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湖上に浮かぶ絶景の駅
次なる目的地は、湖の上に浮かぶ珍しい駅、「奥大井湖上駅」だ。井川大橋からは県道60号と388号を南下して30分ほどで着く。千頭と井川の間を結ぶ大井川鐵道井川線は、国内唯一のアプト式列車だ。もともとダム建設のための専用トロッコとして敷かれたもので、通常の在来線よりも線路の幅がかなり狭い。そして日本一の急勾配となる一部の区間では、線路の中央に歯形のレールを設け、車両側に備えられた歯車を噛み合わせて上り下りするアプト式が用いられている。
そんな、見どころ満載の大井川鐵道井川線のなかでも、とりわけ必見ともいえる場所が奥大井湖上駅である。大井川がダイナミックに蛇行し、そこに半島状に突き出た土地の先端に位置するこの駅は、まさに陸の孤島といった風情で、どうやって建設したのかまるで見当もつかない。あまりにも険しく狭い場所にあるため、たいして長くもないはずのホームが陸地からはみ出てしまっていて、まさしく湖上の駅になっている。こんな駅、おそらく世界を見渡してもほかになかなかないはずだ。
ちなみにこの大井川鐵道井川線は一日に最大6往復だから、走行シーンを見られるチャンスは多くても12回しかない。季節や曜日によっては減らされる列車もあるので、訪れる際には時刻表をしっかり確認されたし。
列車の走行シーン撮影という慣れない経験を終えれば、あとは新東名を目指して戻るだけである。そのまま県道388号を南下し続け、千頭からは国道362号で静岡サービスエリアに併設されるスマートインターチェンジを目指した。国道362号は酷道というほどではないが、国道のわりにはタイトなコーナーが続く。路面の状態は良好だから、そこそこのペースで楽しむことができる。
今回の道中、コペンのトップはほぼ全行程において開けっ放しだった。陽を浴びながらのドライブは最高に気持ちがいいし、うっそうとした木々の下では急にひんやりとする。川沿いではせせらぎの音も耳に届いてくる。目を三角にして攻めるのではなく、自然を肌で感じることを主眼とする酷道険道ドライブにはオープンカーこそ理想のパートナーだ。
新東名の開通によって、日本屈指の秘境はグッと身近な存在になった。しかし心配は無用。酷道険道っぷりは相変わらずだから、そうそう簡単に行ける場所ではない。理屈としては行きやすくなっても、秘境らしさはまったく失われていないのだ。
ダイハツ・コペン ローブ
▶全長×全幅×全高:3395×1475×1280mm
▶ホイールベース:2230mm ▶車両重量:870kg
▶エンジン形式:直列3気筒DOHCターボチャージャー
▶総排気量:658cc ▶ボア×ストローク:63.0×70.4mm
▶圧縮比:9.5 ▶最高出力:47kW(64ps)/6400rpm
▶最大トルク:92Nm/3200rpm ▶トランスミッション:CVT
▶サスペンション形式:(F)マクファーソンストラット(R)トーションビーム
▶ブレーキ:(F)ベンチレーテッドディスク(R)ドラム
▶タイヤサイズ:165/50R16 ▶車両価格:188万8700円