示す、安全のためのインジケーターが備わる。
リーズナブルな価格のコンパクトカーとは思えないステアリングの作りこみには驚く。握りやすさを求めた立体的なグリップ形状なうえにレザーの質もよく、あえて目立たせたステッチも洒落た演出だ。

クルーズコントロール&可変スピードリミッターも全車に採用。ステアリングにはそのコントロールスイッチ(左側が速度設定で右側には解除と元の速度に復帰するボタン)とハンズフリー通話の発話/終話スイッチが組み込まれる。

キーはコンベンショナルなシリンダー式。ステアリングコラムの右側にキーシリンダーがある。
インパネ右端(メーター右下)には、ヘッドライトの光軸調整のほか、バックソナーやアイドリングストップ機構のオフスイッチが並ぶ。
足元のペダルはシンプルなデザイン。アクセルペダルはやや左寄りだが、気になるほどではない。

輸入車なのでウインカーレバーは左側。軽く触れると3回だけ点滅する機能も備わる。右側のレバーはワイパー操作用で、先端はメーター内ディスプレイの表示を切り替えるスイッチだ。オートライトと雨滴感応式オートワイパーを全車に装備。

シフトレバーの前方には制御を燃費重視に変更してガソリン消費量を減らす「ECOモード」や、可変スピードリミッターとクルーズコントロールの作動を切り替えるスイッチを設置。
前進は「D」レンジのみで、エンジンブレーキを効かせたいときなどには左側に倒して「M」に入れ、レバーを前後に動かしてマニュアル操作でシフトダウン/アップを行なう。

〈居住性&乗降性〉全長は短いのに後席は広い

小さな車体に最大限の居住スペースを用意する、という歴代トゥインゴの伝統はもちろん新型にも受け継がれている。先代よりも全長は短いのに後席(特に足元)が広くなっているのはRR化でノーズを短くできたためインパネの位置が前進したことと、12㎝伸びたホイールベースの恩恵だ。
後席はふたりがけ。約3.6mという短い全長とは思えないほどひざまわりに余裕がある。ただ、床に対して座面の位置が低めで、大人が座るとお尻が沈んでヒザが浮くような姿勢となる。また身長167㎝の筆者が座ると頭上も余裕は少ない。大人がゆったり快適に、というよりはファミリーユーザーのための子供が座る席と考えるとよさそうだ。
ヘッドレストを一体化した、いわゆるハイバックシートを装備。座り心地は硬め。サイドサポートは控えめでタイトな感覚はない。着座位置は高めで見晴らしは良好。正面を向くと、メーターパネルが小さいから視界の邪魔にならず、運転しやすい。ドラポジの調整機能としてはシート上下アジャスターのほかチルトステアリングを採用。リクライニング操作は、ドライバー席が微調整可能なダイヤル式、助手席は一気に動かせるレバー式と機能的に作り分けている。
後席のドアハンドルは窓の脇に目立たないように組み込まれている。これは見た目をスタイリッシュにするための演出で、普通のドアハンドルに比べると操作感がやや不自然だがすぐに慣れる。
フロアマットには刺繍によるトゥインゴのイラストが入り、ユーモラスな雰囲気だ。

乗降性も良好。フロントドアは開口角度に傾斜がつき、上部のほうが大きく開いて乗り降りを邪魔しにくい。アップライト気味の乗車姿勢なので着座位置も高めで乗降時の身体の動きもスムーズだ。前席は床とサイドシルの段差が20㎜と低いのも特筆すべきポイント。後席はロングホイールベースのおかげで足の動線が広い。

リヤウインドウは一般的な下がって開くタイプではなく、フリップ式で外側へ開く仕掛け。ちょっとした換気のために開ける、という感じだ。
リヤドアのインサイドドアハンドルまでコンパクトなのは、張り出しを防ぐことで物理的にも視覚的にも後席を狭くしないための工夫だろう。カラーリングが施され、トゥインゴのイラストが入るなど凝っている。

〈オーディオ&空調〉スマホを固定するクレードルも用意

オーディオやオートエアコンは全車に標準装備。そしてナビ代わりのスマートフォンをインパネに固定する取り外し式のクレードルをオプションで用意しているのだ。

USB端子やBluetoothによるハンズフリー通話&オーディオ接続にも対応したオーディオを全車に採用。DIN規格は無視し、操作スイッチは上部にも設けられている。空調は全モデルにオートエアコンを奢る。
ルノーの定番アイテム、オーディオサテライトスイッチももちろん組み込まれる。ステアリングコラム右側にあり、ステアリングを握ったまま指を伸ばすだけで操作できる仕掛けだ。素晴らしいのは、形状の異なるボタンやダイヤル(裏側にある)を組み合わせ、徹底してブラインド操作しやすく作られていること。
インパネ中央のエアコン吹き出し口はやや奥まった位置に設置。その手前にあるのは集中ドアロックとハザードランプのボタン。
クレードルはスライドレバーでスマホを挟み込む設計。USB端子(写真手前側)が組み込まれているのがなんとも親切だ。
スマートフォンを固定するクレードルがオプション採用されていることに、新たなる時代の到来を感じる。ここにスマホを固定し「ナビとして使え」ということだ。かつて後付けから始まったドリンクホルダーが新車装備として広まったように、今後の小型車のトレンドになりそうな気配。
Bluetoothで接続しスマートフォンなどの音源を再生できる。オーディオのディスプレイが日本語に対応していることには驚いた。
オーディオ操作パネルのキャップを外すとクレードルを装着する接合部が現れる。

〈キャンバストップ〉屋根を開ければトゥインゴはもっと楽しい

布を蛇腹状に巻き取りながら開く「キャンバストップ」がオープンエアを実現してドライブを楽しくする。操作は電動式で、開口部は前後690㎜ × 幅680㎜(実測)と広い。

オープン時は前方にディフレクターが登場し、車内への巻き込みを防ぐよう風を整えてくれる。
ルーフ開閉スイッチはルームミラーの上付近に用意される。走行中も開閉可能だが、操作時は押し続ける必要がある。
ルーフは布だが、かつてのキャンバストップとは違って内張りを重ねた構造で遮音性にも配慮。熱の出入りも防いでいる。

〈室内の収納スペース〉収納スペースも個性あふれている

数は多くないが、センターコンソール前方の脱着式ボックスやゴムバンド付きのドアポケットなど工夫を凝らした収納スペースが個性と実用性を与えている。
右ハンドルの輸入コンパクトカーとしては広いグローブボックスで、ボックスティッシュも収納可能。リッドの裏側もポケットになっている。
サンバイザーのカードホルダーはクリップ式。大きめのカードも挟める。
センターコンソール最前部には取り外し可能なボックスを用意。リッド付きで深さは13㎝ほど。
ボックスのリッドはトレーとして活用できる。大きめのスマホも置けるサイズだ。
フロントドアアームレストのハンドルはガラケーなどが置けるポケットとして使える。
ボックスを取り外すと2本分のドリンクホルダーと小物入れが登場する。必要に応じて使い分けよう。
フロントドアポケットはペットボトルホルダー+小物入れ。ペットボトルの代わりにボックスティッシュも固定可能。
ゴムバンドが特徴的なリヤドアポケット。バンドは折り畳みの傘を固定するのも便利だ。ドアハンドルには袋を吊り下げられる。
〈リモコンキー〉キーは鍵先を折り畳めるリトラクタブルタイプ。ドアロック/アンロックとテールゲートオープナーのボタンが組み込まれる。
〈バニティミラー〉すべてのグレードにおいて運転席と助手席両側のサンバイザー裏に組み込んでいる。フリップ開閉式のリッド付き。
〈助手席エアバッグキャンセラー〉助手席にチャイルドシートを装着するときは、展開した際にシートと干渉しないようエアバッグをオフにできる。
〈バックソナー〉後退時に障害物の接近を音で知らせるバックソナーを全車に標準採用。不注意による接触を防いでくれる。

〈ラゲッジルーム〉フロア面積はライバル以上

超小型車だけにラゲッジスペースは最小限か? という前提で接すれば、意外と広い空間と感じる。ライバルと比較すると、フィアット500よりは広く、フォルクスワーゲンup! に比べると空間容量では劣るが床面積は広い。

後席は左右5:5分割で格納可能。床下にエンジンを積む影響で床面は若干高め。しかし、後席格納時の床が完全フラットになるのだから実用的である。フォルクスワーゲンup! のようにテールゲートを垂直にすれば荷室空間を稼げるのだが、新型トゥインゴはあえてそれを選ばなかったようだ。
いわゆるトノボードと同様の形状だが、実際には薄くて剛性は低い「カバー」。荷物隠しとしては十分にこと足りるし、軽いことや取り外した際に場所をとらないなどメリットも多い。
後席格納時の奥行きは、運転席を身長167㎝の筆者のドライビングポジションに合わせた状態で1430㎜に達する。ふたりで出かけるなら、ひととおりのキャンプ道具を持ってアウトドアにも行けるだろう。
後席使用時の床の奥行きは645㎜とライバル以上(横幅は995~1030㎜)。日常生活で困ることはないだろうし、海外旅行に持っていくような大型スーツケースひとつに加えて機内持ち込みサイズのケースがふたつ積める。
後席の格納は背もたれ上部にあるストラップを引っ張ってロックを解除し、背もたれを前に倒す。後席側に回らなくても、荷室側から手を伸ばして操作できるのがいい。
兄貴分のカングーよろしく、なんと助手席の背もたれを前方に倒すことも可能。最大で2200㎜もの長尺物を収めることができる。NBAの選手でも車中泊が可能と聞けば、その長さがわかっていただけるだろうか?

後席を畳まずに空間を拡大できる「荷室拡大モード」を採用。背もたれを垂直に立てることで、背もたれ上部を通常時より10㎝ほど前に出して固定できる仕掛けだ。背もたれ上部からテールゲートまでの距離は通常350㎜ほどだが、この機能で約450㎜まで拡大。この状態でも後席に人が座れるが、姿勢が窮屈なので乗車は30分くらいにとどめたいところ。

荷室床下にエンジンを収めたことで気になるのはエンジンの排熱だが、カーペットの下に厚いウレタン層を備えて遮熱しているから心配はいらない。
テールゲートのリリースボタンはバンパーに組み込まれている。電磁ロック式だ。
開口部下端が地上760㎜と高いからテールゲートはコンパクトサイズ。車両後方への張り出しが少なく、狭い駐車場でも気軽にテールゲートを開け閉めできるのが便利だ。高めの床は、スーツケースなどを床から持ち上げて積む際には負担だが、バッグなど手持ちの荷物を置く際には屈まなくて済むので姿勢は楽である。

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