もはや、ブームではなくすっかり定着したSUV人気。いまやSUVが標準車型と言ってもいいほど高い市民権を得ている。しかし、SUVはどうしても車高が高く、車重も重い。重い車重はタイヤにとっては摩耗、あるいは偏摩耗に繋がり、高い車高(=重心高も高くなる)は運動性能には不利になる。
もちろん、プロクセスCL1 SUVはその名の通り、SUV向けに開発された最新タイヤだから、そのあたりは入念に対策されている。
トーヨータイヤはSUV向けにオンロード向けのフラッグシップタイヤとして「プロクセス スポーツSUV」やオフロードでの走行も視野に入れた「オープンカントリーA/Tプラス」など、いくつかのタイヤをラインアップしている。そのなかで、プロクセスCL1 SUVは、コンフォートな低燃費タイヤという位置づけだ。とはいえ、プロクセスを名乗るだけあって低燃費とコンフォート性能だけを追い求めたタイヤではない。静粛性、摩耗性能、環境対応性能、デザイン性、もちろん操縦性をも高次元でバランスすることを追求して開発された都市型SUVに向けタイヤなのだ。
プロクセスCL1 SUVは転がり抵抗係数の等級で「A」認定。ウェットグリップ性能でも「b」等級となっており、ウェット路面でもタイヤのグリップ力がしっかりと確保されている。相反する特性を高いレベルで両立させ、日本自動車タイヤ協会が策定した基準をクリアした低燃費タイヤなのだ。
試乗したのは、レクサスNX 200t Fスポーツである。装着したプロクセスCL1 SUVは
225/60R18 100H
である。「100」はロードインデックス、つまり負荷能力が800kgであることを意味する。「H」は速度記号で、最高速度210km/h対応を示している。まさに、都市型SUV向けというスペックだ。
走り出してまず感じるのが、「おっ、静かだな」である。もともと静かなNXだが、それでもタイヤからのロードノイズが少ない。高速道路でも静かだ。カタログには「パターンノイズ騒音エネルギー低減率はPROXES CF2 SUVから22%低減」と書いてあるが、実際に体感できるほど静粛性は高い。
今回の試乗ではワインディングを走るシチュエーションはなかったが、高速道路を流れに乗って走っている限り、直進安定性がとても高いと感じた。静かで真っ直ぐ走るというのは、簡単なようでなかなか実現するのは難しい。
プロクセスCL1 SUVは、トーヨータイヤ独自の設計思想でAI技術と高度なシミュレーションを組み合わせた「T-MODE」を活用して開発された。パターンデザインは、トーヨータイヤが得意とする左右非対称パターンだ。
内側と外側でブロック配置の間隔を異なるピッチ数にすることでピッチノイズレベルを低減して静粛性能を向上させる非対称ブロックピッチ配列、周方向に連続したリブの溝が着られている箇所の端部に面取りのような加工を施すことでブロックの変形を抑制・偏摩耗を抑えるダイナミックテーパー技術、路面接地時のブロックの変形を抑制し、耐偏摩耗性を確保する3Dマルチサイプなどの技術が投入されている。
静かなだけでなく、乗り心地も良い。ホイールとの結合を強くしてタイヤのしっかり感を出すビートフィラーを高剛性化し、サイドウォールに適度な柔軟性を持たせたことで、路面の凸凹の入力を優しく吸収する。首都高の舗装の継ぎ目を越えるときも当たりが柔らかく、それでいてハンドルを切ると適度な手応えがある。コンフォートタイヤにありがちな頼りないフィールや、かつての低燃費志向のタイヤにあった硬さはプロクセスCL1 SUVにはない。
レクサスNX 200tはオフロードよりも大都会のビル街を走り抜けるのが似合う、まさに都市型SUVの代表格だ。2.0ℓ直4ターボ(238ps/350Nm)を搭載する200tは、SUVでも”走り志向”が強いクルマだ。それでも、静かで乗り心地がよくて、ハンドリング性能も充分なプロクセスCL1 SUVはマッチする。ハイブリッド、あるいはEVのSUVならさらに相性がいいだろう。