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半導体=P型はポジティブ N型はネガティブ
前回は半導体について述べた。ここでは、シリコンやゲルマニウムの材料に不純物を含まないものの場合であった。これを真性半導体というが、実用的にはこれに不純物を入れる。原子番号が1つ小さい元素を少し混ぜると、半導体原子より電子数が少ないため、価電子帯がすべて電子で埋まるところが、穴が開いたようになる。これは前回述べたようにホールであるが、ホールは価電子帯の中を自由に移動できるようになる。これは、あたかも電流が流れたことと同じことであり、別の言い方をすれば、ホールは電流を流すキャリアとも呼ばれる。これをポジティブという意味でP型半導体という。半導体のバンド理論ではホールは、位置エネルギー的には半導体の価電子帯より少し上に位置する。
また原子番号が1つ大きい元素を混ぜると、半導体原子より電子数が多いため、この電子は伝導体に存在することになり、これも電流を流すキャリアである電子となって、電流が流れやすくなる。これはネガティブという意味でN型半導体という。この時、キャリアとなる電子は、位置エネルギー的には半導体の伝導帯より少し下に位置する。
さらに半導体を作る材料はシリコンやゲルマニウムに限らず、金属と絶縁体を化合させたものがある。これらは化合物半導体と呼ばれる。例えば、ガリウム(Ga)とヒ素(As)を合わせたガリウムヒ素(GaAs)半導体やガリウムと窒素(N)を混ぜた窒化ガリウム(GaN)半導体がある。
ダイオードのすごさとは整流と発光そして発電
真性半導体でもN型、P型でも、これら単体では何も起こらない。ところがN型とP型の2種類を貼り合わせることによって大変なことが起こる。これがダイオードである。なおこの接合面のことをジャンクションと呼ぶ。P型とN型の2つの半導体は接合面でそれぞれのホールと電子が合体してキャリアが減り、原子内の電荷によって電圧差、すなわち電界が生じる。この電界によって、P型の方がN型に比べて伝導帯の位置が高くなる。
すると、まず起きることはダイオードに電流を流すと、P型側にプラスの電圧を掛けた時には電流は流れるが、その逆方向には流れない。これがダイオードの整流作用である。ダイオードがまっ先に応用されたのはこの整流作用を利用することだった。その利用法とは交流を直流に変えることにある。我々が家で使う電気は100Vの交流である。かつてエジソンとテスラの間で遠くに送る電力は直流か交流かの争いがあって、結局は交流になったということは、第11回で述べている。その理由は、交流はトランスを使って自由に電圧を変えられることにあった。実際に我々が使う電気は一旦直流に直して利用されることが多い。そのためにダイオードを通すと交流が直流になる。
もう1つの使い方は発光作用である。これはダイオードに直流の電流を流すとジャンクションのところから光が出る。これが発光ダイオード(LED)である。LEDでは出せる光の色が半導体の材質で異なる。ジャンクションでのバンドギャップの差が大きければ青い光が出るし、小さければ赤や赤外線が出る。赤のLEDは1962年にアメリカのニック・ホロニアックにより発明された。その材料はアルミニウム、インジウム、ガリウム、リンの4つの化合物からなっている。次いで1972年にアメリカのジョージ・クラフォードが黄緑色のLEDを発明した。その後、青の発光ダイオードへの挑戦が続けられたが、1986年になって当時の名古屋大学の赤碕勇と天野浩によって材料となる窒化ガリウム(GaN)の結晶化が実現し、これを用いて、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の中村修二が青色発光ダイオードを実現した。この功績により、3人は2014年のノーベル物理学賞を受賞した。
青色発光ダイオードの光は蛍光板に当てると白い光を出す。しかも効率が非常に高い。このため、照明の光源は、LEDに変わりつつあるが、この3人の功績による。
ダイオードの3つ目の重要な用途は発電作用である。これはジャンクションに光を当てると電力エネルギーに変わり、電流が流れるものである。発電作用を用いる最も重要な応用は太陽光発電である。この太陽光発電こそが温暖化を抜本的に解決し、世界中の人々が平等に十分に豊かなエネルギーが使えるようになり、その結果として、生活の質が上がるという地球の将来にとって好循環をもたらすものに成長すると予測している。
本文の最終的な結論の1つは太陽光発電をいかに世界中に広められるかということである。その結論に導くために、何回かに亘って前提となる話を続けたい。