乗れば乗るほど離れがたくなる トゥインゴは極上のフツーグルマ!

「私がルノーを愛する理由」佐野弘宗さん(自動車ジャーナリスト)/ルノー・トゥインゴ

自動車ライターの佐野弘宗さんの愛車は、ルノー・トゥインゴ。なんと、4台連続してルノー車を購入しているのだという。数多くのニューモデルに触れる機会がある自動車評論のプロが、ルノーにどっぷりと浸っているのはなぜなのか? 佐野さんを引きつけるルノーの魔力とは? ご本人にたっぷりと語っていただこう。

REPORT●佐野弘宗(SANO Hiromune)
PHOTO●井上 誠(INOUE Makoto)

4台連続ルノーを購入。積極法でも消極法でも残るのはいつもルノーだった

このトゥインゴは、個人的に通算4台目のルノーとなります。もう少し詳しくいうと、10数年前に自身初めてのルノーとなる2代目メガーヌに出会って以来、購入したクルマはすべてルノー。今のところ4台連続でルノーを買ってしまっています。

ルノー トゥインゴ
2016年に日本上陸を果たした3代目のルノー・トゥインゴ。エンジンをリヤオーバーハングに搭載したRR(リヤエンジン・リヤドライブ)レイアウトの採用が特徴だ。

ただ、自分では「ルノー以外はクルマじゃない!」などと疑わないルノー信者のつもりはありません(笑)。毎回、ルノー以外も含めて比較検討するのですが、そこから好きなポイントを加点していく“積極法”でも、条件から遠いものを落としていく“消去法”でも、最後に残るのはいつもルノーなんです。

ルノー トゥインゴ
日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員も務める自動車ジャーナリストの佐野弘宗(さの・ひろむね)さん。モーターファン別冊・ニューモデル速報ではインプレッションや開発ストーリーを担当し、新車を時に厳しく、時に暖かく批評する。

ルノーを選んでしまう理由は自分でも分かっています。ひとつはトランスミッション。個人的なクルマ選びには「マニュアルトランスミッション(MT)であること」が優先条件のかなり上位にあって、今まで購入した4台のルノーもすべてMT車です。

ルノー トゥインゴ
トゥインゴのトランスミッションは6速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)のほか、5速MTも用意される。佐野さんが選んだのはもちろん5速MTだ。

ルノーの国内ラインナップといえば、3ペダルMT車の選択肢が、いつも複数用意されています。しかも、ルノーですからスーパーカーのような高額車ではなく、どれも手ごろな価格です。今の時代、これがいかに貴重なことかはMT好きはお分かりでしょう。もっとも、欧州ではいまだMTはめずらしい存在ではないので、これはルノーそのものの魅力というより、それを日本に輸入販売しているルノー・ジャポンの胆力によるところ大きいんだと思います。

ルノー トゥインゴ
ポップに仕立てられたインテリア。シンプルだがチープではない。こうした演出は昔からフランス車が上手い。

ただ、一応は普段からいろいろなクルマに触れる機会のある自動車ライターという立場でいうと、今のルノーは2ペダルATも最新のデュアルクラッチタイプですから、駆動効率や運転の楽しさで、MTになんら劣るところはありません。私がMTばかり乗っているのは、完全な趣味です。

とはいえ、いろいろ探せばいまだにMT車の選択肢はけっこうあります。なのに、やっぱりルノーに行き着いてしまうのは、誤解を恐れずにいえば、ルノーがとっても“フツー”のクルマだからです。

ルノー トゥインゴ
トゥインゴのデザインは、チーフデザイナーであるローレンス・ヴァン・デン・アッカーの指揮の下で行われた。リヤビューは往年の名車、サンクターボをほうふつさせる。

国産車が異常に強い日本市場でこそ“知る人ぞ知るオシャレブランド”的な存在のルノーですが、欧州では歴史的にベストセラートップ3以内に入る超メジャーブランドです。そんなルノーが少数派のマニアだけを相手にしたクセの強いクルマのはずはなく、実際のルノーは“極上のフツーグルマ”といいますか、そのフツーぶりがすごく心地いいんです。

ルノー トゥインゴ
「C」の形状に光るデイタイムランプは佐野さんのお気に入りのパートだ。トゥインゴでは少数派な、深みのあるレッド(ルージュ フラム)のボディカラーをチョイスしたのも佐野さんのこだわり。

とにかく乗りやすい。小回りの効くボディは毎日の生活で本当に便利

いま私が乗っているトゥインゴも、フランスの軽自動車みたいな存在で、良くも悪くもただのアシグルマにすぎません。なかでもMTに組み合わせられるのは、トゥインゴ用エンジンでも控えめな性能の1.0L自然吸気。日本の市街地や高速道路(制限速度は基本的に100km/hまで)なら性能に不足はありませんが、現代のクルマとしては、どちらかという遅いクルマの部類です。

ルノー トゥインゴ
リヤフェンダーに設けられたエアインテークがリヤエンジンの証。950kgの軽量ボディに搭載されるのは、最高出力73ps&最大トルク95Nmを発生する1.0L直列3気筒エンジンだ。

ただ、とにかく乗りやすい。ボディサイズが絶対的に小さいうえに、ほどよく高めなヒップポイントと、リヤエンジンのおかげで超絶に短いフロントフードもあって、車両感覚バツグン。取り回し性はすこぶる良好です。小さいくせに乗り心地はゆったりと柔らかく、刺激的(すぎてドッと疲れるよう)なスポーツカーに仕事で試乗した後など、トゥインゴに戻るとホッと「やっぱり自分にはこれだよなあ」と癒されます。

ルノー トゥインゴ
全長3645mm×全幅1650mm×全高1545mmというスリーサイズのトゥインゴ。いわゆるAセグメントと呼ばれる最小カテゴリーに属する。

あと、トゥインゴ自慢の小回り性能は、毎日の生活では本当に便利です。ステアリングをフルに切ってUターンしようものなら、前方の視界が横っ飛びして「その場で直角に曲がっている!?」と錯覚するほどです。

ルノー トゥインゴ
トゥインゴの最小回転半径は驚きの4.3m。軽自動車のベストセラー、ホンダN-BOXが4.5-4.7mであると聞けば、トゥインゴの小回り性能の高さが想像できるだろう。

トゥインゴに標準装備のインフォテイメントシステム「EASY LINK」は、スマホをつなげばそのままナビとしても使えます。実際、私もトゥインゴではオプションやアフター品のナビは使わず、もっぱらGoogleマップ派になりました。で、Googleマップをカーナビ代わりに使っている人ならお分かりのように、場合によっては、そのルート案内はかなりトリッキーな狭い道も駆使したりします。ですから、大きなクルマでGoogleマップを使うときは、あまりグーグルマップに頼りすぎないように注意が必要です。

ルノー トゥインゴ
7インチのタッチスクリーンはミラーリング機能により、USB接続したスマートフォンの画面を表示可能。佐野さんはナビとしてGoogleマップを愛用する。

それも小回り自慢のトゥインゴなら大丈夫。仕事がら土地勘のない場所にナビだよりで突撃することもしばしばありますが、トゥインゴ+Googleマップを使い始めて約2年、Googleマップのせいで立ち往生したことは一度もありません。まあ、提案されたルート全体から「いくらなんでも、ここはヤバい?」と、自己判断で別ルートを選んだことはありますが…。

ルーテシアR.S.も同時所有。共通するのは「普通の道」が楽しいこと

それはそうと、私はいま、このトゥインゴ以外に、自身2台目のルノーとして2010年に購入したルーテシア・ルノー・スポールも所有しています。それはコンパクトカーのボディに2.0L自然吸気(202ps)を搭載して、現代の目で見てもかなりの俊足でハンドリングもシャープです。ただ、そういうスポーツモデルでもサーキットでないと溜飲が下がらないような特殊な味つけではなく、普通の道でもフツーに楽しめるように仕立ててくれるところが、ルノーの美点です。

閑話休題。このトゥインゴは性能も控えめな実用グレードですが、運転がすこぶる楽しいという点だけは、ルノー・スポールに負けていません。

ルノー トゥインゴ
トゥインゴには傑出したスペックがあるわけではない。しかし、RRレイアウトの特性を活かして走れば、スポーツカーにも劣らない楽しさを感じられる。

額面どおりエンジンパワーは低いですが車重も軽いので、きっちり運転してあげれば、それなりに快活に走ります。しかし、MTのギヤ選びを間違えると、とたんに加速が鈍りますし、リヤエンジンなのでフロント荷重が軽く、カーブ手前でブレーキングなどでしっかり荷重移動してあげないと、パリッと曲がりません。かといって、あせってステアリングを切りすぎると、目に見えて失速してしまいます。

ドライバー
教科書通りにきっちりと操ろうとすれば、しっかりとそれに応えてくれるトゥインゴ。運転の基本を覚えるのにもピッタリの一台だ。

こういう滑らかで速やかな運転の基本はコンパクトカーもスーパーカーも同じですが、高性能なクルマの場合、一般道ではパワーで押しきれてしまいます。でも、シンプルな後輪駆動で、性能も控えめなトゥインゴは、自分の運転がうまくいったかどうかが、それこそ交差点や市街地でも如実に実感できるんです。だから、毎日の運転が楽しくて、そして飽きない。

ハッキリいって、欧州では超メジャーなルノーは、そのクルマづくりも表面上は優等生。とくにトゥインゴは性能もまったくフツーですが、日々使うほど、そして走行距離が伸びるほど離れがたくなる極上のフツーグルマなんです。

ルノー トゥインゴ
「極上のフツー」と愛車を評する佐野さん。普通だからこそ、毎日付き合っていても飽きることなく愛し続けられるのだ。

このままではトゥインゴを買い替えることになったとしても、次もやっぱりルノーが第一候補になりそうな気がします。それでも、私はけっしてルノー信者ではない…と自分では思っていますが、周囲はそう見てくれないのが私の悩みです(笑)。

ルノー・ジャポン公式ホームページ https://www.renault.jp/

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