パワー? 燃費? 「新型クラウン」のエンジン選びは2.4ℓターボと2.5ℓ自然吸気どちらを選ぶ?

クラウンという車名こそ残ったものの、史上最大といえる大変革を敢行したトヨタ。真のグローバルモデルになった新型クラウンは、大径タイヤを履くクロスオーバーから登場した。FFベースの4WD(電気式4WDのE-Four)になり、インパクト大のデザインだけでなく、走りの面やパッケージングでも大変革を遂げているのかチェックする。
TEXT:塚田勝弘 PHOTO:高橋 学

性格の違う2つのパワートレーンどちらを選ぶか?

クラウン・クロスオーバーのパワートレーンは2種類。デュアルブーストハイブリッドシステム(2.4ℓターボエンジン+ツインモーター)と6速ATを組み合わせる2.4ℓ車(RS系)、リダクション機構付シリーズパラレルハイブリッドシステムで、「A25A-FXS」型2.5ℓ自然吸気エンジンを積む2.5ℓ車(G,X系)を設定している。

まずは両車の違いから説明しよう。外観で両車をすぐに識別するには、サイドの丸いソナーセンサーの有無がわかりやすい。2.4ℓターボにはあり、2.5ℓ自然吸気にはない。さらに、アルミホイールの違い、漆黒メッキのリヤ車名エンブレム(RS系に用意)、グリルシャッター(G,X系に用意)が識別点になる。

クラウンクロスオーバーRS。サイドの丸いソナーセンサーの有無がわかりやすい識別ポイント。
RS系はリヤエンブレムに漆黒メッキを用意。
G,X系のリヤエンブレムはクロームとなる。

なお、2.4ℓターボはプレミアムガソリン(ハイオク)を、2.5ℓ自然吸気はレギュラーガソリンを指定する。2.4ℓターボのハイブリッドは、レクサスRX、NXにも搭載されているものと同じだ。デュアルの意味は、ターボとモーターから由来し、ターボエンジンとモーターを直結させ、さらにリヤモーターが加勢。前後輪トルク配分は、状況に応じて「100:0」〜「20:80」の間で可変する。

RS系は21インチアルミホイール
G,X系は19インチアルミホイールがメインとなる。

エンジンスペックは、2.4ℓターボが272PS(200kW)/460Nm、2.5ℓ自然吸気が186PS(137kW)/221Nm。
それに追加して、フロントモーターは、前者が61kW/292Nm、後者が88kW/202Nm。リヤモーターは、2.4ℓターボが59kW/169Nm、2.5ℓ自然吸気が40kW/121Nmとなっている。
システム最高出力は2.4ℓターボが349PS(257kW)2.5ℓ自然吸気が234PS(172kW)となる。
ハイブリッドシステムと駆動方式(2.4ℓターボは、E-Four Advance。2.5ℓ自然吸気はE-Four)の違いもあるが、一般ユーザーはパワフルでより速い2.4ℓターボか、燃費がよくレギュラーガソリン仕様で経済的な2.5ℓ自然吸気かをまず選択するはずだ。
なお、WLTCモード燃費は前者が15.7km/L、後者が22.4km/L。ガソリンの補助金打ち切りが報じられている中、来年から段階的に引き下げられ、補助金がなくなった場合のガソリン代も考慮しつつ選ぶのも賢い選択といえる。

RS系に搭載する2.4ℓターボはクラウンの目玉となるエンジン。272PS(200kW)/460Nmとパワフルだ。

パワーで選ぶのなら2.4ℓターボだが、素直なハンドリングの2.5ℓ自然吸気も乗りやすい

実際の走行フィールは、市街地走行ではスペックの差を実感するほどではないものの、山岳路で飛ばすとその差は歴然だ。パーシャル域から力強い2.4ℓターボ車は、急勾配をまったく無視するようにグイグイと加速する。一方の2.5ℓ自然吸気も普通に走らせる分にはモアパワーを抱かせるシーンは少なく、150kg軽いこともあり、タイトな山道では意外と走らせやすい。

RS系に搭載する、2.4ℓデュアルブーストハイブリッドはエンジン出力272PS(200kW)/460Nm、フロントモーター61kW/292Nm、リヤモーター59kW/169Nm。システム最高出力は349PS(257kW)となる。

両車ともにモーター走行時の静粛性はすこぶる高く、クラウンに期待するレベルに十分到達している。また、4WDであるDRS(ダイナミック・リヤ・ステアリング)は、低速域からほとんど違和感を抱かせず、シティユースでは、言われてみないと分からないほど自然。一方で、エンジンが始動すると、音・振動が思いのほか大きく響いてくる。
FF化のネガか分からないが、エンジン音もそれなりに聞かせることで、スポーティ感を演出するという方向性の狙いには少し違和感を覚えた。モーター走行時の静かさと乗り心地の良さ、滑らかなステアフィールとの整合性がとれていないように感じられたからだ。また、CVTの一種である電気式無段変速機を積む2.4ℓターボ車は、高負荷域で音が先行して高まり、ターボの過給時に力強さが増す一方で、エンジンコンパートメント由来の音が大きくなってしまう。クラウンのファンやユーザーからどういった反応があるのか少々気になる点だ。

G,X系に搭載する、2.5ℓ自然吸気はエンジン出力186PS(137kW)/221Nm、フロントモーター88kW/202Nm、リヤモーター40kW/121Nm。システム最高出力は234PS(172kW)となる。

新型クラウンは、モーター走行を中心に流している分には十分に静かといえるが、両パワートレーンともに、高負荷域での音は唐突に高まる印象を受ける。動力性能で選ぶのなら2.4ℓターボでキマリだろう。一方で、街乗り中心であり、ランニングコストも無視できないのなら2.5ℓ自然吸気が最適だ。筆者だったら、せっかく新型クラウンを選ぶであれば6ATと電気式CVTのフィーリングも考慮して、2.4ℓターボを選択するだろう。

FF化の恩恵は後席の足元空間の広さにあり

クロスオーバーの乗降性は、セダン派生型と考えると上々だ。前後席ともに少し腰を下ろした位置にシート座面があり、多少サイドシルをまたぐ感覚は残るものの、足さばきは良好といえる。
腰の上下動を抑制した狙いどおりで、潜り込む感覚の強いセダン、登るように乗り込むクロカン系SUVとはまったく異なる。ただし、フロントは、Aピラーの傾斜がきついため、頭上まわりにはあまり余裕を感じなかった。大柄な人だと気になるだろう。

また、FRからFF化された恩恵を最も感じられるのは後席で、足元空間、頭上空間ともに広々としている。なお、後席の「RS Advanced」には、オプションで電動リクライニングが備わり、それ以外はリクライニングしない。よりリラックスした姿勢で座れるのはもちろん前者で、後席の姿勢自由度を重視するのならオプションで選択したい。また、後席の前倒しはできないものの、中央部のトランクスルー機能は用意されている。

「RS Advanced」にオプションで設定されている電動リクライニングは、肘掛けのスイッチで操作できる。

トランクの使い勝手でまず気がつくのは、トランクリッドのオープナーの位置が分かりにくい点(インパネ側にもスイッチを配置する)。デザインの都合上、分かりにくくなったそうだが、思わず何度も場所を探してしまった。荷室容量は450Lで、9.5インチのゴルフバッグが3セット積載できる。トランクの形状や使い勝手は、セダンそのものといえるだろう。

トランクはセダン形状のため天地高は低いが荷室容量は450Lと不便は感じないだろう。後席の前倒しはできないものの、中央部のトランクスルー機能で長尺物も積載可能。

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先行して登場した2.5Lハイブリッドに加えて、新型クラウンの上級バージョンと言える2.4Lターボハイブリッド仕様“RS”への試乗が叶った。これまでトヨタが主力ユニットとしてきたシリーズパラレルハイブリッド(THSⅡ)とはガラリと方式の異なるハイパフォーマンスユニットの仕上がりはいかに。 REPORT:佐野弘宗 PHOTO:高橋 学

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著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…