周囲のクルマや歩行者などに自らの進行方向を知らせる装置としてウインカーは欠かせないものだ。その操作を行うためのウインカーレバーはクルマにとって必須である。ちなみにレバーである必要はなくて、ボタンでも構わない。たとえばいすゞのピアッツァはステアリング右側のメータークラスターに上下させるタイプのスイッチが付いていたし、最近はフェラーリやランボルギーニといったスーパーカーはステアリング上に付いていたりもする。
とはいえ、特殊な例を除いて、レバーを上下に動かすことで点滅させることができて、ステアリングを回して元に戻すと中のツメが引っかかって自動でオフになるのが基本というか常識。自動車雑学の定番ネタで、輸入車は左側、国産車は右側という差はあるものの、操作パターン自体に違いはない。
実はこの常識が最近崩れてきている。しかも、新基準が登場して、各社&各車ともに同じならいいのだが、実際はバラバラで、クルマを乗り換えると面食らうことがあったりするからやっかいだ。まず大きなものとしてはウインカーレバーを操作した際に昔のようにそのままなの位置ではなく、センターに戻るものがある。つまり、レバーの位置はいつも同じというわけだ。
その派生型が、車線変更のときに少しだけ出したい場合、チョンと軽くレバーを押すと、数回点滅してそのまま自動で消えるというもの。ワンタッチウインカーと呼ばれるもので、3回が世界的に基本となる。また、点灯を続けるモードで車線変更したとき、そのまま点きっぱなしということがあるが、手動で戻すというのが従来のタイプなのに対して、最近では同じ方向に押すと消えるタイプも増えてきた。
ここまでですでにけっこう複雑な感じだが、便利で人気なのは輸入車で数多く採用されているワンタッチウインカーだろう。最近では軽自動車にも付いている一方、これとてもすべてのメーカーが採用しているわけでないのがネックだ。
実はこの点、トヨタはかなり消極的なメーカーである。グローバルモデルで少しずつ採用例が増えているが、採用してこなかった理由はあって、3回で消えると、法律で定められている「車線変更の3秒前にウインカーを出す」に合致しないからとされる。そのため、ヤリスなど最近採用し始めたモデルのワンタッチウインカーは、長めなのが特徴だ。ちなみに混乱するのがガッチリタッグを組むダイハツは積極的に採用しているメーカーであること。もちろん、ライズやルーミーなどは3回タイプのワンタッチウインカーで、グループ内で統一されていないのも面白いところではある。
さらに、ウインカーを戻す際にも同じ方向にもう一度押するのではなく、昔ながらに反対方向に操作するタイプもある。このタイプでも常に真ん中にレバーがあるタイプの場合、勢いあまって反対方向に点滅させてしまったりすることもあって、かなり混乱したりする。最近では日産のアリアのウインカーレバーは慣れないとイレギュラーな動きになりやすくて、最新モデルだからと言ってスッキリとした操作でないというのはなんとも胸中複雑というか、落とし所が難しいポイントなのだろう。
なぜここまでウインカーの操作がバラバラなのかというと、理由のひとつが安全装備の進化で、機能に対してウインカーの操作をどう合わせるかで違いが出ている。たとえばウインカーを出すと車両側が周囲を確認して追い越しをしたり、車線変更をする機能の場合、上げたら上げたままという従来のタイプだとレバーを戻すというアクションが必要になってしまう。つねに真ん中にあるタイプでは、ただの電気的なスイッチなので車載コンピュータからの指令で点けたり消したりできるわけだ。このような安全装備がない場合は、別の方式でもよかったりするわけで、これも混在につながっている理由だろう。
従来の操作や表示などは国際規格のISOなどで定められていたが、最近では機能が豊富だし、増える速度も速くて追いつかない状態だったりする(日本車が右ウインカーレバーなのはISOを無視!)。ウインカーレバーひとつとってもバラバラなのは、時代の進化が反映されているからとはいえ、何げなく使っているウインカーも最新技術に関係しているというのは意外なところだ。