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いくつある? ドライバーの種類
クルマやバイクのDIY作業に興味がない人でも1本くらいは持っており、どこの一般家庭にも転がっている工具がスクリュードライバー(以下、ドライバー)だ。家電の電池交換や家具のネジの緩みを直したりと、日頃あまり意識せずに使っている人も多いが、使用頻度の高さの割に身近すぎて一般にあまり深く知られていない工具でもある。
ドライバーとひと口で言っても先端形状の違いによりプラス・マイナス・HEX・トルクスなど様々な種類がある。さらにシャンク(ドライバーの刃)先端のサイズの違い、シャンクの長さ、柄の素材や形状の違いなどを含めれば無数の種類が工具店に並んでいる。
ビットドライバーや精密ドライバー、ショックドライバーなどのやや特殊なドライバーを除いたとしてもどれを選んだら良いか迷ってしまうほどだ。
ねじ回しの主力、プラスドライバー
この記事を読んでいるあなたがDIY作業初心者で、これから愛車のメンテナンスのためにちゃんとした工具を揃えたいというのなら、名の通った一流メーカーの製品の中からプラスの1番と2番、そして3番をまずは揃えて欲しい。
ドライバーにはスタンダードタイプのほか、シャンク先端からグリップエンドまで軸が繋がった貫通ドライバーもある。これはグリップにハンマーを打ちつけた衝撃で固着したネジを回すためのドライバーで、こちらを日頃から使う人も少なくないが、スタンダードタイプに比べて重く、作業性が若干劣るため、必要に応じてあとから買い足して行けば良いだろう。
便利使いできる? マイナスドライバー
マイナスドライバーは現在のクルマにはほとんど使われておらず、キャブレター車のバイクや旧車をいじる人以外は、スタンダードタイプのマイナスドライバーを慌てて買い揃える必要はない。必要とする車種に乗っている人は、ネジの溝幅にあったものを数点……具体的には3.0mm、5.5~6.0mm、7.0~8.0mmの3本ほど揃えておけば、当面は問題はなく作業できるだろう。
クルマやバイクの世界では、ネジ回しとしてのマイナスドライバーの役割はすでに過去のものとなった感が否めないが、そのいっぽうで車両のゴムキャップやダストシールを剥がしたり、缶の蓋をこじ開けたり、柄をハンマーで叩いてタガネ代わりに使ったりと、意外なところで活躍してくれる工具でもある。
だが、こうした使い方をするならもっと良い道具がある。それは「タガネドライバー」と呼ばれる製品で、VESSELやPBなどからリリースされている。筆者はVESSELのタガネドライバーを長年愛用しているが、一般的な貫通ドライバーよりもシャンクがゴツく太いのが特徴で、荒ごとに使っても先端が欠けたりしないタフなドライバーということで使い勝手が良く大変気に入っている。
力は垂直に! ドライバーの使い方
ネジを回すときは、ネジの溝にピッタリと収まるサイズのドライバーを選び、回転軸がぶれないようにネジに対して垂直にシャンクを刺し込んで、回す力を30%・押す力を70%の割合で回して行く。
そうすれば、ネジを回したときに先端が浮き上がる「カムアウト現象」を防ぐことができ、ネジを舐めることはなくなる。
なお、写真で使用したWeraのドライバーは人間工学的に優れた独特のグリップ形状をしており、グリップ後端をつまみ回ししても使いやすく、横からガッチリ握れば手に吸い付くように収まり、強い力をかけることができる。
安物は厳禁! ドライバーの選び方
ここでドライバーの選び方についても話をしておこう。ドライバーは使用頻度が高い工具なだけに、安物を使うとネジを舐めやすい上に、使い勝手が悪くてイライラさせられることが多く、買ってから後悔するハメになる。ソケットやレンチなどは安物でも問題なく使えるものもあるが、ことドライバーだけは一流メーカーの製品を使った方が絶対に良い(100均のドライバーなど論外)!
■ドライバー専門メーカー
先ほどは「名の通った一流品を選べ」と言ったが、ブランド工具の中でもどちらかと言えば総合工具メーカーより、ドライバー専門メーカーの製品クオリティが安定しているのが個人的な印象だ。有名ブランドの中でもドライバーだけはなぜかイマイチ……と感じるケースも少なくない。
具体的にメーカー名を挙げると、国内ブランドならVESSEL(ヴェッセル)、ANEX(アネックス)、Ko-ken(コーケン)。Ko-kenはソケット工具で有名なメーカーだが、ドライバーの品質も高い。なぜか工具専門店でも取り扱いが少なく手に入れにくいのが難点だが。欧州ブランドならPBやWera(ヴェラ)などがある。
これらの製品の中からクルマ・バイク用のドライバーを買っておけばまず間違いないだろう。一流品と言っても2番のプラスドライバーで1本1000~2000円程度。けっして買うのに躊躇する金額ではない。
■オススメのドライバーは?
俗に「ダルマ」と呼ばれるVESSELのボールグリップドライバーは、価格が非常に安く、その割に精度が高くて、手馴染みも良いのでファンも多い。
もともとは電工用&家庭用の製品ということで強いトルクで締められたネジを回すことを考慮していないようで、クルマやバイクの整備に使用すると、すぐにシャンクが消耗してしまう(スクーターの外装を数台分バラしただけでシャンクがボロボロになる)。
用途に適したドライバー選びということで言えば、VESSELの製品ラインナップの中では、クルマ・バイクでの使用を前提にしたメガドラを購入することを推奨したい。
筆者は主にWeraのレザーチップドライバーを使っており、プラスの貫通ドライバーとタガネドライバーはVESSELのメガドラ、ロングドライバーはKo-kenの差し替えタイプを使っている。
とくにWeraのレザーチップはネジへの食いつきがハンパではなく、人間工学的に優れたグリップ形状は力が入れやすく、おまけにシャンクの根本にボルスターがついているので固着したネジはレンチをかけて回せるなど、現在買えるドライバーの中で最高のクオリティの製品かと絶大な信頼を寄せている。
■規格イロイロ? ドライバー選びの注意点
最後にプラスドライバーを買う際の注意点について。一見同じに見えるプラスドライバーだが、日本の製品はJIS規格、欧州はDIN規格とポジドライブ、アメリカはフィリップス規格と、じつは製造国によって4つの規格があることをご存知だろうか?
これらはそれぞれの国で使われるネジの規格に基づいて製造されており、ポジドライブ(欧州車の一部やIKEAの家具に使用される)を除いてそれぞれに互換性がある。だが、厳密に言えばネジの穴の形状や深さが微妙に違うため、稀にネジとドライバーが合う・合わないという問題が生じることがある。
日本のJIS規格と欧州のDIN規格では互換性が高いようで、筆者がWeraのドライバーで国産車のネジを回しても痛痒を感じることはこれまでなかった。
だが、Snap-on(スナップオン)やMac tools(マックツールズ)のドライバーを使っている友人・知人の中には「アメリカのドライバーは日本のネジにフィットしない」という人間もいる。
この話が事実だとしても、それはSnap-onやMac toolsの品質に問題があるのではなく、純粋に使われているネジとの相性の問題なのだ。当然アメ車やハーレーにはこれらの製品がバッチリ使えるハズだ。
筆者は残念ながらアメリカ製のスタンダードドライバーを所有していないので(価格が高いし!)なんとも言えないのだが、これからドライバーを購入しようという人は、頭の片隅に入れておいても良い話かと思われる。
理想を言えば、クルマやバイクの生産国に合わせて適したドライバーを揃えるのがベターなのかもしれないが、様々な車種を手掛けるプロのメカニックならともかく、サンデーメカニックなら日頃いじる愛車に適したドライバーがあればいいわけで、そこまで気合を入れて揃える必要もないだろう。なお、スイスのPBは日本へ輸出する製品はJIS規格対応で作っているそうだ。
■基本は適材適所
今回はプラスとマイナス、タガネドライバーを中心に解説したが、ほかにもHEX(6角)やトルクスなどネジやボルトに応じてドライバーにはたくさんの種類があるし、狭い場所での作業に向いた全長の短いスタビドライバー、手が届かない奥まった場所にあるネジを回すためシャンクが長いロングドライバーなど、用途に応じたバリエーションもある。
これらは必要なシチュエーションに合わせて買い足して行けば良いと思う。予算に余裕があっていちいち買い足すのが面倒という人は、複数のドライバーが組み合わされたセットを購入しても良いだろう。
ドライバーは消耗品だが、良いものを買えばサンデーメカニックレベルなら数年は問題なく使える。ドライバーだけはケチらず、ぜひとも高品質なものを買い揃えて欲しい!