EV初心者が3泊4日、1150kmの旅をして気づいたこと。こんなことで困りました。その1

電気自動車で旅行すると困ることはあるのか?それともガソリン車と変わらないのか?そんな疑問を解決するために、EV初心者のMotor-Fan.jp編集部員が3泊4日、東京〜奈良1150kmの旅に出て感じたことをお伝えします。旅の目的地は奈良の明日香村にある「石舞台古墳」です。

まずは、250km先のPAの急速充電器を目指して出発!

電気自動車で長距離を走るのは初めてのEV初心者が「電気自動車で旅行すると困ることはあるのか?」を確かめるために、3泊4日、東京〜奈良1150kmの旅で感じたことをお伝えします。

今回、運転するのは日産アリア B6(FWD)です。最高出力218ps/5950-13000rpm 最大トルク300Nm/0-4392rpmを発揮し、リチウムイオン電池容量は66kWh、一充電走行距離はWLTCモードで470kmと長距離ドライブには申し分ないスペックです。

日産アリアは振動やロードノイズも少なく、高速道路の走行はとにかく快適だった。

まずは1日目、東京から京都を目指します。
朝に東京インターから東名高速に乗ります。この時点でメーターディスプレイには、電池残量は90%で345kmの走行可能との表示。最初の充電予定スポットは、250km先の新東名「長篠設楽原PA」です。

東京を出発する時は345km走行可能との表示。このまま行けば予定の充電スポットまで余裕で到着します。

なぜ、長篠設楽原PAを目指したかというと、90kWの急速充電器があるからです。しかも2台同時に使える仕様の充電器なので、もし先客がいても順番待ちをする確率が低そうだからです。(ただし、2台で使用する場合は、90kWをシェアすることになります。)
一般的には高速道路のSA・PAにある充電器は40〜50kWのものが多いですが、90kWなら同じ時間で1.8倍も多く充電することができます。ただ、設置されているポイントは少なく、東名〜新東名だと海老名(上り/下り)SAと遠州森町(上り)/長篠設楽原PA(下り)くらいというレアな存在です。

今回の旅の行程です。まず1日目は東京から京都までの移動。

高速道路でのアリアの乗り心地はとにかく快適。

東名〜新東名を順調に走るアリアの乗り心地は、とにかく静か。エンジン音がしないのは当たり前ですが、振動やロードノイズも少なくて快適です。また、アクセルを踏んだ瞬間にタイムラグなくスムーズに加速するのもEVならではの美点。追い越し機能付きのプロパイロットも優秀で、リラックスしたロングドライブが可能です。ただ、インパネがオシャレすぎて指紋が目立つのが気になる点でした。

EVはガソリン車と違い、高速道路では電費が悪くなります。東京の一般道では平均電費が5.5km/kWhでしたが、120km/h区間もある新東名を走ると4.7km/kWhまで下がりました。345kmの走行可能距離に対して、250km先の長篠設楽原PAを目指していたので、電池残量は全然余裕かと思いきや、着いた時には電池残量12%で走行可能距離は41kmとなっていて、精神的に少しドキドキする状態でのピットインとなりました。

90kW充電器を独り占めだったので、最大効率で充電することができました。充電器を保護するための岩が死角にあって、けっこう怖い。

90kW充電器の極太ケーブルが重すぎる!

PAエリアの充電器は下調べ情報通りの仕様でした。早速充電を開始したのですが、90kWの充電ケーブルはビックリするぐらい重いです。高出力の充電に耐えるケーブルは極太で、コネクターもガッシリした重量感です。これは、女性やお年寄りには厳しい重さです。そして、ケーブルが若干短いのでベターな位置に駐車しないとケーブルの取り回しに苦労します。
もし、強い雨のなかこの極太ケーブルと格闘するとなると、それだけでEV嫌いになってしまうかもしれません。

90kW充電器のケーブルはビックリするほど重い。

急速充電器の制限時間は30分です。ちょうど良い頃合いなので昼食を取りながら充電完了を待つことに。「これなら充電時間も無駄なく過ごせそうだなー」と思っていたのですが、30分って食事をするのには意外と短い時間でした。食事中に充電完了の時刻が来てしまったため、食事を中断してクルマのところに戻ることに。30分で71%まで回復していました。幸いに順番待ちしているクルマもいなかったので、もう20分だけ充電を続けて食事を急ぐことにしました。

おかげで、電池残量は97%で336kmの走行可能の状態で長篠設楽原PAを出発することができました。東京を出発した時に比べ、平均電費が悪くなっているので、電池残量が多くても走行可能距離は短くなっています。

長篠設楽原PAからの風景。織田・徳川連合軍と武田軍との合戦があった古戦場ですが、現在はのんびりした時間が流れています。

長篠設楽原PAから京都までは190km。快適なドライブを続けます。
途中の琵琶湖に近い草津PAには90kW充電器があるので充電することにしました。本当は宿泊先の京都市内で夜のうちに充電できたらな。と考えていたのですが、市内には夜間に充電できる駐車場がほとんどありませんでした。また京都に限らず、市街地ではPAのような高出力の急速充電器は、ほとんどない状態なので、できるだけPAで充電してしまおう。という考えです。30分の充電で42%/144kmから90%/307kmまで回復しました。
こでれ2日目は充電しなくても過ごせそうです。
この時点で、420kmを走行し、1.2時間の充電時間を要しているので、ここはEVの大きなマイナスポイントと感じる部分でした。

この駐車枠で充電の順番を待つようです。前の車が進んだら自分も車を進めないといけないので、30分ごとに車を動かしに戻ってこないといけないのは面倒だ…。

まとめ:困ったことは何だったのか?

充電スポットの数が足りない。
高速のPAに各1台分ぐらいしか充電スポットがないので、先客がいたら待ち時間が発生してしまうのは困った問題です。また、現在のEV普及率でPAの充電スポットの数がギリギリ足りているような印象なので、今後EVの普及が進んだら充電器スポットの混雑は激化するのではないかと思います。

急速充電の30分はリミットは中途半端。
30分間は食事をするのには短いし、お茶をするのには長すぎる。という中途半端な時間でした。

◆90kW充電器のケーブルが重すぎる。
女性やお年寄りには厳しいのでは?と思うぐらいの重さです。また、ケーブルが若干短めなので、ちょうどいい位置に駐車しないとケーブルの取り回しに苦労します。

◆計画的な旅行でないと厳しい。
ガソリン車のように「なくなったら入れればいい」という考えではなく、旅の残りの行程を考えて、急速充電できるところで効率よく充電しておく。という考え方でないとEVでの旅行は難しいと感じました。ガソリンスタンドに比べて充電スポットはまだまだ少ないので、行き当たりバッタリの旅だと電欠を食らうかもしれません。

◆充電時間を考慮した行動が必須。
今回は420kmを走行して、充電時間に1.2時間を要しました。ギリギリを攻めれば40分ぐらいの充電で大丈夫だったのかもしれませんが、それでもガソリン車に比べ大きな負担であることは確かです。

EVが可愛くて、ついついお腹いっぱい電気を与えたくなってしまう。

EV車はガソリン車のように「道具として使い倒す」というより、子育てのように「お世話をしてあげる」という印象の乗り物でした。
ユーザーがクルマのことを考えてあげて、充電スポットを探して、計画的に充電して、充電中は待ってあげて。というように、小さい子供に食事をさせる親の気分です。ついついお腹いっぱい電気を与えたくなってしまいます。
子育ても、子供を育てながら親も育っていくという部分もあるので、EVに日頃から乗っていれば、慣れてしまって問題ないのかなと思いました。むしろ、それを楽しめるタイプの人がEVに向いているのでしょうね。

次回に続きます。

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著者プロフィール

土屋直軌 近影

土屋直軌

1982年生まれ、静岡県出身。都内の美術大学を卒業後、なんとなくモータースポーツ関連のイベント制作会社…