ICオルターネーターのメリットとは?

【今さら人に聞けない!?】 オルタネーターとは何だ!? その③

みんなが知っていて、今さら「このパーツ何?」とは聞けないパーツとして、前々回、前回に引き続きオルタネーターについて見ていくことにしよう。みんなオルタネーターのこと知ってる?

L20ノーマルオルタネーター

L20エンジンのノーマル2点式ボルテージレギュレーター付きオルタネーターの中身だ。冷却ファンがフロントカバーの内側ではなく外側に付いているタイプなので、冷却ファンの位置が違う以外の基本構造は、右で解説している物と同じだ。実際にL20で使っていたオルタネーターをバラして撮影したのだが、バラすとブラシの削れたカスが多く出てきたので、長く使っているオルタネーターはブラシの摩耗を確認したほうが良さそうだ。

発電量を抑えるのがレギュレーター

オルタネーターはエンジン回転を利用して回転しているため、エンジンの回転数が上がっていけば、同様に電圧も上昇する。必要以上の電圧は、電機部品によろしくない。そこでローターコイルに流す電流を接点もしくはICを使ってコントロールしてやり、オルタネーターの出力電力電圧が12V以上に上昇するのを一定に調整する役割だ。ICの発達により小型化でき、オルタネーターと一体化することが出来た。

バッテリー電圧は12Vとなっているが、実際は14V(車種や仕様によって差がある)位まで上昇した時点でレギュレーターが作動して一定に抑える。また図では電圧の上昇が緩やかだが、これはあくまでもイメージだ。

2接点式ボルテージレギュレーター

L型などに使われていた2接点式ボルテージレギュレーターの中身だ。矢印部分の接点が2個あるので2接点式と呼ぶ。この接点が一定電圧になると作動することで、オルタネーターの出力電圧をコントロールしている。2接点式ボルテージレギュレーターはオルタネーターとは別に取り付けられる。

ICレギュレーター

2接点式ボルテージレギュレーターが進化したのがICレギュレーターで、役割は同じオルタネーターの出力電圧をコントロールしている。ICレギュレーターは写真のようにステーターコイルに取り付けられている。右図はICレギュレーターの中身を表している

外観から解るボルテージレギュレター式とIC式の見分け方

ボルテージレギュレーター式なら、オルタネーター近くのフェンダーなどに、ボルテージレギュレーター(写真右側部品)が取り付けてある。
ICレギュレーター式は冷却ファンがカバーの内側にあるが、ボルテージレギュレーター式はファンが外側ある(一部に例外あり)。

ICオルタネーターのメリット

その1・小型/軽量

ICオルタネーター 出力=70A
L20ノーマル 出力=45A
技術の進歩と共にボルテージレギュレーター式からICオルタネーターになり、オルタネーターは小型、軽量化をしてきた。さらにICレギュレーターをワンチップ化するなどして小型化し、ブラシとICレギュレーターを一体化させるなど、レギュレーターを小型化出来るメリットは大きい。もちろん、オルタネーターの小型/軽量化には、ステーターコイルの素材の変更や、効率の高い巻き方などの工夫もある。また高出力化も出来るようになり、L20ノーマルオルタネーターは出力が45Aだが現在は70A、90Aなどもある。

その2・配線がシンプル

2点式ボルテージレギュレーター付オルタネーターは、ボルテージレギュレーターが、クルマのボディ側に取り付けられるため、オルタネーターとボルテージレギュレーターの間に配線が必要だった。だが、ICレギュレーター式オルタネーターの場合、オルタネーターとICレギュレーターが一体になるため、余分な配線が必要なくなる。配線が無くなればメンテナンス性も向上する。

最新オルタネーターの傾向

高出力! 90A
最新のオルタネーターは小型/軽量化に加えて、高出力化が進んでいる。ステーターコイルを従来の巻き方より高密度で巻いたり、素材自体を抵抗と熱損失の少ないセグメントコマンダに変更するなど進化に終わりはない。さらに回転抵抗の少ない低抵抗オルタネーターと呼ばれるオルタネーターも登場している。これはクランクシャフトでオルタネーターを駆動していることから、エンジンへの抵抗も減るので、馬力アップや燃費向上などが期待出来る。

地味な部品の構造をあらためて見る

 このオルタネーターが普及する以前は、ゼネレーター(直流発電機)が多く使われていたが、オルタネーターの技術が向上して2接点式ボルテージレギュレーター付がメジャーになり、L型エンジン搭載車が新車で搭載されている時代には主流になって、現在ではICレギュレーターが一般的になっている。単純にオルタネーターと言っても、様々なタイプがあるのだ。さらに最近は小型/軽量化が進んでいて、技術面だけで話を言えば、今回紹介したオルタネーターよりはるかに小さくて高出力のオルタネーターを作ることも可能だ。


 エンジン本体のカムやピストンなどの部品に比べると、オルタネーターは地味で、あまり注目されることは少ないが、あらためて見てみると実は結構面白い構造になっており、地味な部品でも日々進化していっていることが解ってもらえるだろう。


 よくクルマは複合産業だと言われる。クルマは鉄、電気、ゴム、繊維、ガラスなど、色々な業界の様々な技術を集めて出来上がっているので、名前や大まかな機能は知っているけれど、詳しいことは解らないようなクルマの部品を一つ一つ見ていくと、まだまだ知らないことや、面白い事が発見出来そうだ。

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