【新連載 これからどうなる自動運転!】運転をクルマに任せるなら、ドライバーは本を読んだりスマホを操作しても大丈夫!?

【これからどうなる自動運転! 】お台場近辺を走る「ゆりかもめ」は完全自動運転に! クルマの自動運転化は見えない未来の話じゃない!|第1回基礎講座 前編

「夢の技術」といったイメージが強い自動運転。果たして、その実態はどうなっているのでしょうか。ネットやテレビのニュースでは分からない自動運転の裏事情を知って頂き、あなたのカーライフの参考にしてください。

自動運転技術、最近表現しなくなっているけど・・・

「なんだか最近、自動運転のニュースを見なくなった気がする」。そんなイメージを持っている人が少なくないのではないでしょうか?

例えば、”やっちゃえ日産”のテレビCMで、矢沢永吉さんが登場していた頃は「自動運転技術を使って…」といったフレーズがありました。それが、直近のCMでは木村拓哉さんと松たか子さんがEVの「アリア」で日産プロパイロット2.0を体験するシーンが放映されていますが、その中で自動運転技術という表現はまったく出てきません。  

ホンダでは、世界初の自動運転レベル3機能搭載で大きな話題となった「レジェンド」がありますが、レジェンド自体がモデル廃止となってしまい、その後にレベル3機能を使う新型モデルについてはホンダから正式な発表がありません。

また、全国各地で行われていた小型バスやゴルフカートを使った自動運転の実証実験についても、報道される機会が減った印象があります。実際、乗客が料金を支払って乗る自動運転を使った公共交通が実用化されている場所は極めて限定的なのが実情です。

こんな話を聞くと「な〜んだ、自動運転も一時のブームで、事実上の“終わった技術”なんじゃなの?」なんていうふうに思われても致し方ないと思います。

ところが、アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコ周辺に目を移してみますと、運転席が無人の自動運転タクシーがガンガンに走り回っているではありませんか。

これはゼネラルモーターズ(GM)の子会社の「クルーズ」が造った自動運転システムです。日本市場向けではホンダがクルーズと提携して導入に向けた準備を進めています。その他にも、グーグル子会社の「ウェイモ」やアマゾンが出資する「ズークス」などさまざまな自動運転車が本格的な実用化に向けてシリコンバレー周辺を走りまわっているのです。

そんなニュースを見ると「やはりシリコンバレーは凄いね。日本はネット社会でも出遅れたように、自動運転でもアメリカIT大手に太刀打ちできず、負け組になっちゃっているのかしら」といった感想を持つかもしれません。

さらに、中国でもアメリカへの対抗意識から、中国版グーグルとも言えるバイドゥや、中国版アマゾンとも言えるアリババなどが、自動運転の実用化に向けて中国政府と連携しながら革新的な技術を世に送り出そうとしています。

このように、自動運転に関するニュースを最近あまり聞かなくなったり、聞いたとしても海外での成功事例がほとんどで、いったい自動運転はこれから日本ではどうなっていくのか、なんだか凄く分かりづらい時期だと思います。

運転をクルマに任せるなら ドライバーは寝てもいい!?

そもそも、多くの人がイメージする自動運転とは、近未来を描いた映画やアニメの中に登場するような、乗員の指示によって自宅や会社からいつでもどこへでも乗り物に一切手を振れなくても移動できる、完全なる自動運転ではないでしょうか。

その上で、実用化を視野に入れた自動運転のあり方について、クルマのユーザーと話をしていると「自家用車でお酒を飲みに行っても、帰りは自動運転で車内でぐっすり眠ったまま、安心して家まで送り届けてくれるなら申し分ない」といった声をよく聞きます。

つまり、多くの人にとって自動運転は自家用車の延長上で、必要に応じてクルマが運転の肩代わりをしてくれることが理想的だ、といったイメージが強いようです。

一方で、バスやタクシーが自動運転になると聞いても、クルマのユーザーの反応はあまり強くありません。そもそも、クルマのユーザー自身がバスやタクシーを運転しているワケではないからです。あくまでもクルマのユーザーは乗客のひとりとして乗車しているワケですので、バスやタクシーが自動運転なったと聞いても「事故があったら、バスやタクシーの運営事業者がちゃんと責任を取ってくれるの?」といった話が主体となり、自動運転技術についてクルマのユーザーが深く考えることはほとんどないのではないでしょうか。

公共交通での自動運転といえば、東京のお台場周辺で運行している新交通「ゆりかもめ」は、すでに完全自動運転なので、車内に運転手も車掌も乗っていません。

また、JR東日本は2022年5月、「山手線の営業列車で自動運転を目指した実証実験を行う」と発表しました。実は、山手線では2018年度から終電後の時間帯に自動運転の実験を行ってきましたが、その成果を受けて22年2月から営業時間内に自動運転の列車を走らせていたということです。JR東日本では2028年頃までに自動運転列車の本格的な導入を目指すとしています。

こうして電車では今後、自動運転が当たり前の時代がやってくるということです。なぜ、電車が自動車に先んじて自動運転の普及が進むのでしょうか?

それは、線路という軌道の上を走行しているため、自動車のようにどこでも走れるワケではなく運行管理がしやすいからです。また、停車する場所も基本的に駅であるため、人の乗降についても安全性を担保しやすいということが言えるでしょう。

その他、すでに実用化されている自動運転というと、自動車メーカーの最終組み立て工場内で自動車部品などを運ぶ、無人搬送車があります。英語ではAGV(オートメイテッド・ガイデッド・ヴィークル)と呼ばれているロボットの一種です。

AGVによって、作業者は組み立て作業に集中できますし、部品の管理もシステム上で全体の状況をしっかりと把握することができることが大きなメリットです。

このほか、楽天やアマゾンなど通販用の物流拠点でも、運搬や商品をピックアップする各種の自動ロボットが活躍し、我々の日々の生活を影で支えてくれています。

こうした中で、クルマの自動運転はこれからどうなっていくのでしょうか?

筆者は、国による自動運転に係る有識者会議での委員を務め、また国が支援し自動運転実証でのリーダー的な役割がある福井県永平寺町の街づくりの施策を推進する立場でもあり、さらに国内外の自動車メーカー幹部と自動運転に関する意見交換をする機会がとても多くあります。

本連載では、クルマの自動運転の未来について、いろいろな角度から探ってみたいと思います。

自動運転へ〜日本の始まり

自動運転ではなく自動運転技術という大きな括りで見ると、やはり日本を最初にリードしたのはスバル「アイサイト」でしょう。ジャニーズの有名タレントに運転席に座ってもらい、衝突被害軽減ブレーキを実体験することで「ぶつからないクルマ」という刺激的なキャッチコピーを使ったことで記憶に残っている人も多いでしょう。この「ぶつからない」とは、ぶつかる前の安全を考慮する「予防安全技術」を指した言葉です。アイサイトは人間の目のように2つのカメラを使って距離を図ることが基本原理で、その後に画像認識技術が高度化していきました。国内メーカーはアイサイトを追いかけるように、主に単眼カメラを用いた予防安全技術を量産化していきます。こうした技術が基盤となり、高度な運転支援システム、そして自動運転へと技術の道筋が描かれていったと言えます。直近では、新型「レヴォーグ」から次世代アイサイトを導入し、技術はさらに高度化しています。

著者PROFILE 桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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