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贅を尽くした高級クーペ。ホンダ レジェンド・クーペ(1991年)
38号のヘリテージギャラリーは2代目レジェンド・クーペです。レジェンドは1985年にホンダがラグジュアリーカー市場に挑戦するべく発売したフラッグシップですが、当初からクーペボディが設定されていました。
1991年に登場したこの2代目はバブル真っ盛りに企画・開発されたクルマで、初代と同様セダンに加えてクーペも用意。全長4880mm、全幅1810mmという堂々たるボディに3.2ℓのV6を搭載した贅沢なクルマでした。
いまでは信じられないですが、当時は高級クーペが憧れのクルマとしてとても人気があったのです。トヨタはソアラ、日産は高級路線のレパードと本格スポーツのR32GT-Rを持っていましたが、この2大メーカーだけでなく、マツダやスバル、そしてホンダといった中堅(当時)メーカーまでもがこぞって高級クーペを発売したのですから、みんな本当に元気とお金がありました。
マツダ ユーノスコスモ(1990年)
マツダが1990年に発売したユーノス コスモは、曲面を多用した優雅なフォルムのロングノーズクーペ。そのフロントには初の3ローターの20Bエンジンが搭載されていました。とにかくスムーズで速かったですが、最大の欠点は燃費。市街地ではリッター2~3kmと言われ、当時まだ若造だった私もあまりの燃費の悪さに驚いた記憶があります。
スバル アルシオーネSVX(1991年)
スバルは2代目レジェンド・クーペと同年の1991年にアルシオーネSVXを発売します。
このクルマの魅力はまずその未来的なデザイン。ジウジアーロの手による外観は大きなグラスエリアを持ち、ミッドフレームによってサイドウインドウは一部だけが開閉するという斬新なものでした。ただ、外観の美しさに比べてインテリアのデザインが陳腐だったことと、リヤタイヤが奥に引っ込みすぎてせっかくのブリスターフェンダーがなんとも中途半端に見えたことが残念でしたが。
エンジンは3.3ℓの水平対向6気筒を専用開発。これをフルタイムAWDで駆動するという、スバルの技術力展示会のようなクルマでした。じつは当時、父親がSVXに乗っていたので私もずいぶん乗り回しましたが、とにかくスムーズでトルキーなエンジンと、雨だろうが雪だろうがまるで気にしないスタビリティ、そして当時の日本車のレベルを超えた直進安定性は本当に素晴らしいものでした。
ホンダ、マツダ、スバルの高級クーペ3台は、商売的にはいずれも失敗に終わります。レジェンドだけは次期モデルが発売されましたが、クーペボディはこの2代目が最後となりました。バブルが崩壊してしまったこと、また高級車市場で勝負するにはやはりブランド力が足りなかったのが要因でしょう。
ところで、ユーノスコスモとSVXはいまでもマニアの間で人気がありますが、レジェンドクーペはそれほどでもないようです。やはりすべてが専用設計という“別世界感”の2台と比べると、ちょっとキャラが弱かったでしょうか……。
しかし、この時代のクルマを見ると、本当にワクワクしますね。これにて番外編は終了。本日公開の本編DeAGOSTINI 週刊 Honda NSX 組み立て記録】もぜひご覧ください。
【ホンダ レジェンド・クーペ】 全長×全幅×全高:4880×1810×1370mm ホイールベース:2830mm 車両重量:1570kg(ホンダ・ナビゲーションシステム装着車1590kg) 車室内全長×全幅×全高:1790×1460×1045mm 最低地上高:155mm 最小回転半径:5.2m 制動停止距離:初速50km/h時 14.5m エンジン 形式:水冷V型6気筒縦置 型式:C32A 排気量:3206cc ボア×ストローク:90.0×84.0 最高出力:215ps/5500rpm 最大トルク:299Nm/4500rpm 燃料:無鉛プレミアムガソリン 燃料タンク:68ℓ トランミッション:7ポジション4速電子制御オートマチック 変速機操作方式:フロア・チェンジ式 変速比 1速:2.476 2速:1.451 3速:0.973 4速:0.630 後退:1.809 減速比 第1次:1.394 第2次:3.133 ブレーキ:F|油圧式ベンチレーテッドディスク/R|油圧式ディスク(ドラム式駐車ブレーキ内蔵) 懸架方式(独立懸架):ダブルウイッシュボーン スタピライザー形式:トーション・バー 乗車定員:5名 タイヤ:FR 205/65 R15 希望小売価格(税抜):455万円(東京)~460万7000円(札幌)