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全高を20mm高くしたことで得たパッケージング面の恩恵とは?
先代シエンタは、全長4260×全幅1695×全高1675mmというボディサイズで、新型は全長4260×全幅1695×全高1695mmと全高のみ20mm高くなっている。なお、ホイールベースは2750mmで同値。全高の嵩上げで、室内高(トヨタ社内測定値)も先代から20mm高くなり1300mmに到達した。
箱型ミニバンである現行ノア/ヴォクシーの1405mmには及ばないものの、ひと昔前のミニバン、例えばトヨタ・アイシスの1315mmなどに迫る室内高になっている。主な狙いは、子供が立って着替えができるようにするためだそうで、大人も含めた乗降性やウォークスルーはもちろん、頭上まわりの余裕にもつながっているのは、先代と比べると明らかだ。
それ以上高くすると、走りや燃費などに悪影響も出そうなので、それらとパッケージングとの両立が図られた全高といえそうだ。なお、車いす仕様の「ウェルキャブ」でも全高が高くなった恩恵を受けることができる。車いすで乗車した際の頭上まわりの余裕も増している。
1列目の乗り降りでは、身体を横移動させる感覚でできるため、セダンやハッチバックなどよりも身体の上下動が少なく、頭上にも十分な余裕がある。なお、フロントドア内側のプルハンドルがウインドウ下側のかなり高い位置になり、初めて開ける際は、一瞬どこを掴めばいいのか戸惑うこともあった。慣れると開閉操作はスムーズにできるようになるだろうが、試乗会中は慣れるまでにはいたらかなった。
座面の高さは、セダン系などよりも高くなるものの、運転席にのみ備わるシートハイトを上げても周囲を見下ろすような高さまでは至らない。それでも前方、左右、後方の視界は良好そのもので、視界の悪さから来る無用なストレスを抱くシーンは少ないだろう。さらに、先代のチルトステアリングのみから、新型にはテレスコピックも標準化されたのも朗報で、ドライビングポジションはより最適に決められるようになっている。
2列目シートは典型的なレイアウト。3列目は非常用としては十分な広さ
先代でも十分に良好といえた2列目シートの乗降性はさらに向上している。地上からフロアまでは330mmという低さで、しかもフラットフロアなのに加えて、センターピラー内側に縦長の乗降用リヤアシストグリップを用意。全高と室内高が高くなったことで、頭上まわりの余裕も実感できる。2列目の着座位置はフロントよりもかなり高い、いわゆる「シアターレイアウト」だ。20mm室内高が高くなった恩恵で、前席の見晴らしの良さと頭上まわりの余裕を両立している。
3列仕様の2列目シートの居住性をチェックすると、身長171cmの筆者が運転姿勢を決めた後方(3列仕様の2列目を最後端にスライドした状態)では、膝前にこぶしが縦に3つ近く、頭上にも同じく3つ近い余裕が残る。この状態だとサードシートの足元は、ミニマムになるが、セカンドシートの空間には十分な余裕がある。
また、2列目のシート自体は厚みがあるものの、座面の角度が少し水平基調で、お尻の収まりはもう少しという印象を受けた。
サードシートのアクセスは、もちろん7人乗り仕様のみに用意される2列目シートのタンブル機構を使う。昔ほどタンブル機構は見られなくなったが、ワンタッチ式のレバー操作で一気に折りたたまれるため、開口部下側のスペースを確保できる利点がある。全高が高くなり、頭上まわりの余裕も増し、身長171cmの筆者でも床面の高い3列シートSUVのようなアクロバティックな姿勢にならずにすむ。
3列目は、2列目とは変わって着座位置(お尻の位置)が低くなり、収まってみると意外にきちんとした姿勢で座れる。もちろん、シートサイズは小ぶりで、ヒール段差も低めになっているなど、筆者にとってはエマージェンシー用の域は出ないものの、近所のファミレスに出かけるくらいであれば十分に実用になる。それ以上の居住性や乗降性を求めるなら、ノア/ヴォクシーを指名するべきだろう。