EQB 「GLBのBEV版」 メルセデスのEQシリーズ第3弾は走りも航続距離もGood!

メルセデスEQB 350 4MATIC
メルセデス・ベンツ日本は7月14日、EQC、EQAに次ぐ電気自動車(EV)の第3弾となるEQBを発表・発売した。EQAがガソリンエンジンやディーゼルエンジンを搭載するGLAのEV版なのと同様、EQBもGLB(ガソリンとディーゼルを設定)のEV版だ。顔つきはEQシリーズに共通のブラックグリルを採用しており、空気抵抗を低減するために開口部を最小限に留めたプレーンな処理となっている。床下も同様で、フロントからリヤまでフラットに処理しているのが特徴だ。
TEX & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:Motor-Fan

一充電航続距離は、EQB 250が520km、EQB 350 4MATICは468km

EQB350 4MATIC 車両本体価格:車両本体価格:870万円 メタリックペイント 7万2000円

EQB/GLBもEQA/GLAと同様にコンパクトSUVに分類されるが、スタイリッシュなルックスを持つEQA/GLAとは対照的で、スクエアなフォルムを持つ本格オフローダー風。最大の違いは3列目シートを備えることで、乗車定員は7名(2+3+2)だ。全長×全幅×全高は4685mm×1835mm×1705mmだから、それほどビッグというわけではない。にもかかわらず3列シートを備えているのがウリで(3列目は身長165cmまでに対応)、実際、GLAよりもGLBのほうが数は出ているという。多彩なシートアレンジ(例えば、2列使用に割り切れば、2列目の足元を広く使うこともできるし、3列目を折りたためば荷室を広く使うこともできる)が可能な点もGLBをベースとするEQBの魅力だ。

EQB 250 全長×全幅×全高:4685mm×1835mm×1705mm ホイールベース:2830mm
トレッド:F1585mm/R1580mm 最小回転半径:5.5m 最低地上高:205mm
車両重量:2100kg 前軸軸重1070kg/後軸軸重1030kg

EQBにはフロントにEM0026型の交流同期モーターを搭載して前輪を駆動するEQB 250(メーカー希望小売価格788万円)と、フロントにEM0021型の交流誘導モーターを搭載し、リヤにEM0022型の交流同期モーターを搭載するEQB 350 4MATIC(メーカー希望小売価格870万円)の設定がある。EQB 250は最高出力が140kW(190ps)、最大トルクは385Nm、EQB 350 4MATICの最高出力は215kW(292ps)で、最大トルクは520Nmだ。

EQB250
EQB350 4MATIC

リチウムイオンバッテリーの容量はどちらも66.5kWhで、電源電圧は420V。バッテリーの底面にクーラントプレートを配置することで、冷却およびウォームアップを行なう仕組みだ。WLTCモードによる一充電航続距離は、EQB 250が520km、EQB 350 4MATICは468kmとなっている。

交流同期モーターか交流誘導モーターか

EQB350 4MATICのインテリ
EQB350 4MATICのインテリア
3列目シート
2列目シート

ところで、先に発売されたEQA 250はフロントにEM0021型の交流誘導モーターを搭載するのに対し、EQB 250は前述したように新開発のEM0026型交流同期モーターを搭載する。メルセデス・ベンツ日本の説明によると電費、すなわち航続距離のためで、同じ66.5kWhのバッテリー容量を持つEQA 250の一充電航続距離が410kmなのに対し、EQB 250は520kmと大きな違いを生んでいる。

大まかに分類すると、交流同期モーターは中心部にあるローター(回転子)に永久磁石を埋め込むタイプ。外側にあるステーター(固定子)に設けた電磁石に電流を流すことで回転力を作りだす。いっぽう、ローターに永久磁石を使わず、ステーターと同様に電磁石を使って制御するのが交流誘導(非同期)モーターだ。それぞれに特徴があり、どちらかいっぽうが決定的に優れているわけではない。採用例が多いのは永久磁石を使った交流同期モーターで、EQAやEQBの例のように、交流誘導モーターの適用例が増えている状況だ。

一般論でいうと、永久磁石を用いる交流同期モーターは回転上昇に比例する形で逆起電圧と呼ばれる現象が強くなり、それを抑えるための制御(弱め界磁)が必要で、この制御のためにエネルギーを使うため効率が落ちてしまう。いっぽう、永久磁石を使わない交流誘導モーターは、電流を流していないときには交流同期モーターほどの損失は発生しない(逆にいうと、ローターにも電流を流すことから、電流を流しているときの効率は一般的に交流同期モーターに劣る)。

EQB250:F/EM0026型交流同期モーター
EQB350 4MATIC:F/EM0021型交流誘導モーター
                             R/EM0022型交流同期モーター

試乗車のEQB250はオプションの235/45R20サイズを履く
タイヤはピレリ P-ZERO
EQB350 4MATICはブリヂストン TURANZA(F&R235/55R18)を履いていた。
EQB250、350 4MATICともに床下はフラット。

EQB250はFWD、EQB350 4MATICは基本、後輪駆動

EQB250はFモーター1基。当然FWD(前輪駆動)だ。
EQB350 4MATICはRWD(後輪駆動)がベース。状況に応じて前輪も駆動する。

フロントにのみモーターを搭載するEQB 250が交流同期モーターを採用したのに対し、フロントとリヤにモーターを搭載するEQB 350 4MATICがフロントに交流誘導モーターを採用したのは、リヤのモーターをメインに使うためだ。センターディスプレイに「エネルギーフロー」を呼び出して(「ハイ、メルセデス」を合言葉にクルマとの対話で操作できるMBUXでも呼び出せる)エネルギーの流れを確かめてみると、確かに、発進時はリヤのモーターが駆動しているのがわかる。

EQシリーズ第3弾だけあって、洗練度は大幅にアップしている。

EQB 250は常時前輪駆動だが、EQB 350 4MATICは基本、後輪駆動だ。発進時はリヤに荷重が移動するので、駆動力を効率良く路面に伝える意味で理に適った制御だ。少し強めにアクセルペダルを踏み込むとフロントモーターも駆動しはじめ、四輪駆動になる。フロントとリヤを常時駆動するのではなく、必要なときだけフロントのモーターを駆動するので、使っていないけど回転はしているときの電気的な引きずりが少ない交流誘導モーターを選択したということだろう。EQA 250(誘導)とEQB 250(同期)による航続距離の違いは原理の違いによる効率の差に加え、制御の進化分だろうか。


短時間の試乗ではあったが、フロントモーターのみのEQB 250でも物足りなさは一切感じなかった。思ったとおりの力が出ずにストレスが溜まるというようなシーンは一切なかった。コンパクトとはいえ相応のボリュームがあり、重量もある(車重は2100kgだ)ことを考えると、想像以上にキビキビ走る印象だ。前に向かって良く走るだけでなく、操舵した際の身のこなしが軽いのにも感心した。シャキッとした動きはSUVらしからぬもので、本格オフローダー的なルックスとは裏腹に(?)、走りはスポーティだ。

そのスポーティな印象はEQB 350 4MATICではさらに強まる。価格差もそれありにあるが、EQB 250を選択するか、EQB 350 4MATICを選択するかは、航続距離をとるか、スポーツカーも顔負けの走りをとるかということになるだろう。

駆動モーターの発電抵抗を利用した回生ブレーキ力は、ステアリング裏のパドルで調節できる。デフォルトは「D」で、なかなか強めの減速Gを発生する印象。左のパドルを引くと「D-」になり、回生レベルは強くなる。反対に、右のパドルを引くと「D+」になって回生レベルは弱くなる。つまり、回生レベルは3段階だ。

おすすめは「D Auto」だ。左右どちらかのパドルを長引きすると、このモードに入る(回生レベルはメーターの表示で確認できる)。前走車との車間距離(安全運転支援システムのステレオカメラやレーダーを利用)や上り・下りの勾配に応じて(マップデータを使用)回生ブレーキの強弱を自動的に調整する。先行車がいないか遠く離れている状況ではコースティング(回生ブレーキなし)となり、先行車がいるときは適切な回生ブレーキをかけて減速する。使ってみると、非常に賢いシステムであることを実感する。

アプリを使って、目的地を設定できる。「what3words」を使えば、ピンポイントで位置指定ができる。今回の場所は「かしだし。だんす。いかが」で指定した。
EQB側に送られた目的地でスムーズにナビが設定できる。

類似のサービスは軽自動車も含めて一般化しつつあるが、スマートフォンの操作であらかじめ設定した時刻(例えば出発時刻)に快適な室温になっているようにエアコンを設定したり、充電状態を確認したり、スマホで設定した目的地をクルマ側に送ったりといった操作が可能だ。EQBのオーナーになったあかつきには手放せない機能となるに違いない。

軽EVの日産サクラや三菱eKクロスEVに乗ったときは、モーターならではの静かでリニアで俊敏なレスポンスともに、キビキビした動きに感動したが、EQBにも同種の感動を覚えた。このクルマの魅力をユーティリティの高さだけに集約するのはもったいない。ドライバーの頬を緩ませずにはおかない、気持ちのいい走りも大きな魅力だ。

200V普通充電口はここ。
CHAdeMO対応の急速充電は100kWまで対応する。
EQB 250 Cd値は0.28と優秀。
EQB 250
全長×全幅×全高:4685mm×1835mm×1705mm
ホイールベース:2830mm
車重:2100kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rマルチリンク式 
乗車定員:7名
駆動方式:FWD
駆動モーター
フロント
形式:交流同期モーター
モーター型式:EM0026型
最高出力:140kW/3550-11130pm
最大トルク:385Nm/ 0-3550rpm

トランスミッション:1速固定式
バッテリー:リチウムイオン電池BT0028
バッテリー容量:66.5kWh
総電圧:362V
交流電力量消費率(WLTCモード):147Wh/km
一充電走行距離(WLTCモードモード):520km
 市街地モード136Wh/km
 郊外モード140kW/km
 高速道路モード158kW/km

車両本体価格:788万円
AMGラインパッケージ 58万円
メタリックペイント7万2000円
EQB 350 4MATIC
EQB 350 4MATIC
全長×全幅×全高:4685mm×1835mm×1705mm
ホイールベース:2830mm
車重:2160kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rマルチリンク式 
乗車定員:7名
駆動方式:4WD
駆動モーター
フロント
形式:交流誘導モーター
モーター型式:EM0021型
最高出力:143kW/5800-7600pm
最大トルク:370Nm/ 0-3600rpm
リヤ:
形式:交流同期モーター
モーター型式:EM0022型
最高出力:72kW/4500-14100pm
最大トルク:150Nm/ 0-4500rpm

トランスミッション:1速固定式

バッテリー:リチウムイオン電池BT0028
バッテリー容量:66.5kWh
総電圧:362V
交流電力量消費率(WLTCモード):163Wh/km
一充電走行距離(WLTCモードモード):468km
 市街地モード156Wh/km
 郊外モード155kW/km
 高速道路モード172kW/km

車両本体価格:870万円
メタリックペイント 7万2000円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…