時代に合わせた継承と進化、セダンではなくSUVのカタチに
現行型に加わった新しいセンチュリーは、巷間囁かれていたようにSUVとは名乗っていない。開発責任者の田中義和氏は、「ユーザーニーズを形にした結果。SUVとしては荷室は狭く、後席と荷室をパーティションで仕切っています」と語る。過去の御料車を見て、昔はこうしたカタチをしたクルマが多かった、と着想についても明かした。セダンと同等の静粛性や乗り心地などをこの大開口を備える新モデルで実現するには、パーティションで仕切ることも不可欠だったという。
最大の顧客層であるVIPにくつろいでもらうため、長時間乗っても疲れを誘わない後席設計に注力した。セダンタイプにはないゆとりある空間を実現するのが最大の目的で、アルヴェルのような広さや快適性をセンチュリー基準で満たすことを追求。後席に座ってみると、サイズや座り心地の良さはもちろん、電動リクライニングで最大77度°まで寝かせると、感覚的にはほぼフラットベッドという状態にまでなる。「走る執務室」としてはもちろん、休憩時も一切の妥協なく、くつろげそうだ。なお、リアには調光機能付プライバシーガラスを採用する。
車体は、クラウン・クロスオーバーなどと同じ「TNGA(GA-K)」。パワートレーンは、PHEV専用開発の3.5LV6エンジンに前後モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドのみとなる。また、車体も重量増に対応するべく専用開発されている。
なお、田中氏は、FCVのMIRAIでもお馴染みだが、FCV化しなかった点について、近くに充填施設があるかないか、充填施設のある国や地域に限定されてしまうなど、VIPの移動する自由を制約させてしまうことを回避したためと説明。また、BEV化しなかったのは、例えば新幹線が止まってしまうなどした際に、東京と大阪間を移動する際でもPHEVであれば充電の必要もないなど、利便性を重視した結果だという。さらに充電スポットを探すなどの不便をVIPにかけないためとも説明してくれた。PHEVであれば、モーター走行時はとくに静粛性も高く、快適に過ごせるという理由もあるだろう。
また、エンジン横置きであっても4WD、4WSにより操縦安定性やハンドリングの良さも追求されている。セダンタイプよりもパーソナル感を醸し出すSUV的なカタチをしていることもあり、新センチュリーはドライバーズカーとして、若い層も含めより幅広い層に強烈にアピールすることは間違いない。
STYLEWAGON(スタイルワゴン)2023年10月号より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]
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