新型シビックタイプRはパワーもトルクもアップして500万円切りのお買い得なスポーツカー!

「FF世界最速」を絶対目標に開発が進められてきた新型シビックタイプRの全貌が明らかとなった。はたして2.0L VTECターボエンジンの最高出力は従来モデルを超える330馬力(243kW)まで高められた。265幅の専用タイヤを収めるために1890mmまで拡大されたボディは当然ながらタイプR専用だ。ここまで進化して、メーカー希望小売価格が499万7300円というのは本当の意味でリーズナブルといって間違いない!
REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:/高橋 学(TAKAHASHI Manabu)

発売日は2022年9月2日。メーカー希望小売価格は税込み499万7300円

ホンダから新型シビックタイプRが発表された。ティザーサイトなどで内外装は発表されており、すでに事前予約も始まっていたが、あらためて正式なスペックがメーカー希望小売価格が明らかになったというわけだ。

注目の価格は、499万7300円。

絶対的には安いとはいえないが、500万円を切っていることで手が届きそうな印象を受ける人も多いだろう。シビックの1.5Lターボ車が、319万円~353万9800円、2.0Lハイブリッドは394万200円であることを考えると割安感さえある。たしかに最新のハイブリッドシステムを搭載したシビックe:HEVは上質かつスポーティなシビックらしいハイブリッドカーだが、そこに約100万円を足すことでタイプRが買えるとなれば、俄然購買意欲が湧いてくるというものだ。

もちろん新型シビックタイプRにおいても「FF世界最速」を目指すという目標は不変。そこに日常での使い勝手のよさも加えるというのが現在におけるタイプRのコンセプトであることを考えると、この価格は非常にリーズナブルといっていいだろう。

全幅は標準車+90mm、車両重量は1430kg

それでは主要スペックを見ていくことにしよう。

従来のシビックタイプRと異なり、滑らかなシルエットとなっているため、写真では専用のワイドボディになっていることがわかりづらいかもしれないが、標準車から90mmも広げたボディとなっている。そのスリーサイズは以下の通り。

全長:4595mm(+45)
全幅:1890mm(+90)
全高:1405mm(-10)
※()内は標準車との差

開口部が際立つフロントビュー。空力パーツのデザインは控えめだ。
標準車とのスタンスの違いがより際立つリヤビュー。
スタイリングのまとまりが良く90mmもの拡幅を感じさせないサイドビュー。リヤドアパネルも専用品でなだらかにフェンダーへと繋がる。

基本的にキャビン部分のボディは標準車と同じもので、ワイド化は前後フェンダーで行なっていると考えていい。ただし、フロントのワイド化はフェンダーによるものでドアパネルは標準車と同じものだが、リヤについてはボディを広げたのにあわせてドアパネルも専用デザインとなっている。このあたりの巧みな処理が、パッと見には標準車から90mmも広がっているようには見えづらい理由だろう。

とはいえ、実車を目の間にすると、明らかにワイドになっているという凄味を感じさせる。ゴテゴテとスポーツを強調するものではなく、機能の必然性が生んだスタイルとなっているのは新型シビックタイプRの特徴だ。

そのほかの主要なボディスペックは次のようになっている。

車両重量:1430kg
ホイールベース:2735mm
最低地上高:125mm
フロントトレッド:1625mm
リヤトレッド:1615mm

先代シビックタイプRの車両重量が1390kgだったので、少々重くなっているようにも思えるが、そこは後述するエンジンの進化によって十分にカバーしているという。

265/30ZR19にインチダウンしたタイヤは専用設計

ワイドボディにすることが必然だったのは、シビックタイプR専用タイヤをフェンダー内に収めるためだ。

ミシュランと共同開発した専用タイヤのサイズは265/30ZR19。従来のタイプRが20インチだったことを思うと新型でインチダウンしているというのは見栄えの点ではネガティブな判断と感じるかもしれないが、あくまでもFF最速のために必要なスペックから導き出されたタイヤサイズといえる。

FF最速を追求した結果、最適解として265/30R19のミシュラン・パイロットスポーツ4Sが選ばれた。

銘柄・トレッドパターンにしてもミシュラン・パイロットスポーツ4Sとなっているが、複数のトレッドコンパウンドを組み合わせている点や、内部のベルト構造まで専用設計としているなど市販品とは別物といえる。けっして実績あるタイヤをそのまま使っているというわけではない。

タイプRというと純正アルミホイールへのこだわりも気になるところだが、新型シビックタイプRでは「リバースリム」の「鋳造」アルミホイールを採用している。

リバースリムとは通常のアルミホイールと比べて、イン側とアウト側のリム(タイヤをはめる部分)形状を逆転させたもので、その目的はイン側の歪みを低減すること。それによりタイヤ内側の接地圧が安定するため265幅のワイドタイヤの性能を引き出すことが期待できる。見た目でいえば、外からのリム形状が滑らかなとなっていることで、ホイールをひと回り大きく表現する効果もあるという。

アルミホイールといえば高剛性な鍛造こそ正義と思いがちだが、新型シビックタイプRが鋳造製法を採用したのは軽量化を狙ったゆえ。インチダウンの効果と合わせて4本合計で先代モデルから約3kgも軽くなっているという。

エンジン最高出力は従来比+10馬力、最大トルクも増えた

エンジンは従来から定評ある2.0L VTECターボ「K20C」を搭載、トランスミッションも6速MTだけの設定である点も変わっていない。

ただし、単純にキャリーオーバーで載せたわけではない。最新の排ガス規制に対応しつつ、性能アップを果たしている。そのスペックは次のようになっている。

新型シビックタイプR K20Cエンジンスペック
最高出力:243kW(330PS)/6500rpm
最大トルク:420Nm/2600-4000rpm

330ps、420Nmまでパフォーマンスが引き上げられたK20Cユニット。ターボの回転数を上げるために羽の枚数を減らし、補機類の小型、軽量化を図るなど細部にまで手が入っている。

先代のシビックタイプRが235kW(320PS)、 400Nmであったことを思うと大幅なパフォーマンスアップを果たしていることがわかる。とくに注目して欲しいのは最大トルクの違いだ。最高出力のアップだけであれば許容回転を引き上げることで可能だが、最大トルクを太くしているのは根本部分から変えることが必要だからだ。そのくらい新型シビックタイプRのエンジンは進化している。

そのポイントといえるのが、新型ターボチャージャーの採用だ。

ターボチャージャーでパワーアップしたと聞くと、詳しい人はターボチャージャーの風量アップによるレスポンス面での悪化を気にするかもしれない。しかし、新型シビックタイプRではターボチャージャーの回転系慣性を13%低減するなどして、ハイパワーとハイレスポンスを両立させているという。

今回の撮影では向きを変えるくらいの運転しかしていないが、それでもちょっとアクセルを踏んだだけでブースト計が正圧に近いところまで上がる様子からはハイレスポンスの片りんを感じることができた。

なお、新型ターボチャージャーは流行りのツインスクロールではなく、絶対的な軽さと高回転域での伸び感を求めてシングルスクロールとなっているのも注目したい。

トランスミッションについては、基本設計は従来モデルから受け継いでいるが、シフトレバーやシフトゲートの構造を見直すことにより、スポーツカーらしい明確なシフトチェンジを目指したものに進化している。こちらも静的な状態で触ってみただけだが、スムースにシフトチェンジができる仕上がりとなっている。

なにより、パワー&トルクが増大しているにもかかわらず、クラッチペダルの操作感がそれほど重いわけではない。また、フライホイールも軽量化されているというが、アイドリングでクラッチをつなげて動かすことも可能な程度には極低速トルクも確保されている。車幅的にビギナーが市街地で乗りこなすのはハードルが高いかもしれないが、動かすだけであればドライバーにさほどスキルを要求しないという印象を受けた。

あらためて、1430kgという車両重量と330PSという最高出力からパワーウエイトレシオを求めると、その数値は「4.33kg/PS」となる。これは先代シビックタイプRの「4.34kg/PS」を超えるものであり、FF車として世界でもナンバーワンの数値となっているという。

乗車定員は4名、実用的なラゲッジも持つ

コクピットまわりの様子を紹介しよう。

フロアにはスポーツカーらしく赤いカーペットが敷かれ、タイプR専用フロアマット(純正アクセサリー)も同様に赤で統一されている。

運転に集中するための、ブラック基調で整然としたインストルメントパネル。ステアリングはアルカンターラ巻。

シートはタイプR専用に開発されたもので、従来モデルよりも軽量化とホールド性の両面でグレードアップを図っている。通気性を確保するハニカム状のパーフォレーションを中央部分の表皮に採用しているのは、熱くなったドライバーをクールにするという狙いが感じられる。前後に「TYPE R」の文字がさり気なく入っているのも所有満足度を刺激するものだ。

後席はブラック基調となるが、こちらもホールド性を考慮したもので、中央部分にはドリンクホルダーが置かれていることからわかるように、2人掛け仕様となっている。つまり、全体としての乗車定員は4名となるのである。

スェード調でリヤシートもホールド性を高める。
姿勢の保持性、サポート性が最優先されたフロントシート。

操作系もタイプRにふさわしいものだ。もはやタイプRの記号といえるアルミ製シフトノブは当然のように採用される。ステアリングホイールは手に馴染むアルカンターラ、足元のABCペダルはステンレス製となっている。

大きなリヤスポイラーを与えられた樹脂製テールゲートを開けると、そこには標準車と同じく十分なサイズのラゲッジスペースが確認できる。

リヤシートは分割可倒式で、すべて格納した状態であればかなりの荷物が積めそうだ。今回は確かめることができなかったが、サーキット走行用タイヤ4本を積めるかどうかはアグレッシブなオーナーにとっては気になるところだろう。

いずれにしても、かなり実用性のあるパッケージとなっている。これもシビックタイプRの伝統といえるが、ファミリーカーとしても活用できるスポーツカーというのは、それだけで存在価値があるといえる。

ホンダ得意の低床フロアでタイヤもラクに飲み込めそうなラゲッジルーム。

専用表示を持つフル液晶メーターとナビゲーション

いかにも非日常的なサーキットベストを目指したタイプRが、日常を意識したのは先代モデルからといえる。そのキーデバイスといえるのがサスペンションやエンジン特性を切り替えるドライブモードだ。

新型シビックタイプRでは、通常のドライブモードがコンフォート/スポーツ/インディビデュアル(オーナーによる設定)の3タイプあり、さらにサーキット向けの「+R」モードが用意されている。

そんなドライブモードの切り替えはメーターにも反映される。新型シビックタイプRの10.2インチ・フル液晶メーターは通常のドライブモードではアナログのタコメーターとスピードメーターを並べたデザインとなるが、+Rモードを選んだときにはバータイプのタコメーターとデジタル数字のスピードメーター、シフトポジションなどを表示する専用デザインとなる。また、コンフォートモードとスポーツモードでは盤面の色を変えることで直感的に、どのドライブモードを選んでいるかを認識できるようになっている。

ちなみに、タコメーターで確認した範囲ではレブリミットは7000rpm。かつてのタイプRからすれば低く感じるかもしれないが、現在のエミッションなどを考えると、かなり高回転まで使えるエンジンになっているという印象だ。

9インチワイドの「ホンダコネクト」対応カーナビも標準装備となるが、こちらにもタイプR専用の機能が備わっている。それがデータロガー「Honda LogR」だ。

この機能を利用すると4輪のタイヤ摩擦円やGモーションをリアルタイムに表示できたり、そのデータを後から確認することが可能。特定のサーキットにいることがGPS情報で確認できればスピードリミッターを解除する機能も備わっている。

日常のドライブでも、6連メーターを表示しておけばスポーツ心が高揚することは間違いない。さらに、市街地でのスマートな運転を採点する「オートスコア」モードも持つ。上手なドライバーが運転すると速く走れるスポーツカーというだけでなく、ドライバーを育ててくれるスポーツカーとしての一面も持っているのだ。

こうしたデータロガー機能についてはスマートフォンに専用アプリを入れることで、SNSでつながったりと楽しめるように工夫されているという点にも注目したい。

著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。2010年代から自動車コラムニストとして執筆活動をしています。過去と未来をつなぐ視点から…