ソケットレンチの違いはサイズと長さだけじゃない! 6角か? 12角か? 買うならどっち!?【DIY派はこれを揃えてお工具! 第3回】

ハンドルとソケットを組み合わせて幅広く使えるソケットレンチは、クルマやバイクのDIY作業ではとてもよく使う工具だ。これまで差し込み口のサイズやラチェットハンドルの種類、ソケットの長さについて紹介してきたが、今回はソケットの差し込み角数について見てみよう!
REPORT:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu) PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)/MotorFan編集部

差し込み角は6角と12角の2種類あり

■6角と12角の違いは?
愛車のメンテナンスをするときにもっとも使用頻度が高い工具がソケットレンチだ。ソケットレンチはボルト&ナットのアプローチに不可欠な工具で、ラチェットハンドルやスピナーハンドルなどの「ハンドル」に使用したいサイズの「ソケット」を組み合わせて使用する。差し込み口のサイズの違いについては前回述べたとおりだ。
ところが、このソケットを購入するときに頭を悩ませるのが、6角(6ポイント)か12角(12ポイント、ダブル6角とも言う)というソケット内側の形状の違いとなる。
どちらのソケットもクルマやバイクに多用されるヘックス(6角)ボルト&ナットを締めつけ・緩ませができるのだが、違いは作業性と耐久トルクにあるとされている。

17mmのソケット。左が6角、右が12角。
上から見ると角数の違いがよくわかる。

それぞれのメリットとデメリット

12角はボルト&ナットの合わせる角を細かく選ぶことができるのがメリット。

■12角のメリットは合わせ角の幅広さ
ラチェット機構を持たないスピンナーハンドルを使うとわかりやすいのだが、12角ソケットは6角と比べてボルト&ナットの頭を嵌められる位置が2倍になるわけで、嵌めやすく、少ない振り角で作業することができる。


合わせ角は少ないが、ボルト&ナットとソケットの接触面が大きく大トルクに耐える。

■6角のメリットは対応トルクの大きさ
いっぽうで6角ソケットは、作業性は12角に劣るものの接触面が広くなることからナメにくく、ボルト&ナットにより大きなトルクを掛けられるとされる。


スピンナーハンドルはヘッドの角度は変えられるが、ヘッド部にラチェット機構はなく取り付け角やハンドルの振り角=作業スペース的には厳しい。一方で可動部分が少ないので大きなトルクが必要な時に使いたい工具だ。

可動式ハンドルで作業がもっとはかどる! セットに追加したい便利工具「スイベルラチェット」で、ソケットレンチをさらに有効活用!【DIY派はこれを揃えてお工具! 第2回】

セット工具の中でも便利で使用頻度の高いラチェットレンチ&ソケット。ただ、状況によっては「レンチが入らない」とか「回すスペースがない」といったことも少なくない。そんな時に役に立つのが可動式のラチェットハンドル「スイベルラチェット」だ。セットにプラスすることで、クルマいじりがもっと捗る便利工具について解説しよう! REPORT:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu) PHOTO:MotorFan編集部

■12角でも強度は十分?
ただし、この6角のメリットに対しては疑問を感じなくもない。同じようにボルト&ナットにアプローチするためのコンビネーションレンチやメガネレンチは、ボックス部分が6角の製品も一応はラインナップされてはいるのだが、現在の主流は12角となっている。もしも両者の耐久トルクに差があるのなら、レンチ類も6角を使うべきなのだろうが、実際にはプロのメカニックでも12角のレンチを愛用する人がほとんどだ。


また、KTCKokenなどの工具メーカーも6角と12角で強度的な差はないとアナウンスしており、そう考えると6角の優位性というのはソケットの品質が今より低かった時代の話であり、面接触を採用した現在の一流メーカーの製品では、作業をする上で12角でも遜色はないと考えたほうが良いのかもしれない。

上からメガネレンチ、コンビネーションレンチ、ラチェットコンビネーションレンチ。いずれもボックス部は12角。

どちらを選べばいいの?

■旧車派なら6角
しかしながら、筆者はこうした12角のメリットは承知の上で、所有するソケットのほとんどを6角で揃えた。理由は簡単で55年落ちのアルファロメオを筆頭に所有するクルマやバイクが軒並み製造から年月が経過した古いモデルだからだ。
何度も脱着を繰り返した古いボルト&ナットの場合、角が丸まってナメかけていることも多く、そうなると12角だとうまく回せないことが考えられるし、ボルト&ナットが錆びついて固着した場合にはより高いトルクを掛けられる6角の方がメリットが大きいと判断したからだ。

ハーレーなどで採用例がある12角ボルトへの対応や、スピンナーハンドルを使わなければならない状況で、かつ振り角がほとんど取れない場所へアプローチする際などの保険として3/8サイズのシャローソケットのみARMSTRONG製の12角ソケットを所有している。だが、幸いにしてそうしたシチュエーションに出会ったことはなく、日頃はあまり手に取る機会がない。
このあたりは個人の好みや使用状況によっても変わってくるので一概にはなんとも言えないが、比較的新しいクルマやバイクをイジることがほとんどで、ボルト&ナットへのアクセス性を重視する人は12角、旧車を扱うことが多く、傷んだボルト&ナットに接することが多い人は6角を選んだほうが良いのかもしれない(完全に頭をナメたボルト&ナットには接触面積の大きなサーフェイスソケットを使うことになる)。

■使用状況に合わせて両方揃えられればベターだが……
ただ、すべてのソケットを6角か12角かのどちらかで統一してしまうと、いざというときに作業が滞ったり、作業効率が低下したりすることが考えられるので、シャローを12角で揃えたらディープは6角であるとか、3/8は12角、1/2は6角などマッチングを考えて揃えたほうが良いだろう。


予算の都合や工具の点数を絞りたいなどの理由で3/8サイズ、それもシャローソケットしか揃える気がない人なら、オーバートルクでナメやすい10mm以下の小さなサイズは6角、12mm以上の大きなサイズは12角と両者を組み合わせるのもひとつの選択と言えるかもしれない。

DIY派は必見! 工具セットにちょい足しで、クルマいじりがもっとはかどる! かゆいところに手が届くラチェットレンチ&ソケット選び【DIY派はこれを揃えてお工具! 第1回】

オイル交換などの簡単なメンテナンスなど、愛車を自分でいじりたいオーナーは少なくないだろう。大小様々種々雑多な部品で構成されるクルマをいじろうと思うとそれなりに工具が必要になってくる。DIY派であれば愛用の工具セットもあるかと思うが、そのセットに追加すると作業がもっとはかどる便利な工具を紹介していこう! REPORT/PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

結論としてはソケットは6角と12角のいずれを選んでも間違いではないが、イザというときのため両者を組み合わせを考えながら両方揃えるのがベター、ということになる。

キーワードで検索する

著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…