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FCを所有する40代のオーナーが選んだトレノ
ハチロクことAE86レビン・トレノは現在、中古車価格が上がり続けている国産スポーツを代表する1台。これだけ人気になったのは漫画の影響が大きく、新車時や90年代くらいまで主流だったレビンよりトレノの人気が高いのもそのため。だから今からハチロク・トレノを探そうとすると、とんでもない値段を覚悟しなければならない。
もはや説明の必要もないハチロクは昭和58年に発売され、昭和62年にフルチェンジしてAE92に進化すると、逆に人気が盛り上がった。それもこれも後輪駆動レイアウトを採用する最後のレビン・トレノになったためで、峠を攻めたりドリフトを練習するユーザーの支持を集めた。その代表格がドリキンこと土屋圭市選手だろう。
1.5リッターのAE85を除くとGTやGTVはパワステやパワーウィンドゥが選べず、最上級のGTアペックスにだけ設定された。最近はチューニングベースよりノーマル戻しが主流のため、装備の充実したアペックス人気が非常に高い。
外観
1983年にカローラ/スプリンターがフルモデルチェンジすると、駆動方式をFRからFFヘ大転換。ところが同時に新型となったレビン/トレノはFRを継続して、スポーツユーザーの支持に応える。新開発1.6リッターDOHCの4A-GEUを採用したほか、1.5リッターSOHCも用意。全車認可されたばかりのドアミラー仕様だ。1985年のマイナーチェンジで前後バンパーやテールランプ形状を変更。
固定式のレビンに対しトレノはリトラクタブルヘッドライト。純正フォグはカバーが電動で開閉する。
ドアミラーが解禁された当初のモデルらしく助手席側は固定で可倒式ではないのだ。
新車時は黒が先に塗られ赤はその上から塗装される。全塗装車だと段差が逆のこともある。
純正リヤスポイラーは無傷。リヤワイパーは年式により停止位置が異なり前期は横向き。
エンジンルーム
2T-G型1.6リッターDOHC4気筒に変わる新世代ユニットとして開発された4A-GEU。当時はグロス表記で130ps。A60セリカにも搭載された。
二度と見つからない新車1オーナー物件
漫画への憧れからFCを劇中車仕様にカスタム。ドリフトをマスターするためサーキット通いまでする。ただ普段の足が欲しくなり、ハチロクを探してみた。するとネットで北海道夕張にあるショップで極上車を発見。
電話すると業者には売りたくないという。そこで翌日には住んでいる埼玉から夕張まで出向いてしまい、車体の下までよくよく確認して即決した。北海道なので下回りのサビが怖かったが、どうやら夏の間しか乗らないガレージ保管車。おまけに1オーナーで新車時のままの姿。これを逃したらニ度とお目にかかれないだろう。
泣く泣く2桁ナンバーは切ることになるが、こうして5年前に手に入れた。当初は足にするつもりだったが、これだけ良い状態だと足にできない。どうせなら今の状態を維持して宝物にしようと考えた。そこでニ度目の車検時に悪い個所を全て直すことに。エアコンの修理やタイベルとマスターシリンダーを交換して万全にした。
ハチロク人気を痛感したのが当時モノのパーツが高いこと。カバーが付く純正フォグは、ネットオークションで競るうち6万円にもなった。さらにフォグの純正スイッチも同額。フォグだけで12万円もかかった。その倍以上になったものも。漫画の影響でイタルボランテのアドミラルは新品当時と桁が違う額に。でも自分が思い描く姿に近づけていくのが楽しい。
室内
長く車庫保管だったと思われるほどシートの色抜けがない。サイドサポートはまだ大丈夫。 使用歴がないように見えるほど極上なリヤシート。背もたれ上も無傷。
このトヨタ・スプリンター トレノの記事は2022年9/21発売の、令和に残るクルマ改造雑誌『G-ワークス』(毎月21日発売)2022年11月号に掲載されています。