往年のフランス車を思わせる滑らかで豊かなサスストローク、濃厚な接地感。【シビックe:HEV試乗記】

新型シビックの大本命といえるe:HEVに試乗した。昨年登場したシビック1.5Lターボ自体が非常に評価が高かった。ところがe:HEVは、パワー感、乗り心地、滑らかさ、あらゆる側面で、ガソリン車とは格段の違いを見せつけたのである。
REPORT:佐野弘宗 PHOTO:平野 陽

最大41%の熱効率を誇る新開発2.0L直噴エンジン

新しいシビックに搭載されるe:HEVは、実質的な前身であるインサイトのそれに対して、2モーター内蔵のハイブリッドユニット本体(も大幅に改良されているが)以外をすべて新開発した。モーター出力を引き上げて、バッテリーはセル数を増やしながらも小型軽量化。さらに、エンジンも新開発。世界最高レベルの熱効率(最大41%)を豪語する2.0リッター直噴ガソリンである。

新開発の2.0L直噴エンジンは最大熱効率41%。加えて、2モーター内臓電気式CVTのモーター出力+39kW、パワーコントロールユニットの出力密度+12%、インテリジェントパワーユニットのエネルギー密度+46%(いずれもインサイト比)と、パワートレーンは世代交代と言えるほどの進化を果たす。

シビックといえばホンダ屈指のグローバル商品であり、台数的には北米や中国が圧倒的なメイン市場となる。しかし、新しい11代目シビックはまず、欧州での走り込みを含めて欧州向けの基本性能を仕上げた後に、各市場のニーズや環境に合わせて最適化する……という特徴的な開発プロセスをとっている。その理由はクルマの走行性能に対して、もっとも要求が厳しいのが欧州だからだ。

さらに、新しいシビックe:HEVは、欧州で初めて本格販売されるシビックハイブリッドでもある。それどころか、欧州は排ガス規制が世界で最も厳しい市場でもあり、欧州向けの11代目シビックはe:HEV一本なのだ。

欧州で受け入れられるハイブリッドに

ガソリン上級グレード「EX」との見た目の差別化は非常に微細でパッと見ではわからない。e:HEVは、グリルとサイドウインドウモールをグロスブラック化。前後の「H」マークがブルーに。他は、リヤのe:HEVエンブレムと、リヤバンパーガーニッシュ程度だ。

高速性能が重視される欧州では、パワフルでリニアな動力性能が求められる。しかし、回生ができない高速連続走行ではパワーが鈍りがちで、モーターとエンジンが複雑に絡み合うがゆえにアクセル操作と加速曲線の調律がむずかしいハイブリッドは、これまで基本的に好まれなかった。そんな欧州で受け入れられるハイブリッドを……というのがシビックe:HEVの開発テーマだったという。

ドライブモードはECO、NORMAL、SPORTに加えて、ホンダ初の「INDIVIDUAL」を追加した4モードに。パワートレーンやパワステ、メーカー加飾表現など、好みで設定を組み合わせられる。
e:HEV専用のフルグラフィックメーター。速度計の左側にはホンダ車初、瞬間認知性を高めた「パワーメーター」を配置。目盛は「25」〜「100」と、一見馴染みのない数値が並ぶ。パワーの出具合を「%」で示す。

今回のメディア向け試乗会で初めて乗ったシビックe:HEVは。印象的なほど滑らかでパワフルだった。試乗ルートにもなった中央自動車道下り線の長坂IC〜小淵沢IC間は屈指の急勾配だが、シビックe:HEVは力強くグイグイ加速していく。基本的に日本仕様に酷似したスペックの欧州仕様のカタログに掲載される最高速度は180km/h。

欧州で公表される動力性能は、基本的に常用できる数値であり、長坂〜小淵沢間で披露したあのパンチ力なら、実際に160〜170km/hはあっという間だろう。それくらいパワフルだ。また、e:HEVはこれまでもリアルな交通環境でブレーキペダルを操作する頻度が少ないリニアな加減速が売りだったが、その美点はシビックでさらに磨きがかかった印象である。

また、ドライバーとクルマの一体感を醸成するには耳からの情報も重要で、シビックe:HEVはハイブリッドにもかかわらず、エンジン音にはかなりこだわったとか。この2.0リッター直噴エンジンはもともと快音を響かせるタイプだが、に加えてシビックe:HEVはスピーカーを使った「アクティブノイズコントロール(ANC)」と「アクティブサウンドコントロール(ASC)」を備えている。

1.5Lより100kg重い車重や低重心化も奏功

ステアリングやシートから「接地感」が濃厚に伝わってくる。
リヤシート下のバッテリーセルの薄型化(低ハイトセル採用)により、従来モデル以上のクッション厚を確保している。

まず、ANCは室内騒音をマイクで検出して、それと逆位相の音をスピーカーで出して騒音を打ち消す。いわれてみればシビックe:HEVはCセグメント水準を超える静かなクルマでもある。そしてドライブモードをスポーツモードにすると、そのうえにASCがエンジンサウンドをより引き立てる音を加える。実際、フル加速時のちょっとカン高いサウンドに、は思わず“ホンダミュージック”などという往年の表現を思い出してしまった。

ただ、シビックe:HEVの本当のハイライトは乗り心地とハンドリングだと思う。どらちかというと引き締まり系のフットワークの1.5リッターターボとは対照的に、わずかにボディを上下させながら凹凸を柔らかく吸収する所作は、誤解を恐れずにいえば往年のフランス車を思わせる。

さらに、その滑らかで豊かなサスストロークが、ステアリングやシートから伝わる接地感をより濃厚にしてくれてもいる。上屋の動きは1.5リッターターボより大きいのだが、しっかりとロールしつつジワッと路面に吸いつく感覚が強い。しかも、リヤもしっかりとロールする旋回姿勢は、どことなく後輪駆動を彷彿させるくらいだ。

ガソリン「EX」とは、235/40ZR18のタイヤサイズもアルミホイールもカラーも含めて共通だが、e:HEVのみ、専用開発のミシュランのPILOT SPORT4を履く。

開発陣によると、e:HEVの乗り心地や接地感だけを、ことさら高める意図はないという。1.5リッターターボより約100kg重い車重、バッテリーを後席下に搭載することでリヤまわりが特に低重心化したこと、そのバッテリーを守るボディ構造によって必然的に引き上げられたリヤ周辺の剛性、

そしてe:HEV専用開発のミシュラン・パイロットスポーツ4タイヤ……といった要素が「すべてがうまく融合して、結果的に予想以上の仕上がりになりました」というのが開発陣の見解だ。

e:HEVの本体価格は、装備レベルが同等の1.5リッターターボのEXグレードより約40万円高。結果的に400万円近くなった金額はこのクラスとしてはけっして安くないが、少なくともその走り味は、さらに上級のアコードをうかがうくらいである。……と思ったら、インサイトの生産終了に続いて、アコードの国内販売も終了することが判明した……。

ホンダ シビック e:HEV

全長×全幅×全高 4550mm×1800mm×1415mm
ホイールベース 2735mm
最小回転半径 5.7m
車両重量 1460kg
駆動方式 前輪駆動
サスペンション F:マクファーソン式 R:マルチリンク式
タイヤ 235/40ZR18  

エンジンタイプ 直列4気筒DOHC
エンジン型式 LFC
総排気量 1993cc
内径×行程 81.0mm×96.7mm
トランスミッション 電気式無段変速機
最高出力 104kW(141ps)/6000rpm
最大トルク 182Nm(18.6kgm)/4500rpm

電動機型式 H4(交流同期電動機)
定格出力 20kW
最高出力 135kW(184ps)/5000-6000rpm
最大トルク 315Nm(32.1kgm)/0-2000rpm

燃費消費率(WLTC) 24.2km/l

価格 3,940,200円

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佐野弘宗